樋口恵子(評論家) ・機嫌よく90代を生きる(後編)
相続者が一人娘なので、そういう事を見越しながら家を建てました。(8年前) 猫が4匹います。 猫歴70年です。 肺結核で1年自宅で療養していました。 兄も肺結核になり旧制中学の3年生で亡くなりました。 慰めになったのは兄の残した本と猫でした。 以来猫は守り神みたいになりました。
「高齢社会をよくする女性の会」を立ち上げました。 女性は依存する方向に社会が作られてきました。 高齢社会になると女性が自立できる存在に、今から用意しなければいけないと思います。 女性の老後の生活設計を立てようと、そういったPRは随分してきたと思います。 高齢になるほど女性の比率は高い。 65歳以上で女性を100とした時に男性は76,6です。 80歳以上になると女性を100とした時に男性は57,9となり随分違います。(2022年調査) 講演が終わった後に、ある男性から我々は婆さんの世話になって死ぬんだという事がよーくわかりましたと言われました。
80代後半になりますと、男性は30,4%、女性は81%になる。 80代前半では配偶者と死別した方が男性は16,8%と少数派、女性は57.7%で過半数なんです。 歳をとればとるほど、男性は妻に看てもらう人の比率が高くなるのに、女性は歳をとるほど一人になって生きることがおおくなり、覚悟が違わなければいけないが。 残された女性の人生もハッピーなものであってほしいと思います。
介護保険制度の設立に対して大きな役割を果たした。 1970年の高齢白書では長い間の家族制度などの伝統が含み資産になっており、欧米諸国の様に騒がなくてもいいじゃないか、とまでは書いていないがそれに近いことが書かれています。 お嫁さん、あるいは在宅家族が介護をするという事が当たり前と言う感覚が長かった。 ワークライフバランスと言っていたのを、ワーク、ライフそれにケアを入れて欲しいと思います。 ケアという事を社会全体のなかで重視して、きちんと報われて、ケアをしている人が人生が押しつぶされないようにと言うのが、介護保険制度が出来る頃の私のスタンスだったと思います。
「高齢社会をよくする女性の会」を拡げて行こうという過程でコロナの問題が起きました。 介護と言うと世の中から負い目を背負ているような感じがあった。 介護については行政的にも政策的にもケアの重要性は高まってきていると思います。 育児休業、介護休業が広がりつつあり、これは結構なことだと思います。 樋口恵子賞が出来て、今年で3回目になります。 津田梅子賞などを頂いて、それが原資となりました。 対象は女性同士が励ましあった事、女性のファインプレー、寄付など、具体的な行動を起こした人に対して行っています。 いい行動に対して素直に拍手を送るという、ごく当たり前なことをしていきたい。 樋口恵子賞としては中国の帰国者を支援している人、自立の思いの強いグループ、エンディングサポートをしているエンディングセンターなどが受賞しました。
年寄りは機嫌よく生きなければいけないですね。 「ありがとう」と言って死ねそうなのを、今一番良しとしています。