2021年7月31日土曜日

阿川佐和子(エッセイスト・作家)    ・困難な時代を生き抜くヒント

 阿川佐和子(エッセイスト・作家)    ・困難な時代を生き抜くヒント

最後の出演が2016年11月、2017年結婚。  若い時の結婚は大きなエポックとなるが、63歳で結婚すると子供が生まれる可能性は全然ない、介護をする段階もほぼ越えていた、互いに仕事も長年やっていますので、それぞれの仕事のペース、生活のペースがあって一緒に生活、同居するという事で、せめぎあいみたいなことも発しない、それぞれ勝手に生きて居まして、そんなに大きな変化はなかったような気がします。   私は母の介護があったし、万一救急車で運ばれるような場合に、知人になってしまうので、社会の仕組みに対してめんどくさいから籍をいれてしまった方がいろんな意味で楽だし、籍を入れましょうという事になったわけです。

それぞれの価値観の違いはあるので、ぶつかり合いは有ります。  基本的なことがあっていれば小さな喧嘩は有りますが、段々そういう人なんだと認知してゆくわけです。  卵一つとってみても作り方、味付けなど全然違うわけですが、一体どこが気があうのかと思ったが「趣味が倍になるからいいじゃない」と言われて、黒胡椒だけしか知らなかったのが白胡椒も味わう事にもなるし、自分の知らない世界を教えられるという意味では確かに趣味が倍になるとは思いました。  すべて合わせる必要はありませんが。

大学3年生で周りは就職活動を始めて、私の父阿川弘之は小説家という職業だったので、社会の常識からかけ離れた教育をしていた父のもとで育った娘は一体社会の組織に入って何ができるのか、大学に入ったがあまり勉強もしていないし、特技があるわけでもなかったので、どうせ卒業してから3,4年で結婚するだろうと思ったので、ちょっと稼げるぐらいの手仕事をできるようにしようと織物の仕事をしようと思いました。  バイトをしながら織物教室に通って20代が終わりかけた頃に、同時にお見合いもしていていずれ決まるだろうと思っていましたが、育った環境が変わっていたし、お見合いと言えども恋愛して父のような性格ではない穏やかな人と結婚したいというのが夢だったのですが、余りご縁がありませんでした。 

TV局の単発のレポーターの仕事をやらないかという話があり、バイトの一つだと思って一回やったら、2年後にレギュラーの番組のアシスタントをしないかという話があり、安定した収入があると思って、始めたのが深夜の生放送で情報ニュース番組のアシスタントでした。  いつ首になるのか判らないような仕事の連続でした。  雑誌での連載も29年1350回を越えることになりました。  

「アガワ流生きるピント」という人生相談本を刊行、こういった本は初めてです。    例えば私が人に相談するときには、ある程度自分はどうしようと意識下にはあるんですね。   それを確認したくて聞くという事の方が多いんではないかと思います。  心底立ち上がれないほど悩んだときは人にも会いたくなくて、相談しないような気がするわけです。   人に会わないで嘆き悲しんで体力を温存して、冬眠から覚めたように太陽の光に当たった時に、人の元気な姿を見て自分自身も元気が出るというようなストレートに見直すという事は自分ではわからない感じです。  答える側としては多分その人はやりたいことは決まっているんじゃないかとか、意見を一気に取り入れる事とはないだろうなという前提で、視野を広げるためのヒントを与えるというような気持で答えたつもりです。   的確なヒントにはなっていないと思うので「ピント」ぐらいという事です。   

辛さというのは解決しなければいけない問題もあるかもしれないけれど、失恋とか、自分自身の心が傷ついていることを考えると、時間が解決してくれることも多い。   いきずりの5人ぐらいの人に話せばすこしずつ元気になります。   まずは一人では抱え込まないで、少しずつでもいいから発散させることと、体力をつけるために、時間を稼ぐために寝るという事と、なんかの形で笑いに変えられないかということも大事だと思います。   ネットとか、昔に比べて知らない人に出会うチャンスは多いと思います。  

母は性格のいい認知症でした。  根が素直で明るくて、初期の認知症の時にはイライラしていた時期がありましたが、それを過ぎてからは明るかったです。   認知症になってしまった人間に対して、引き戻すのではなくどう理解するかがまず一つの戦いになると思います。   認知症になった人は記憶能力は衰えるが、判断力、視力、聴覚とかがいっぺんに駄目になるわけではない。   現在のやり取りに関しては驚くほどとんちがきいています。  今の母、今の母を連続させて付き合って行こうという事に決めたら、私は楽になりました。  認知症の人を別世界の困った人間と烙印を押すのではなくて、その世界は存在するんだという付き合い方をする方が付き合っている側も楽になります。  泣くだけ泣くとか、誰にも会いたくない時期はあると思うので、自分はポジティブにと思い過ぎないほうがいいような気がします。