2023年1月29日日曜日

原口美智代(猫専門新聞  副編集長)   ・夫のロマンは妻の苦しみ、そして生きがい

原口美智代(猫専門新聞  副編集長)   ・夫のロマンは妻の苦しみ、そして生きがい 

猫に関するエッセーや評論、詩などの文学作品を掲載している大人向けの猫の専門誌が去年七月創刊28周年を迎えました。   創刊したのは文学と猫が好きな原口緑郎さんです。   しかし、1年後に脳出血で倒れ休刊。  リハビリ生活の末、5年後に復刊し、妻の美智代さんと2人で28年間発行し続けてきました。   しかし、去年の末に緑郎さんが亡くなり美智代さん自身も高齢に加えて健康不安を抱えて、若い人たちにバトンタッチをしたいと考えています。   数々の試練を乗り越え、夫の夢を必死でかなえ続けてきた原口美智代さんに、新聞つくりの苦労と生き甲斐を伺いました。

2022年12月20日猫新聞編集長だった主人(82歳)がなくなりました。  結婚して56年目で、27年間闘病生活でした。    主人は心が癒される仕事がしたいと思うようになって、猫が好きで、文学が好き、絵、音楽が好きでしたから、企業人ではなく文化人で、猫新聞を思いついたらしいです。  タブレット版の8ページ、詩があったり、音楽作品があったりしています。  ページを開くと名だたる方々の猫にちなんだエッセー集、詩、評論など数多く掲載されていて、格調高い新聞となっています。   写真ではなく猫の絵でやろうという事で探して、絵の下に詩をつけてという形で創刊しました。  

最初は大反対でした。  お金もなく、友達から借りるにしても1,2回はいいが毎月猫の新聞など出せないと言っていました。  始めましたが、1回出しただけで具合が悪くなり、1年で倒れてしまいました。   治療して普通になり、復刊したのが28年前の7月でした。  脳出血で左半身完全麻痺で、倒れてすぐ車椅子になりました。  東京から中伊豆温泉病院に転院しました。  別荘だった家を借りてそこから病院へ行ったり来たりしました。  半年後に出て行くように言われ、結局7か所変えました。 伊豆、東京、新潟にも行きました。   倒れた時から廃刊と思っていましたが、作家の方々には「今は休刊しています」と言ったら、復刊するのを楽しみにして待っています、という手紙が来たりして、主人は喜んで泣いていました。 それで主人はリハビリを頑張るようになりました。

復刊は東京の病院へ入院している時に、主人が可愛がっている毎日新聞の記者がいて、見舞いに来てもらって、話をしていたら、毎日新聞の社長の斉藤明さんが猫好きだったんです。  復刊するなら協力させてほしいという思いがけない話を頂きました。   リハビリに励み5年七か月休刊しましたが、22日は猫の日なのでその日に猫新聞というところを半ページ作っていただき、そこに表紙の絵と詩とエッセー、8年間掲載してくれました。  

猫新聞のモットーは「富国強猫」です。  猫がゆったり眠りながら暮らせる国は心が富む国と言っています。  執筆者には、素人なので全部当たって砕けろで、原稿依頼していました。  松谷みよ子さん、吉本隆明さん、長田弘さん、浅田次郎さん、養老孟司さん、山田洋二さん、森村誠一さん、林真理子さん、水谷八重子さん、加山雄三さん、安城由貴子さん、小池真理子さん、角田光代さんなどそうそうたるかたがたです。  全部で300人ぐらいいると思います。   表紙を飾っている絵も最初は大変でした。  画廊巡りをしていましたが、資生堂の名誉会長の福原さんが企業人の雑誌の編集長をしていて、福原さんに猫新聞を送ったら、福原さんから画集が送られてきました。 全部猫なんです。  紹介してほしいと言ったら、小銀という名前で、猫新聞の表紙に使いたいのであれば、無料で全部データは取ってあるので、お貸ししますといってきてびっくりしました。

画家の方も熊谷守一さん、小沢良吉さん、やなせたかしさん、いわさきちひろさん、和田誠さん、横尾忠則さん、里中満智子さん等の作品があります。  絵と文学作品とのマッチングが難しかったです。   

車椅子からひっくり返ってしまって、それまで要介護3だったのが要介護5になってしまって、それからがより大変になり、介護施設に主人を入れました。   2022年11月25日が結婚して56年目の結婚記念日でした。  スマホで話しましたが、その時には意識がありました。    

動物愛護ワンダフルパートナーズ賞  川島なお美さんが動物愛護基金を作った。 湯川れい子さんの推薦で頂きました。  身体は障害者になっているが、心は障害者になっていない、というのが主人の持論でした。    私も身体の具合がよくなくなってきて思いますが、よく主人は愚痴を言わなかったと思いました。  聞くと身体の左にナイフが巡っているようだというんです。    主人を精神貴族と言います。  プライドが高いです。 自分の思う事はどんどんやって行っちゃう。  猫新聞を出す時に広告なしでやっていきますという事でやってきました。   経費も大変で、猫新聞を支える会を立ち上げたら、NHKのテレビが取材に入りました。   そこで900万円も集まりました。  支える会は13年続いています。    しかし今、猫新聞自体が大変で、辞めようか何年も前から悩んでいました。    若いスタッフがやりたいと言い出したんです。   是非応援して猫新聞を続けてくださる方が出てくださると有難いと思っています。  

月刊「ねこ新聞」を創った夫婦 夫のロマンは妻の苦しみ」を昨年出版。  主人が生きているうちに本を渡せることが出来て良かったです。  大変な思いで28年間生きてきたので、主人には「ご苦労様でした。」と言ってあげたいです。  猫新聞緒経営に加わってくれる人がいたら、お力添えを頂きたいと願っています。