森山開次(ダンサー 演出家) ・〔夜明けのオペラ〕 オペラは究極の身体表現
森山開次さんは1973年神奈川県生まれ。 21歳でダンスを始め、2001年「夕鶴」でプロ活動を開始、和の素材をとりいれた独自の表現で注目を集めます。 2005年の舞台「『KATANA』は、ニューヨーク・タイムズ紙に「驚異のダンサーによる驚くべきダンス」と絶賛されました。 2007年にはヴェネチア・ビエンナーレ(1895年から開催されている現代美術の国際美術展覧会。)に招聘され、以後国内外の舞台やテレビ、映画などで幅広い活動を続けています。2012年発表の新作「マンダラの宇宙」で第63回芸術選奨新人賞を受賞、2019年に「ドン・ジョバンニ」で初のオペラ演出を手掛け、2021年の2020東京パラリンピック開会式では演出、チーフ振り付けを担当しました。 今年の9月から11月まで全国7都市で展開される全国共同制作オペラ公演「ラ・ボエーム」では演出、振り付け、美術、衣装のすべてを手掛けます。
ダンスをやる前には絵を描くことが好きでした。 作る事とダンスをいつもセットでやっているので、それが僕の好きなスタイルです。 小さいころは人の前で表現するのは苦手でした。 たまたま 舞台を観に行く機会があり、キラキラ輝いて素敵に見えて、悩んで何も踏み出せない自分が悔しくて、大学を中退してミュージカルの劇団に入りました。 高音の声がでなくて苦労したのを覚えています。 初めて踊りに出会ってのめり込みました。 踊りのレッスンをしている中で、今まで感じたことのない不思議な感覚がありました。 最初に作った作品は雨をテーマにした「デュオのダンス」でした。 日本の和のテーマを用いることが多いですね。
能楽の津村禮次郎さんとは、僕が作品を作り始めた頃、お能の方を紹介してほしいと言ったら、突然の出会いがありました。 作品を作りたいとお願いしました。 その後の僕の舞踊人生にも大きな影響を与えました。 そこにいる様でいないものに興味を持っていました。 存在することとしないことの間を踊りたい、幽玄というか、踊ると何かの境目に触れるというか、そういう感覚になります。 私は踊り始めた時に「私はここにいません。」と踊ります。 自分の感覚とフィットしたんだと思います。 能は幽玄で私はここには居ないという事からスタートする。
2019年の「ドン・ジョバンニ」では、井上さんから言われて、はすぐに引き受けました。 「ドン・ジョバンニ」は以前に舞台で踊ったことがあるので縁を感じました。
*「ドン・ジョバンニ」の「カタログの歌」 歌:オットー・エーデルマン
「ドン・ジョバンニ」を演出をして手ごたえがありました。
「ラ・ボエーム」では演出、振り付け、美術、衣装のすべてを手掛けました。 助けて貰いながら、多くのスタッフとさらにコミュニケーションが増えました。 2か月で7都市8公演です。 大変です。 1週間ごとに新しい「ラ・ボエーム」を作ってゆく感じです。 芸術家として共感できる部分が沢山有ると思います。 踊りと音楽は分けがちですが、僕は余り分けないで考えていきたいと思ています。 歌いながら踊って欲しいと思います。 日本人としての視点、視野は持っていたいと思います。
*「ラ・ボエーム」から「冷たい手」 歌:ルチアーノ・パヴァロッティ