2023年6月25日日曜日

三澤洋史(指揮者・作曲家)       ・〔夜明けのオペラ〕

 三澤洋史(指揮者・作曲家)       ・〔夜明けのオペラ〕

三澤洋史さんは1955年生まれ、国立音楽大学声楽学科卒業後、ドイツに留学、ベルリン芸術大学指揮科卒業、ベルリン・カラヤン・コンクール入選、1999年(平成11年)から2003年(平成15年)まで、バイロイト音楽祭で祝祭合唱団指導スタッフの一員として従事、2001年(平成13年)から現在まで新国立劇場合唱団の指揮者に就任、声楽のあらゆる様式の音楽に精通し、作曲も行う一方、若いころからバッハの音楽に傾倒し、東京バロック・スコラーズを設立し、音楽監督としての活動も行っています。

群馬県高崎市出身で、父親は個人の建設業を営んでいて、ゆくゆくは大学の建築科に行って、一級建築士の免許を取って、父親の後を継ぐのかなあと思っていました。     音楽と出会ってしまってその道に入ることになりました。  中学の時には吹奏楽にいました。  高校から合唱部に入りました。   自分の中に醜いものがあるという事に耐えられなくて、同時に綺麗なものとか穢れなきものとか崇高なものとかに憧れる気持ちが自分の中にあって、それをまず音楽に求めたんですね。  当時男声合唱が盛んでした。    音大に行って音楽家になることを考えました。  聞くのはドイツ音楽一辺倒でした。  バッハを聞いてみたら衝撃を受けて、この音楽にある気高さみたいなもの、祈りの感じ、それは音楽しかないなと思いました。  バッハはカンタータをたくさん残していますが、バッハの音楽にはほかの作曲家にはない気高さみたいなものが自分には感じられました。

*ロ短調ミサ曲 終曲   作曲:バッハ

最終的に完成したのは、バッハの死の前年の1749年。  マタイ受難曲ヨハネ受難曲と並び、バッハの作品の中でも最高峰に位置するとされている。

この曲は自分が知っているあらゆる音楽のなかで、一番好きなんです。  心が本当に洗われる感じで好きです。  何回聞いたか判りません。 暗譜しています。

国立音楽大学は声楽学科でしたが、なんか違和感を感じて、指揮をしたいという思いがあり、ベルリン芸術大学指揮科に行って卒業しました。  ベルリン・カラヤン・コンクール入選しました。  その後気が付いてみるとずーっとオペラの仕事をしているんです。  ドイツ留学中はいろいろ勉強もあり、バッハに対してそんなに密ではなかったです。   日本に帰ってきて最初にやったのが、オペラの仕事でした。   二期会で副指揮者をしたり、オペラの仕事がどんどん来ました。  オペラが好きになったのは、ドラマと音楽との融合というところがあると思います。  

1999年(平成11年)から2003年(平成15年)まで、バイロイト音楽祭で祝祭合唱団指導スタッフの一員として従事しましたが、きっかけは1997年新国立劇場が開場するときに、3つ演目があり、團 伊玖磨さん作曲の「TAKERU」の初演と、ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した「アイーダ」、ワーグナーの作曲した「ローエングリン」で、日本に来た時に合唱指揮者ノルベルト・バラチュと親交を深めてバイロイト音楽祭に呼んでいただきました。  ワーグナーにはバッハの次ぐらい、物凄く惹かれています。  呼ばれて5年間アシスタントをやりました。   バイロイト音楽祭はひと夏使うわけで、ワーグナーの音楽に浸りにくるわけです。  私もワーグナーの音楽にどっぷり浸かりました。  

2001年(平成13年)から新国立劇場合唱団の指揮者に就任しました。  ドイツ語のものよりもイタリア語の方が多いと思います。  2011年(平成23年)には、文化庁在外研修員として、ミラノスカラ座において3か月研修を受けました。  イタリア語が大好きになりました。  今でもイタリア語の研修に行っています。  合唱指揮者になるとドイツ語、イタリア語の言葉のニュアンスを指導できないと話にならないです。  

プッチーニはヒロインの登場に物凄く神経を使って作曲しています。 蝶々夫人』の一幕の登場は、女声合唱が物凄くきれいなハーモニーで蝶々さんの登場を包むんです。     あでやかさ、若さ、輝くばかりの蝶々さんが登場してくる。 

蝶々夫人』の一幕の登場シーン  作曲:プッチーニ 

合唱指導の大事な事、私は発声から指導します。  発声のことはずーっと研究しています。  それから発音です。   表現の色を合唱団から引き出す。   私の尊敬する合唱指揮者ノルベルト・バラチュも凄く細かくいっていました。 新国立劇場合唱団の指導を20年以上やっていますが、どうやったらノルベルト・バラチュの様に指導できるんだろうと、いつも思っていました。 

蝶々夫人』のハミングコーラス   作曲:プッチーニ

段々歳を取って来て、人間と言うものが好きになってきた。  人間と言うものが興味深いものだという風に思うようになってきた。  究極的なオペラと言ったら、「ファルスタッフ」ですね。  ジュゼッペ・ヴェルディ作曲   「人間の愚かさを含めてみんなで笑いましょう」みたいな感じです。

『ファルスタッフ』から3幕「この世は全て道化の世界さ」  作曲:ヴェルディ

人生は道化だという、そして人間賛歌。