平栗智子(ガーデナー) ・〔心に花を咲かせて〕 運命に導かれて作った牧場の宿根草ガーデン
園芸と無縁の世界でサラリーマンをしていた平栗さん、ひょんなことから園芸の世界に入って、思わぬ成り行きで牧場の中に宿根草ガーデンを作ることになったと言います。 以来10年、今や園芸のプロも注目するガーデナーとなり、ガーデンは多くの人を惹きつけています。
広さは900平米ぐらいです。 お庭は園路は直線ではない方がいいと教えられて、曲がりくねっていると先に何があるのか、という事で小島が沢山あるような光景です。 植生を考える時には、色は最後に決めています。 多年草のものを沢山植えていますので、花によっては1週間で花が終わってしまうようなものもあるので、草姿を重点にいろいろ考えています。 花が無い時でも楽しめるように、シーズンを通して楽しめるように,、枯れ色まで考えています。 枯れる色が黒っぽくなるのか、ベージュの色も明るいのか暗いのかと言うのも考えています。 基本的にはオープンしてから枯れてゆくまで、植え替えはしません。 空間を楽しんでもらえるように 、様々なものが混ざるような植え方をデザインしています。 AとBの組み合わせを用意して、咲き方が微妙にずれてしまっても、A,Cとか、A,DとかA,Eは上手くいくかもしれないと、準備は怠らないようにしています。
葉っぱのラインが綺麗なものを私はよく使います。 「天使の釣り竿」がピンクの花で茎が細くてゆらゆら揺れますが、その手前にアザミの仲間のエリンジウムと言うシルバーがかったグリーンの花が咲くと「天使の釣り竿」がより際立ちます。 緑が多いと花が濃くても花を落ち着かせてくれます。 葉っぱが沢山あるような植物を使っているので、色の構成みたいにはならないガーデンです。
営業職時代に一日中パソコンを見つめている仕事をしていました。 次に変わるならば全く違う仕事、時間に追われない仕事をしてみたいと思っていました。 園芸が出来る職業訓練校に3か月通いました。 たまたま園芸店の仕事があり、お世話になりました。 その店はサンプルガーデンが出来るようになっていて、それに直ぐ手を上げました。 ボランティア活動に参加してそこでも学びました。 宿根草に興味を持っていて、園芸店が閉店することになった時に、一緒に働いていた友人が「ガーデナーになっちぇばいいのに。」とポロっといったんです。 いろいろご縁があり、閉店するときに私が担当していた服部牧場さんに苗を引き取っていただくという話があり、引き取ってもらって、その後見に来てくれないかとの話がありました。 苗を植えたりしているうちに楽しくなってきました。 庭を大々的に作りたいという事で、牧場の社長に直談判しました。 それまでにもイギリスのガーデンの本とか、ブログなどでいろいろと勉強はしていました。 社長へのプレゼンは一発で通りました。
イギリスのガーデンを一念発起して見に行きました。 美術館併設のガーデンがあり、オランダの有名なガーデンデザイナーのピイト・アンドロスさんの設計のガーデンを見て、感激してしまいました。 こういうガーデンを是非作りたいと思いました。 社長からは思っていた場所とは違う場所を案内されました。 いまはガーデンになっている高台の場所でした。 長方形の場所ですが、今思うとかえって良かったと思います。 節約する中で株を増やしたり、挿し木にしたりして工夫して増やしていきました。 図面をおこして、梱包資材のひもで或るマスを作って島状に一つ一つ作って行きました。 自由にやらせて頂きました。 その時、その時に知り合った方に応援、助けていただいて今日まで来ました。
懐かしいヒマラヤユキノシタとか、イネ科のすすき、ネコジャラシとかなども植えています。 穂が風に揺れて綺麗です。 宿根草に対するコントロールは常にしています。 一人でやっているので、真っ暗になる、もう無理かなあと思うぐらいまでやっています。 いろんな品種を試して、いろいろ判って来るので花のリレーが出来るようになります。 この仕事を通していろいろな人に出会って、それが何よりかもしれません。 又植物への興味が尽きなくて、いろいろな植物との出会いがあって、その後ろにはやっぱり人が居るというところですかね。 「夢中であるという事は夢の中である。」と言う言葉を20代で聞いて、そのままの人生かもしれないですね。 私は植物のしもべですね。 そういった付き合い方ですね。