2024年6月3日月曜日

穂村弘(歌人)            ・〔ほむほむのふむふむ〕伊舎堂仁

穂村弘(歌人)            ・〔ほむほむのふむふむ〕伊舎堂仁 

1988年沖縄石垣島の生まれ。 大阪芸術大学文芸学科卒業後現在は東京在住。  これまでに歌集を2冊2014年に第一歌集「トントングラム」、2022年「感電しかけた話」を出版。

伊舎堂さんの選んだ作品

*「インターネットに悪口書くの止めて下さいかばも迷惑しています」名古屋・・?の作品

伊舎堂:この歌大好きです。 「かばも迷惑しています」で平和解決と言うか、こうありたいと思いました。 

*「何回かはらんでしまう戦争を全部一人でやろうとしたら」   熊木しし?

いろんな戦争って厭だなという言い方はあるかもしれなけれど、ここに新たに足したなと言う一首。 戦争は怖いなに、味を加えている一首だと思います。 

穂村:「ぼくたちを徴兵しても意味ないよ豆乳鍋とか食べてるからね」と言う歌と共通の色が少しあるような気がします。 強烈な抵抗、批判ではないんだけれど批評性がそこにあるという。 でも怖さもある。

穂村さんの選んだ作品

*「同居人とその恋人が眠っている横で静かに履歴書を書く」  岡?

ルームシェアしているんでしょうね。 独特の優しさに美しいものを感じます。

伊舎堂さんの選んだ作品

*「ロ―ソンは何の略なのローソンは心ゆくまで正式名称」   谷川由里子

伊舎堂:「心ゆくまで正式名称」と言うのがパンチライン、読み下すことでスピードが付くフレーズで、言い終えた後で明るい気持ちになる、自分がローソンになったような気持になるというか、奇妙な体感が訪れる。

*「親指は蜜柑に埋もれてるだけどこれから大逆転が起こるよ」  足立?

これから大逆転が起こるよ」と言うフレーズに目頭が熱くなったほどではないが、これに対して・・・気持ちが起きないというのを伝えくて引きました。(内容を理解できない。)

穂村:批評する歌人だった塚本邦雄は繰り返し、日本に革命が無いことを嘆いていた、短歌のなかでも。 水原紫苑も日本に戦争はあっても革命が無いという事を凄く言っていました。 それが変形しているけれども伊舎堂さんと伊舎堂さんが選ぶ歌には、その嘆きの流れを感じます。 「大逆転」は革命の夢みたいな。

穂村さんの選んだ作品

*「壊れないものは作っちゃいけないの壊れないものは他を壊すの」  飯田有子

穂村:初めて見た時には衝撃を受けた歌で、価値観が真っ向うから否定されている。    壊れないものがいいものだと何となく思い込んでいた。 ここでは世界観が反転している。

伊舎堂さんの選んだ作品

*「サンタさんスケートリンクにある広告を全部が(蛾)?の写真にしたいの」  中井みよ?

伊舎堂:仕事中であるサンタさんとスケートリンクで回っているフィギュアスケートの人仕事中の二人をが(蛾?)と私のいたずら心で台無しにしてやろうみたいな気持ちが、このあと何が起こるかと思うと愉快になるという意味の仕事中の二人を暇な私が邪魔をするというイメージがぐっとくる。 「がの写真にしたいの」の「の」で短歌会の解釈が割れている。 サンタさんに期待していない「の」と僕はサンタさんになった気持ちになって「の」にグッときました。 消費してきた側と奉仕してきた側の違いがあるのかなあと思います。(内容が?)

穂村:僕は純粋な希望の様に思えた。

*「ポリシーを貫くシールドを貫くポリシーでシールドを貫く」  森慎太郎

伊舎堂:この歌の可愛げのなさがかっこいいと思いました。 「ポリシーでシールドを貫く」ともっとかっこいい言葉になって、1,2秒でやったみたいなかっこよさがある。 

穂村さんの選んだ作品

*「今までに見た幽霊を教え合うソファーに夜の風は当たって」   郡司和斗

穂村:「幽霊を教え合う」と言うのは無駄と言えば無駄だけど、二人にとっては特別な時間で、幽霊で居たいとか、半透明で居たいとか、幽霊の仲間になってゆくような、ちゃんとした人間になりたくないような。

伊舎堂さんの選んだ作品

*「これまでとなるべく別の生活を女に学び損ね続ける」   斎藤斉藤?

伊舎堂:動詞をあまり入れない方がいいという事がありますが、「学び損ね続ける」と重ね続けると、読んだ時にぐるぐる回っているような感じがします。 

穂村さんの選んだ作品

*「狸めに食われしのこりと送り越し桃はめば狸のような幸せ」  時実勝子?

穂村:桃を作っていて桃を送ってくれたが、良いものは狸に食べられちゃって残りでごめんと言うような手紙が添えられていたと思うが、桃を貰って食べてみると自分まで狸の仲間になったような幸せさえあったという。 器の大きさを感じます。

伊舎堂さんの選んだ作品

*「そりゃ男は偉いよ三百メートルも高さがあるし赤く光って」  平岡直子

伊舎堂:これを読んだ時に男として最終警告を受けたような気がしました。 反論が出来ないような、滑稽だね貴方たちはという、平岡さんにこれの次言わせては駄目と言うのをいやおうなく感じさせられました。  

穂村さんの選んだ作品

*「愛があるから大丈夫なのと歌うから若いと誰もが心配をする」  住友秀

穂村:元歌は短歌ではなくて、「瀬戸の花嫁」の歌詞をそのまま使っているが、それをひっくり返している。 高齢者からの忠告。  第19回NHK全国短歌大会 特選

*「あげは蝶が休みに来たよお昼寝のお兄ちゃん静かに起きて静かに起きて」 小学生

穂村:たまらなくかわいいですね。  全国短歌フォーラム 小学生の部 最優秀賞

リスナーの作品

*「先輩が寮の枕は硬いって教えてくれておやすみなさい」   栗川?

*「恐るべしポテトチップス食べる音絶対に聞き逃さない母」  石井卓也?

*印は漢字、かな、人名の漢字が違っている可能性があります。