稲田弘(世界最高齢トライアスロン選手) ・90歳"鉄人"は、今が青春!
60歳から水泳を始めて、70歳で水泳、自転車、マラソンを組み合わせたトライアスロンに挑戦、76歳では トライアスロンでは最も過酷な226kmに及ぶアイアンマン(鉄人)レースに挑戦し、卒寿の今もアイアンマン(鉄人)レースに挑戦し続けている方がいます。 79歳で記録した世界選手権の年代別優勝タイム15時間38分25秒はいまだに破られていません。 84歳と86歳での世界選手権優勝は最高齢のギネスの認定を受けました。 90歳の今なおアイアンマン(鉄人)レースにチャレンジし続ける、「今が青春」という稲田さんにトライアスロンにかける情熱を伺いました。
身長は159cm、体重が53kgです。 60歳の定年を迎える頃に自宅近くにスポーツジムが出来ました。 妻が難病でそばについていなくてはならない。 このまま自分もいると駄目になってしまうと思って、健康のためにジムに入って水泳を始めました。 最初は3mぐらいしか泳げなかった。 そのうちタイムも良くなって全国マスターズ大会にも出場するようになりました。 64歳の時に面白半分に、水泳仲間とスイムが1,5km、ランが10kmという大会に参加しました。 完走出来ました。 段々タイムが良くなって69歳の時にロードバイクを買ってしまいました。 70歳の時に千葉市の幕張でトライアスロン大会が開かれ参加したら、完走できてしまいました。 その3か月後に妻の容態が悪化して、亡くなってしまいました。 しばらくは何も手に付かなかった。 一人暮らしなのでトライアスロンを続けるしかないと思いました。
年に4回ぐらいはトライアスロンに出るようになりました。 茨城県の大会では 70歳の私は最高齢で、最高齢者特別表彰を頂きました。 以後トライアスロンにはまってしまいました。 ①オリンピックディスタンス:スイムが1,5km バイクが40km ランが10km ②ミドルディスタンス:スイムが1,9km バイクが90km ランが21km ミドルディスタンスに74歳、75歳の時に、年代別優勝をしました。 76歳の時にアイアンマンレースに挑戦しました。 ③アイアンマンレース:スイムが3.8km バイクが180km ランが42,195km の合計226kmです。 五島長崎で行われたアイアンマンジャパンという大会でしたが、最後のランで足がつってしまって、制限時間内にゴールすることが出来ませんでした。
本気でやるんだったら、千葉の稲毛にオリンピック選手が出ているクラブがあるからそこでやるように言われ入りました。 コーチのもとに練習しましたが、今までとはけた違いの練習でした。 精神的にも肉体的にも進化しました。 77歳の時にミドルディスタンスの大会があり参加しまして、優勝してミドルディスタンスの世界選手権の大会の出場権利を貰いました。 世界選手権の大会はアメリカのフロリダで行われました。 75歳以上で6人いて2位になりました。 同年韓国でアイアンマン大会が開かれ参加して、そこでは制限時間(17時間)の2時間前にゴール出来ました。 アイアンマン世界選手権の出場権利を得ました。 78歳で初めて出ました。 事前の体調管理が良くなくて水泳で呼吸困難になり、途中でドクターストップがかかってしまいました。
逆に奮起して、2012年(79歳)のアイアンマン大会では15時間38分25秒のコースレコードで優勝しました。 前年の優勝者よりも1時間半ほど早いタイムで、未だに破られていません。 体調管理をずっとしてくれた山本淳一さんと妻には感謝でいっぱいです。 2015年の大会では制限時間が16時間50分だった。(10分短い) この時にはゴール直前で転倒して、よろめきながらゴールしましたが、16時間50分5秒で失格になってしまいました。 海外のメディアが「不運の完走」という事で伝えました。 感動したという声が沢山来ました。 これを機に、応援してくれる人たちのために答えるためにやらなければいけないと思いました。 2016年の大会では制限時間が17時間に戻されて、前年よりも1分速いタイムで優勝できました。(凄く辛かったが、周りの応援で死んでもいいと思いました。) 最高齢の優勝者としてギネスに記録されました。 2018年には仲間がツアーを組んでハワイまで応援に来てくれ、優勝することが出来ました。(86歳 ギネス登録)
睡眠は8時間とっています。 身体は毎日動かしています。(水泳、バイク、10~15kmのラン) 食事は栄養士さんに聞いて、自炊しています。 朝は野菜中心で、20種類ぐらい入ったスープ、蜂蜜とブルーベリージャムをたっぷり付けたパン、肉は鳥の胸肉、豚肉とかを食べています。 夜は玄米ご飯茶椀に一杯、おかずはめざしなどの青魚、納豆にキムチを混ぜたもの、具沢山の味噌汁がメインになっています。 90歳、急激に衰えてはきています。 筋肉の衰えはあるが、肺機能の低下は大きいです。 一昨年、自転車のトレーニング中に車と接触してしまって、骨盤を骨折してしまい、2か月半入院する羽目になりました。 リハビリを続けて、よくなって来ました。 膝の半月板も痛めて、痛みはありましたが、レースを完走するレベルまで回復しました。
老化は人間の宿命ですから、老いには逆らわず努力で補っていけば、技術の改善は図れる。一番大切なのは楽しんでやる事です。 9月のフランスのニースで行われる世界選手権で自分の記録に挑むのが目標でしたが、6月に行われた予選で、コースミスで走ってしまって、失格になってしまいました。 12月にオーストラリアの大会(予選)に出場するようにしました。 完走すれば来年のハワイの選手権(91歳)に出場できるので完走したいと思っています。 トライアスロンに駆り立てるのは好奇心と情熱です。 今が青春だと思っています。 引退するようになったら、自転車で世界中を回って、今までお世話になった人たちにお礼を言って回りたいと思います。 同世代、若い人へのメッセージとしては「兎に角やってみること」が大事ですね。 こういう人生を送りたいという夢を持っていないと生きていてもつまらないですね。