山本晃ニ(受刑者向け求人誌発行人) ・【人権インタビュー】やり直したい人に働く場を
今、日本では犯罪加害者の就労支援が再発防止に向けて大きな課題となっています。 犯罪白書によりますと平成29年において、刑務所に戻ってくる人のうち7割を超える人が再犯時に無職であったことが判っています。 広島県福山市で建設会社を経営している山本晃ニさん(43歳)は、そのような罪を犯し入っている人向けの求人誌、獄中求人誌「NEXT」を発行しています。 「NEXT」は毎月一日に発行、山本さんが把握しているだけで年間40~50人が「NEXT」を介して就職をしています。 山本さん自身も刑務所に6年間入所していた元暴力団員です。 働く場を得たことで更生できた自身の経験から、やり直したい人に働く場を与えて欲しいと願う山本さんに伺いました。
受刑中の方たちが社会に出てくるまでに、自分が応募して帰る場所、就職先だったりを決めてもらうための求人誌です。 手紙で応募して、面会も緩和されてきまして、面会して迎え入れる形です。 今、50社弱になっています。 最初は知り合いの社長さんにお願いして協力を頂いてというところから5,6年前からスタートしました。 最初から全国の刑務所に送っています。 刑務所、少年院、少女院、更生保護施設、などです。 犯罪は様々です。 受け入れてもらうためには通常の履歴のほかに、犯罪歴、犯行動機などを具体的内容を履歴書に書き入れ理解してもらったうえで、いいよと言ってもらった方が続けられると思います。 服役回数も書き入れます。 再生への決意なども書き入れてもらいます。 罪名,刑期とかで人は判断しやすいですが、スタンスとしては極端に言うと無期懲役の人が引受人になっているし、出れることになれば必ず引き受けるというようなこともあります。 罪名,刑期とかに関係なく応募は出来ますというスタンスになっています。 しかし広告主になかなか浸透していかないという現状もあります。
僕も服役してから5年ぐらい経ったときに、社会に受け入れてもらう時に、次のステージへ、ほかの受刑者の方々も次のステージへ行くわけで、そういう意味で「NEXT」という事にしました。 不真面目な人もいれば、手紙のやり取りで頭もよくて心に感じるところがあるから、会いに行きたい人も沢山います。 あそこに預ければ何とかしてくれる、みたいにはき違えている人がいますが、そうではないです。 ボランティアでやっているわけでもないし。
小さいころは父親は歯科技工士の会社を経営していて、母親は専業主婦でした。 僕が4歳の時に父親が他界しました。 兄弟3人で一般的な家庭でした。 兄弟皆同じように母は育てたかったのかもしれないが、「なんであなたは出来ないの」とかいわれて、段々疎外感が出来てきて、寂しさを忘れるために非行に走ってゆくようになりました。 学校もろくにいかなくなりました。(中学2年) 22歳の頃暴力団に入りました。 使い走りではなく自分から入りました。 一回目は組織に起きた事件で刑務所に入りました。(服役4年) 刑務所ごとに工場があり、そこに出勤して一日中仕事をして夕方になると部屋に戻され一日が終わって行きます。 所内でも人間関係、勢力争いみたいなものもあり、何十人での乱闘もありました。 出所した時には自分が想像していた環境と違っていて組織を辞めてしまいました。 いろいろありましたが、今いる広島に落ち着きました。 組織は辞めたが中身は変わってはいなくて、仕事はなく悪いことはしていました。 又次の事件を起こして刑務所に行く事になってしまいました。 その時には妻もいたし生後半年の子供もいました。
一回目とは違って後悔もしました。 2年間服役しました。 面会は一回だけでしたが、手紙のやり取りはして、求められたのは「真面目になってください。」という事でした。 妻は良く待ってくれたと思いますが、そこでも働かなかったです。 資金も底をついてどうにもならなくなりました。 妻に泣かれて「仕事をしてください。」と言われました。 知り合いを通して、建設現場の足場の工事の仕事をすることになりました。 そこの社長さんがよく褒めて期待してくれ、飲みにも連れて行って貰いました。 1年半後に給料は減るが営業を担当してもらえないかと言われました。 仕事を取って来ると嬉しいし、4,5年その会社にいました。
建設現場に人が不足していて、僕のところにも要請があり、刑務所にも素敵な人がいることを思い出して、その人たちを雇用できるような道筋を作ってしまえば、と思って行動して行って今の形になって行きました。 当初はアパートを借りて冷蔵庫、洗濯機などを買い入れて、迎え入れ1カ月でいなくなると赤字になってしまい、そんな繰り返しでした。 辞めようという思いもありましたが、段々居ついてくれる人も増えてきて、質もよくなってきました。 ずーっとやって行きたいし、僕でなければできないことでもないので、思いを共有できる人達とやっていけたらいいなあと思います。 もっと良いやり方があるならどんどん取り入れて、受け入れやすいようにやってゆくべきだなあと思います。
本人が望むこともありますが、本人よりも望んでいるのはご家族の方だと思います。 その部分もケアしたいと思います。 偏見は変わらないと思います。 立ち直って行くためには、いろいろあると思いますが、信じてくれる人、変わろうとすることを喜んでくれる人、努力を喜んでくれる人、だと思います。