稲垣栄洋(静岡大学大学院教授) ・【心に花を咲かせて】マリー・アントワネットが愛したジャガイモの花
マリー・アントワネットというとオーストリアの王女として生まれ、政略結婚でフランスにお嫁入し、ルイ16世の即位と共に、フランス王妃となり、華やかな暮らしをしていました。 1789年のフランス革命で結局は処刑された悲劇のヒロインとしても知られています。 ベルサイユのばらの大ヒットでも知られています。 バラの花のイメージが強いマリー・アントワネットですが、稲垣さんによるとマリー・アントワネットは舞踏会の時にジャガイモの花を髪に飾って愛でていたんだそうです。
ジャガイモの花は控えめで素朴な感じがするんですが、よく見ると中々綺麗な花を咲かせる感じもします。 マリー・アントワネットが舞踏会の時にジャガイモの花を髪に飾ったのは、ルイ16世との作戦が関係していたといわれています。 ジャガイモの原産地は南米のアンデス地域と言われています。 ジャガイモは痩せた土地でも気温が低いところでも育てることができる。 ヨーロッパでは麦を育てていたが、麦は気温が低いところでは育たなかったので、ジャガイモが重要な作物になった。 しかしヨーロッパでは悪魔の植物と言われていた。 ジャガイモの芽が出たところに毒を持っていた。 葉っぱ、茎、実などを食べてしまうと有毒で中毒を起こしてしまう。 ヨーロッパではイモを食べるという事はなくて、最初の頃は実のほうを食べてしまって食中毒を起こしてしまってジャガイモは嫌われていた。 ドイツから広まって行ったといわれる。 飢饉をジャガイモが救ってくれることは王室、知識層では判っていたが、この悪魔植物をどうやって国民の人たちに食べさせたり、農家の人たちに作らせようかというのが問題だった。
まずジャガイモの花を見せようという事で、マリー・アントワネットが飾ったりルイ16世はボタンのところに飾った。 そのうち貴族たちが自分の庭にジャガイモを作らせる様になる。 花を愛でるために園芸植物として広がって行った。 次の作戦として、「これは王様の食べ物なので食べてはいけません」というお触れを出す。 自分たちも食べてみたい、作ってみたいという事になる。 盗みに入って行って、密かに食べて(イモを食べることが判ってきて)だんだんと庶民の人たちも食べるようになって行く。 国民を救うためにマリー・アントワネットはそういう事もしていた。
南米にはたくさんの種類があり、いくつかの種類がヨーロッパに渡った。 アイルランドは寒くて麦が育たないので、ジャガイモが凄く貴重な食料になった。 ジャガイモが広がってゆく中で選りすぐりのジャガイモがアイルランドへと渡って行った。 一種類しかアイルランドでは作っていなくて、或る時に病気にかかって壊滅状態になり大飢饉がおこる。食べ物に困った人達が新大陸のアメリカに移り住むようになる。 その人たちがアメリカ合衆国の基礎を作ったといわれる。(1840年代) イギリスでは実のほうを食べて食中毒を起こしてジャガイモが広がってゆくことが遅れてしまった。
茹でたり蒸したり焼いたりしてシンプルに食べていたようです。 アンデス地方ではつぶしても食べていたようです。 ヨーロッパでは古くから家畜を飼っていたが、冬の間家畜に食べさせるようなものがなくて、たくさんの家畜を飼うことができなかった。 ジャガイモは保存も利くし、ジャガイモを食べさせてたくさんの豚を飼う事が出来るようになった。 人間がジャガイモを食べるようになったことで、麦も余ってきて牛の餌にもなって行く。 たくさんの家畜を飼えるようになったお陰で肉を食べれるようになって行く。 ジャガイモと肉との相性もいいです。
ジャガイモが日本に入ってきたのは、戦国時代の終わりごろから江戸時代の初めの頃です。大航海時代、ジャガイモは保存が利くので最適だった。 ジャガイモはビタミンCを多く含んでいるので大航海時代でのその摂取のためにもよかった。 日本にはイモの文化があったので、ジャガイモを食べる事には抵抗感はなかったと思います。 しかし日本ではなかなか広まらなかった。 広がってゆくのは肉が食べられるようになった明治以降ですね。 ジャガタライモという言い方もあるが、ジャガイモはジャガタライモを略した言い方で、インドネシアのジャカルタからやってきたイモという事で、訛ってジャガタライモと言われるようになったといわれる。
静岡の山間部にジャガタイモと呼ばれるものがありますが、味が濃いです。 オランドというものはジャガイモとは違うような変わった味です。 これらは戦国時代の終わりごろから江戸時代の初めの頃に伝わったものがそのままつくられてきたものと思います。 山梨県ではジャガイモを凍らせて保存食として使用する独特な方法がありますが、南米で行われている保存方法と全く同じなんです。
南アメリカ原産のものはいろいろあります、トマト、トウガラシ、ジャガイモ、カボチャ、など、トウモロコシは中央アメリカ原産です。 トウモロコシは世界で一番多く作られています。 お茶も歴史にいろいろ関わって影響を与えています。