青山美智子(作家) ・書きたい思いを信じ続けて
1970年生まれ、愛知県出身。 大学卒業後オーストラリアに渡り、シドニーの日系新聞社で記者として2年間勤務、帰国後雑誌編集者を経て執筆活動に入る。 2017年8月、単行本『木曜日にはココアを』で小説家デビュー。 5冊目となる『お探し物は図書室まで』で第18回2021年度本屋大賞の第2位に選ばれました。 作家になることを目標に試行錯誤を続け、迷う時期も経る中で、自分が書きたいというシンプルな思いを大切にしてきたという青山美智子さんに伺います。
本屋大賞に『お探し物は図書室まで』がノミネートされた時にびっくりしました。 2位もうれしいですが、見つけていただいたという事に感謝の気持ちでいっぱいです。 この本を書き始めたのがちょうどコロナが始まったころで、コロナ自体は出てきませんが、私なりに感じたことは入れ込んでいるつもりです。 5つの短編からなり、20代から60代までの人たちの自分が抱えている問題と向き合いながら、図書室で別の本を勧められてという物語で登場人物がどこかでつながっている。 コロナが起きてそれぞれ全員違う境遇になっているという事があり掬い取って書きたいという部分ではありました。 偶然とか運命とかではなくても、この人とこの人は繋がっていたのと、日常的にすごくあることですし、それぞれの立場で見える景色が違うとか、自分がつながっているつもりはないのに、誰かに影響を与えているとか、私が小説を書く上で一番大切にしたい部分だなと思います。 付録を書きたいなあと思って、編集さんが現物がいいといって、既製品ではいやだなと思って、羊毛フェルトだったらいいと思って決めました。 手芸は全然できないです。
子ども時代は妄想ばかりしている子でした。 椅子としゃべっていたりして、今でも物としゃべったりしています。 中学生のころには話を書いたりしていました。 氷室冴子さんの「シンデレラ迷宮」という本に出合って、読んだらすごくおもしろくて、なんて小説って面白いんだろうと目覚めて、真似して書き始めました。 ずーっと書き続けていて、同人誌にもはいって、小説家になりたいと思って、新人賞の募集があると投稿していました。
ワーキング・ホリデーという制度を知って、働けて学校も行けて語学習得もできて1年間自由にできるという事を知って、大学を卒業してオーストラリアに行きました。 日系の新聞社の記者の募集があり、2年間勤務しました。 東京に行きたいという思いがあり帰国しました。 出版社で雑誌の編集をずーっとやっていました。 出版社も5社ぐらい転々としましたが、結婚してフリーになりました。 小説家になりたいという思いはずーっと持っていました。 いろんなジャンルの小説を書きましたが、どこも引っかからないで、デビューできませんでした。書評では、青山さんの小説は毒がなさすぎるといわれました。 しかし自分はそうではないんじゃないかと思って、ある雑誌に掲載する機会があり自分なりに好きなように書いて、月に一回掲載していたのが、『木曜日にはココアを』の原型です。
14歳で小説家になろうと思って、デビューが47歳で33年間かかっています。 『木曜日にはココアを』は私の夢をかなえてくれた本です。 2020年 第1回宮崎本大賞受賞を頂いています。 投稿していた時代は書くだけでしたが、デビューしてからは一緒に作れる仲間がいるという事で、信頼できる人たちと一緒に本を作ってそれを一緒に読者に届ける事ができるという事はすごく楽しくて幸せだなあと思います。 これがやりたかったんだと思います。 田中達也さんによる表紙がすごく素敵で、本屋さんでも並べでくれて表紙の力も大きかったと思います。
作風を変えないで、連作短編でいろいろな登場人物が出てきてというスタイルを続けていきたいと思っています。 50歳になって齢を重ねてきたからこそ見えてきたものがあるかなと自負もしています。 私は好きなように書いているので、読まれる方が好きなように受け取っていただけたらいいと思います。 地球には77億人が居て77億個の物語があるわけで、ネタは尽きることはないと思います。