豊澤長一郎(義太夫三味線奏者) ・〔にっぽんの音〕
案内役 能楽師狂言方 大藏基誠
歌舞伎座での公演に出演中。 第三部「十六夜清心」 河竹黙阿弥の作品で禁断の恋の物語。 正月の舞台は、正月らしい華やかな雰囲気があります。 落語界ではないのでお年玉はないです。
義太夫は物語を三味線の伴奏で語る芸能、文楽、人形浄瑠璃や女流義太夫の舞台、歌舞伎の舞台でも聞くことができる。 文楽の義太夫三味線とは違います。 大きくは人形を相手にするのと、役者さんを相手にするのとがあります。 文楽は三位一体と言って人形と太夫と三味線が一体となってやっている。 歌舞伎は役者を盛り立てるための三味線になります。
江戸時代に人気になったものを歌舞伎に移行したというのが多いです。 竹本義太夫が竹本の創始者で竹本連中と呼んでいます。
おめでたい演目、「萬歳」、「三番叟」をミックスさせたものをちょっと聞いていただきます。 単独で聞くという事まずはないです。
*「萬歳」+「三番叟」 演奏:豊澤長一郎
三味線を大きく分けると、細棹、中棹、太棹があり、太棹に義太夫三味線と津軽三味線があります。 棹の太さが同じだけで音色は全然違います。 ばち、駒も糸張の高さも全然違います。 ばちが分厚いです。 握るのが至難の業です。
滋賀県長浜市の出身で、子供歌舞伎が毎年4月に開催されますが、2016年にユネスコの無形文化財に指定されました。 自分も三番叟を舞ったことがあります。 養成塾に高校1年生の時に父の無理やりの勧めで入りました。 父は剣舞術という別の師範をやっていて、習っていたんですが、こちらを無理やりやれと言われました。 若い時からそれをやるというのに抵抗がありました。 重低音の迫力があります。 駒も厚みが違って義太夫三味線は薄く、津軽三味線は厚いです。 弦も義太夫三味線が太いです。
19歳の時に上京し、義太夫三味線、語り、琴、胡弓、茶道も2年間みっちりしごかれました。 21歳の時にデビューしました。 プロになりたい人たちを国が援助して育てる養成機関がありますが、年々減っているようです。 手厚い研修があるので是非利用してください。 長浜時代にやっていたので、悪い癖を取るのが大変でした。 同期が太夫、三味線を含めて15人が卒業が5人でした。
初舞台が「曾根崎心中」で緊張しました。 役者さんによって安定して演技する人と違って演じる人がいますが、その様子を見ながら合わせて演奏します。 入り方には気を使います。
*「恋飛脚大和往来」の「新口村の場」の一場面、雪が凄く降りしきるなかで親子が別れる場面。演奏:豊澤長一郎
日本の音とは、夏は風鈴、冬は除夜の鐘、虫の鳴き声など、四季折々の音色を的確に表現する和楽器の音色。 義太夫三味線の魅力を伝えていきたいと思っています。