2021年9月25日土曜日

藤原帰一(国際政治学者)        ・【私の人生手帖(てちょう)】前編

 藤原帰一(国際政治学者)        ・【私の人生手帖(てちょう)】前編

藤原さんは大学院教授として近代国際政治の中でも、主に戦争と平和につて研究を続ける傍ら、新聞や雑誌、テレビ討論など幅広く活動を続けています。   一方映画に造詣が深く関連の著作など数多くあります。   1956年東京生まれ、中学高校時代から映画のとりこになって、その世界を目指したものの断念、国際政治の道に進みました。  今でも映画を通して世界の紛争や平和、文化、社会問題を読み解いてライフワークとしています。   映画と国際政治はどのように繋がるのでしょうか。  これまでの人生の節目節目に見た映画と重ね合わせながら伺って行きます。   アメリカの同時多発テロ9・11から20年の今、世界はどう変わったのか伺います。

20年前を思い出すとまるで別の世界という気がするぐらいです。  20年というと第二次世界大戦の終わりからオリンピックの期間よりも長いんですから。   同時多発テロが起こった時には中国もロシアもアメリカとの協力を保っていました。   ブッシュ大統領がテロ対策を優先したので、中国、ロシアを追い詰める政策は取らなかった。  20年後の今を見るとアメリカとロシア、アメリカと中国の対立が大変険しくなって、新しい冷戦ではないかという方も出てきました。   相手の政府を倒すというような軍事介入を止めようという方向にアメリカの政策も転換しました。   そういったわけでアフガニスタンは見捨てられたわけです。    アメリカに頼っている人たちが沢山いるわけですが、自分たちの身の安全を保つことが出来なくなってしまう。  1979年ソ連が軍事介入したが、戦争には勝つことが出来ず結局ソ連は共産主義体制から変わってゆくが、1989年にソ連軍は撤退します。  アフガニスタンでは内戦が展開する。  その中でタリバンが出てくる。

今度はアメリカが介入して、女性も教育も受けられるようになったが、米軍が撤退した後それが出来るかどうか、大変厳しい状態にあると思います。    デモクラシーを外から作るという事自体は無理だという事で、その人たちを見捨ててしまった。   腐敗した不安定な政府がカブールにできたが、つっかい棒をして実効性のある軍隊を作ったり政府の力を高めようと多国籍軍はするが、アメリカが介入したなかで干ばつが襲います。  中村哲さんを主体にペシャワール会を立ち上げ、灌漑事業を行う。   中村哲さんが非業の死を遂げられる悲劇がありましたが、こういったアプローチが本当なんだと思います。  安全な水の確保、医療、教育(特に女性)が必要です。

アフガニスタンの場合、いくつか映画があるが、アメリカ軍の兵士から見た現場を再現した映画があります。 「アウトポスト」という作品で、3月に日本で公開されました。   支援するためにすり鉢の底のようなところに基地を作る。  包囲する側からは丸見えだが、包囲される側は包囲する側の動きを確認しにくいという問題を抱えていたのである。 良いことをしているつもりだが、タリバンから攻撃されるために拠点を作ったに過ぎない。 そのことは兵士も判っている。  タリバンに攻撃されてみんなバタバタ死んでしまう。 実話をベースにこの映画は作られている。  「ランボー」もありました。  あの戦争は間違っていたのかもしれないという、そういう時代の気分を伝えて居ると思います。

父が銀行員で転勤をたくさん繰り返しました。    中学の時に父が横浜に家を建て、私が結婚しても横浜に住むようになりました、  小学校1年から3年までアメリカニューヨークの郊外に住んでいました。   12月8日(真珠湾攻撃)には父から小さくなっていろと言われていて、大人から「おい、東条」などと言われました。  大学の教員になってからもアメリカに住んだことがあり娘が心配だったが、そんなことは全くなく、アメリカは変わったんだなと思いました。  

小学校の低学年で最初に映画を見ましたが、高学年ではずいぶん見るようになりましたが、映画を見始めたと言えるのが中学校に入ってからです。  当時「イージーライダー」と「真夜中のカーボーイ」が一番有名でしょうか。  高校の頃、父が香港に駐在していて、独りで寮に住んでいました。   3本立ての映画館で映画を見ていました。  いろいろな映画館に通って、映画の本を読んだりして、そこから見なくてはいけない映画のリストを作って、チェックしたりしていました。   学校に行って出席だけして抜け出して映画を見に行ってまた学校に戻ったりしていました。  当時はまったのが政治に関係したものが多くて、「博士の異常な愛情」(スタンリー・キューブリック監督のこだわりが随所に光るブラック・コメディの傑作。核戦争による地球滅亡という重たいテーマを、痛烈な風刺を交えた軽快なコメディに仕上げている。 キューバ危機とセットになっている。)  「2001年宇宙の旅」 「ゴジラ」(水爆とセットになっている)   「大統領の陰謀」(ニクソンのウォーターゲート事件に関連  脚本がよくできている) などです。