2021年12月5日日曜日

津久井教生(声優・演出家)        ・【時代を創った声】

 津久井教生(声優・演出家)        ・【時代を創った声】

津久井さんはNHKのEテレで放送中のニャンちゅう!宇宙!放送チュー!」の猫のキャラクター「ニャンちゅう」を演じています。    現在身体を動かすのに必要な筋肉が徐々に痩せて力が無くなってゆく難病 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と診断されて闘病中です。 

声優、俳優、演出家、音響監督、ミュージシャンなど実に多くの肩書を持っています。    3年ほど前にはALSと診断されて現在闘病中です。   足から始まった症状が手にまで進行してほとんど手足が動かなくなってしまっています。   しゃべる事以外は自分一人ではできる事が無くなってしまいました。   重度障害者の訪問介護の24時間体制という風になっています。   悲しくしゃべるには性分があっていないのでこんな感じでしゃべっています。(凄く明るい声でしゃべっている。)     

ALSなのでコロナ禍ではほとんど自宅で過ごしています。   ニャンちゅう!宇宙!放送チュー!」でのキャラクター「ニャンちゅう」というキャラクターは手に装着して装演する方式なので、ワンハンドパペットと呼ばれ、現場に行って「ニャンちゅう」を動かす人と同時進行でやるのが一番「ニャンちゅう」が生きている状態になるので、ニャンちゅう」の収録日だけはNHKにいって、5mの周りには人がいない状態で収録しています。   

小さいころは運動が大好きで好奇心旺盛な子でした。   中学は水泳部でしたが、陸上は借り出されていました。   100mのクロールでは大学1年の時に1分を切りました。   高校では漫画研究会に入ってまして、小さいころから漫画が大好きでした。    ショートアニメ―ションを作って発表会にだしたところ、大学生、セミプロ、声優の人たちとも知り合いになりました。   曽我部和恭さん中尾隆聖さんなどプロの声優と知り合う事が出来ました。    舞台のお芝居にも誘われるようになりました。(高校3年生)    日本大学芸術学部放送学科に入りました。  3年生の時にすでに事務所に所属していたので中退しました。  野沢那智さん主宰の劇団薔薇座に入り大変影響を受け勉強になりました。   お金にはなりませんでしたが、快感は有りました。   1990年頃から『アンパンマン』や『ちびまる子ちゃん』に出演するなど仕事が来るようになりました。    1992年にオーディションがありニャンちゅう」役が得られました。   岡部さんが人形を作って「オカベー」という名前でした。   名前の出し方をいろいろ工夫しているうちに今のニャンちゅう」の声が出来上がってしまいました。   来年でニャンちゅう」も30年になり声優としては幸せです。   

最初なんだか足が上がらないぞ、というところから始まり、転ぶようになり、変だと思って2019年4月に整形外科に行きました。  大学病院に1か月ぐらい検査入院して病名が判りました。   ALSと判ってショックはショックでしたが、ホッとしました。  病名も判りこれで方向性がっ決められるなと思いました。   病名が判らないという事は患者にとっては足踏み状態なので。    3~5年で自力呼吸が出来なくなり死に至ると書いてありました。   不安は有りましたが、どういう風に歩んでいくかは、結構早く切り替えられました。   その3年前にスキルス胃癌で弟を亡くしています。   判ってから6か月で弟は51歳で亡くなりました。   僕はALSと判ってから2年半でこうしてしゃべっていられます。    死生観、病気に対するものに対して、両親、弟も亡くしているし、自分の心の中に準備があったのかもしれません。   不安や焦りを出すよりも、そういった中で何かできたらいいなと、思いますし、弟も最後まで前向きでしたので、その影響もあります。   SNSでもいろいろ発信しています。  僕は死にたくはないです、死ぬ気もさらさらないです。   だから今の状態でどう生きようかなあという事を、周囲の人たちと楽しくさせて頂ければいいかなあと思います。   泣く時には思い切り泣きますが、どちらかと言えばそこのところから立ち上がれないよりも、さあスッキリしたぞと、さあ今できる事は何かなという風に周りの人たちと乗っていけたらいいねというのが今の現状です。僕一人のポジティブパワーだけではなくて、周りの人が支えてくださっていると多々感じるところがあります。  特に妻には。  

若い声優に対しては、「よく声優を目指してきてくれたな」と、「声優も仕事だよ」と、声優の仕事の基盤をしっかり習う方がいいと思います。  どの仕事も同じです。  声優はなかなか食べられないので、食べられるものを見つけながらでも結構いけるんじゃないかというあたりをしっかり学び、良い先輩諸氏に恵まれてゆくといいと思います。

今できる事をやるしかないんだなという事になってくるんじゃないでしょうか。    悲観、絶望とかあると思いますが、悲観、絶望のなかで出来ることは、ちょっとでもパワーに変えていって明日につながっていくんだったらいいなあという風に思います。  生きていると楽しいことが続くし、新しい何かに遭遇出来るんだなあと思う事なんじゃないかと思います。