高波壮太郎(画家) ・情熱をカンバスにぶつける
1949年(昭和24年)東京生まれ。 油絵の具を厚く盛り上げて描く高波さん、その力強さを感じさせる絵画はスポーツ選手、特に格闘技の世界で活躍する人たちに支持されています。 大相撲の横綱白鵬関には化粧まわしのデザインを依頼されました。 国内はもとより海外でも個展を開催し、今年10月にはニューヨークでの個展が予定されています。 高波さんの絵画のエネルギーはどこにあるのか、伺いました。
日本では100回以上個展をやってますし、フランスでも3回やりましたので、ニューヨークではどうみられるのか楽しみにしています。
僕の絵はとにかく厚塗りで重たいです。 20kgを越えている絵が20枚~30枚ぐらいあります。 30号の絵で絵具代が100万円かかっているのもあります。 最初は薄かったが、ある時直接チューブから塗り付けてみたら凄く綺麗に僕の心に力強く見えたんです。 チューブで描くようになって、納得いくまで描くと相当な厚みになって来る。 段々描いていて集中してくると絵の方からこう描いてくれと言ってくるんです。 鮮やかな色で描くものもあれば、モノトーンもあり、黒一色で描く時には白はキャンバスの白になります。 絵は多分見る人の心を写す鏡になっていると思います。 見る側の気持ちによって違うと思います。 僕も絵に凄くエネルギーを詰め込んでいるので、受けとるだけのエネルギーを見る側の人も何らかの形で要ると思います。
絵具を置く時には思いっきりよく力強く置くことを心掛けています。 アスリートの方もやる前は不安だけれど、その時には思いっきりやるんじゃないんですか。 そういったところがスポーツ選手の琴線に触れるのではないかと思います。 レスリングの富山英明さんとは30年ぐらいの付き合いになります。 1984年 ロサンゼルスのレスリングの金メダリストです。 富山さんから白鵬関を紹介されました。 化粧まわしの下絵をお願いしたいと言われました。 10年前に出来上がりました。 デザインを考えるときに白鵬関には日本とモンゴルの架け橋になってもらいたいという事で、モンゴルには雪豹が居て凄く有名で、日本は富士山に菊の花で、真ん中が白い伝説の鳥、白鵬という事で行きましょうという事になりました。 太刀持ちがモンゴルを代表する雪豹、露払いが富士山と菊の花、真ん中が白い伝説の鳥、白鵬という事です。 双葉山の69連勝に挑戦する場所で、僕のデザインの化粧まわしを付けた時に負けてしまって、63連勝止まりでした。 気にはなりました。
富士山は30~40枚は描いていると思います。 僕でしか描けない富士山を描きたいと思っています。 どの富士山も一枚一枚違う挑戦をしています。 描くのは朝6時過ぎからで、その時間帯が一番インスピレーションが強くて、絵が描きたいんですね。 集中は1時間40分ぐらいしか続かないですね。 本当に集中して自然に手が動くようなことは20分ぐらい位しかないですね。 極端なことを言うと、2時間ぐらいで描いてしまうものもあれば、10年かかってしまう絵もあります。 描き終えてるつもりですが、或る時にふっと見た時に、こうしたらもっと良いなと降りてくる時があって、それをやると絵がよくなる時が多いですね。
富山さんからシュノーケリングを教えてもらって、海の底をのぞいたら、複雑で美しくて、サンゴ、ウニとかが凄くおもしろくて、黒一色の30枚の絵になりました。 生きていてそれを感じるものがテーマです。 描き出すとそれまでと全く違うものが見えてきます。それが自分の中に有るものだと思います。 竹林をテーマにしたものもあり、竹林を見た時に真っすぐ生きたいという気持ちがあって、竹の根元のほうに凄く魅力を感じました。 根元のほうだけから描き始めました。 モノトーン、黒と白だけです。 「ボーダー」という竹の絵は寂しい感じですが、死を考えていた時のもので、竹林の向こう側が死の世界になっています。 この絵もそうですが、アトリエが小さいので横につなぎ合わせてゆく作品が多いです。
ニューヨークでの作品は相手の画商さんが僕の絵の中から15点ぐらい選んだ作品で、いろんなバリエーションで選ばれていて、僕の代表作となるようなものが選ばれています。 海外の展覧会はことしは5回あります。 来年は4回決まっています。
中学1年から高校2年まで病気をしていて、高校2年の時には体重が30kgなかったんです。 そのころ生きるという事を凄く考えて、それが今に相当影響していると思います。今ここ、今ここにしかないという気持ちが強くて、それがずーっと続いているわけです。 18歳からウエイトトレーニングをしていて、54年間週に4回はほとんど休んだことはないです。 これからの夢は健康で今の生活が続いて行って、海外で僕の絵がどういう風に映るかが夢です。 絵を描くことが僕の生きる事すべてになっています。