2021年7月16日金曜日

若宮明彦(詩人・北海道教育大学教授)  ・詩と科学の接点を求めて

 若宮明彦(詩人・北海道教育大学教授)  ・詩と科学の接点を求めて

本名・鈴木明彦。1959年岐阜県瑞浪市生まれ。  信州大学、北海道大学大学院で学び、現在は北海道教育大学札幌校で研究と教育に携わっています。   専門は地質学、古生物学です。    学生時代から詩を書き始め、処女詩集の「掌の中の小石」をはじめ詩集「貝殻幻想」、詩論集「波打ち際の詩想を歩く」などがあります。   若宮さんはまた一般の人向けにビーチコーミング学を勧めています。   海辺の漂着物を採集観察し、科学の視点で海を見直そうというものです。   詩人と地質学者の両面で活動する若宮さんに伺いました。

今は対面授業とオンライン授業が6:4ぐらいの割合です。  昨年詩論集「波打ち際の詩想を歩く」を出版しました。   280ページを超える本になりました。  まとめの詩論集という事でいろいろ取り入れました。   

岐阜県瑞浪市生まれで、6歳ごろ母親の実家で暮らす時期がありました。    祖父は教員をやっていていました。   寂しい思いをした時には石ころが友達になりました。  或る時に祖父から瑪瑙という石をもらいました。  そこから興味がだんだん広がっていきました。   子供向け鉱物図鑑を買ってもらって、いろいろ学びました。   大学は信州大学理学部地質学科に入学、下宿生活をしながら、アルバイト、発掘のお手伝いなどやっていました。    精神的にも落ち込んだ時期がありカウンセラーと話をするなかで、自分の心を振り返ることにもなるから、一日に一行でもいいから日記を書いてみないかと言われました。  2行、3行書くようになってそれが詩らしきものになりました。   

北海道大学大学院理学研究科へ進みました。  処女詩集の「掌の中の小石」を25歳に出しました。  卒業して最初の学校は岩見沢で「文学岩見沢」という歴史のある文芸総合誌があり、そこに投稿させていただきました。   いろんなジャンルがありまして、ジャンルに関わらず一番いいものを奨励賞という事で表彰しますが、2年ぐらいして文学岩見沢奨励賞を頂きました。   伊藤蓮?さんが文学岩見沢の代表でした。  伊藤さんは私が大学院の時に北海道詩人協会の会長をされていました。  励まされて詩作をつづけることができました。  

*詩集 「海のエスキス」から「海の話」  朗読

専門は地質学ですが、古生物学といって化石が対象になっています。  範囲も広がり研究手法もよりダイナミックになりました。   北海道は別のプレートがぶつかってできたところで、地質学的にも非常に重要なところで、私の専門は貝の化石ですが、貝の化石もたくさん出てきますし、アンモナイト、恐竜などの化石も出てきて面白いところだと思います。  日本海、太平洋、オホーツク海の3つに囲まれていて、海流に関連していろんな生物が流れついたり、打ち上げられる。  ここ10年ぐらい奄美のほうの黒潮にも興味を持っています。

ビーチコーミング学の意味、ビーチは海岸でコーミングの「コーム」というのは、髪の毛をとくのに使う櫛、「コーム(comb)」が語源で、櫛のように浜辺に落ちている漂着物を拾い集める知的な遊びのことです。   漂着物学会があり、科学の視点で見てみるとまた違った見方ができる。  海の環境の変化を反映している。  日本は自然海岸が減っています。  津波などを避けるための防潮堤が出来たり、開発により砂浜などが埋め立てられる。  生態系への影響もあります。   

同じ海を見ても、科学の論文では英文で書いて横書きで論理的に考えますが、詩的な観点から見れば、イメージで縦書きで書きますから、全く違ったような捉え方をします。  それが自分には新鮮な感じがします。   

*詩集 「海のエスキス」から「漂流物」  朗読  

湯川秀樹博士のエッセー  「詩と科学は遠いようで近い、近いようで遠い。・・・二つの道は時々思いがけなく交差することさえあるのである。」