湯浅正太(小児科医) ・【ママ深夜便☆ことばの贈りもの】すべての子どもに愛を
湯浅さんが自らの体験をもとに書いた絵本「みんなとおなじくできないよ 障がいのあるおとうととボクのはなし」が関心を呼んでいます。 障害があったり病気で入院や手術が必要な子供がいる家庭はその子に親がかかりっきりになり、日常の家庭生活でほかの兄弟姉妹たちに十分な配慮が行き届いていないことがあります。 幼い健常の兄弟たちは周囲の偏見や頑張って偉いねというような、重圧の中で兄弟の障害を理解するのも難しく、親の愛情を求めて突飛な行動に出たり悩んだりすることがあります。 家族の中に高齢者や介護や支援が必要なメンバーがいると、本来愛情を受けてはぐくまれる児童期に、十分な配慮がなされず放置されたり、反ってそうした子供たちが支える側として酷使される状況は、ヤングケアラーの問題にもなっています。
外来をやっていても、子供たちが思うように外で遊べないとか、さまざまな制限を受ける子供たちが多くて、ストレスの発散の場がなくなり、落ち着かなくなってしまったり、感情を上手く表現出来ないとか、そういった子供達が増えているなという印象があります。 小児科は生まれて間もなくから中学校3年生までが来ます。 発達障害、知的障害、てんかんをおもちのお子さん、そういった子供さんを対象にしています。 私の対応、態度、表情次第で子供たちの様子が変わるという事は毎回経験します。 ぶっきらぼうに話すような子供でも、私が優しく言葉がけをしたり笑顔で接すると、言葉使いも変わってきます。 子供たちは純粋なんだなあとつくづく感じる瞬間です。 語り続ける子もいますが、聞く耳を持たないような態度を大人がとると、 子供たちもイライラしだしたりして、聞いてくれると思うと表情も豊かになります。 中学生ぐらいの子では、リストカットしてしまったり、不登校になってしまっていたり、という子も沢山います。 家庭の背景、生活の環境によって自分の心をうまく相手に伝えられないような子供が多いと感じてまして、小児科医として助けてあげたいと思います。 なかなか気持ちを打ちあけてくれないことを多く経験するので、子供の本音を聞き出せるように心がけて居ます。 子供に安心感を持ってもらうのがとても重要だと思っていて、安心感を与えるという事は凄く注意しています。 自分の感情に気を付けながら接するようにして居ます。
小児科医になってからではなく、小さいころから自制心は生まれたと思っています。 絵本にしましたが、自分で実際に体験したことを語っています。 周りのお子さんとは同じようにうまく行動できないような弟が居まして、うまく生活できないようなことを兄弟として感じていました。 自分の感情を押さえて誰かと接する、そういったことを身に付けてきたのかなあと思います。
絵本「みんなとおなじくできないよ 障がいのあるおとうととボクのはなし」 障害を持った子、その兄弟、病気を持った子、その兄弟とか、すべての兄弟に伝えたいと、メッセージを込めて作った絵本です。 障害を持った子、病気を持った子に親御さんは一生懸命支援しようとします。 その兄弟は親御さんに手がかからないように行動しないといけないと思う兄弟が現実です。 支援が必要な方が家庭にいる状況だと兄弟、家族は気を使いながらみんなでうまく生活できるように行動してしまうんですね。 そうすると精神的に乱れてしまうという場合もあります。
私の場合は周りの友達と同じように行動できないことから、恥ずかしさを自分自身で感じてしまったりして、弟を大事の思ったりぐちゃぐちゃな感じを持っていました。 自分の気持ちを上手く表現できない、そうすると精神的に乱れてしまうという場合もあります。 どうしてそうなってしまうのか子供のころは判らなかった。 弟に対してめんどくさいという思いもありました。 小学校6年生の時に弟は小学校1年生でいじめられていた現場に助けたいと思って、何度も足を運んだことがありました。 弟も私を見るとホッとしていました。
弟と一緒に暮らしていると当たり前ではないというところを、なかなか認められなかった自分がとっても苦しかったと今でも思います。 弟と接してゆくうちに、弟を周りの世界に合わせようとするのではなくて、周りが弟に合わせたり、そういったやり方があるのではないかと思うようになりました。 弟が「みんなと同じに出来ないよ」と私につぶやきましたが、初めて弟が強い不安な気持ち、悲しい気持ちを持っていたという事を知りました。 その言葉を夜中に思ってしくしくずーっと泣いていました。
障害があっても病気があっても、そういう子供たちを支援できる環境を作ることがとても大切なんですね。 絵本を作ったり様々な活動を通して困っている子供たちの力になれればなあと思って今も働いています。 兄弟達への支援も必要で、将来障害者への支援、社会を志している人材が育つためには支援がどうしても必要でそちらにも活動しています。 兄弟児支援の取り組みとしては、同じような境遇の子どもたちを会わせてあげるとか、親から兄弟に愛を注げるような環境を作るという事が一番大切なことで、そういったところへの支援が大事だと思っています。 親御さんも頑張っていて、あなた方は一人ではないんだよという事を伝えたいです。 親御さんたちが兄弟へも関われるように、社会が家庭に支援をしてあげる,そういったことが重要で あろうと思っています。 兄弟たちに「君は一人じゃないよ」と伝えたいです。 将来に対して生きる勇気を与えてあげたいと思っています。 生まれてよかったなと思えるような、そういう子供たちに育ってもらいたいと思います。