中村恵(国連UNHCR協会事務局長特命/渉外担当)・真の国際人 緒方貞子の生き方
1989年に国連難民高等弁務官事務所UNHCRに就職、ジュネーブの本部やミャンマーの援助現場での活動を経験したのち、2001年から緒方貞子さんのパーソナルアシスタントを務めました。 緒方貞子さんと言えば日本人初女性初の国連難民高等弁務官として10年間に渡り世界の難民のために尽くした人物です。 中村さんは比類なきリーダーとしての緒方さんをそばで見つめ、その強さとは何かをエッセンスを本にまとめ去年出版しました。 中村さんが緒方さんから引き継ごうとしているバトンとはどういうものか伺いました。
「難民に希望の光を 真の国際人 緒方貞子の生き方」という本を昨年出版。 中村さんは12年半に渡って緒方さんの近くで仕事をしながら見続けてきました。
緒方さんと最初に出会ったのが1991年国連難民高等弁務官としてジュネーブに赴任された時でした。 その後ご縁があってパーソナルアシスタントとして約2年半緒方さんのそばでお手伝いさせてもらえる機会がありました。 近くにいていろんなことを理解できるようになりました。 その後のお付き合いでも緒方さんからたくさんのことを学んだので、自分だけではなくこれからの若い世代の方に伝えることが出来れば、私なりに役割を果たせるのではないかと思って、3年ぐらいかかって本を出版することになりました。
緒方貞子さんは1927年、東京府東京市麻布区(現東京都港区)に生まれる。 父は外交官元フィンランド特命全権公使、母方の曽祖父は5・15事件で海軍青年将校に暗殺された元総理大臣の犬養 毅さん。 父に伴って幼少期にはアメリカで暮らし、聖心女子大学の一期生になりました。
英語が堪能で、どこに出ても全く物おじしない、品格があります。 日本語も綺麗な日本語を話します。 日本的でありながら国際的である、その二つが同居している魅力がありました。 聖心女子大学学長のマザーブリットは教育に心血を注いだ方で、何人かに聞いたんですが、自分が一番マザーブリットに愛されていたと思っていたというんです。 凄いことだと思います。 緒方さんも一身に受けて学生時代を過ごしたわけです。 自治会の会長も務める。 「自分の頭で考えなさい」と言われたそうです。 大学のテニス部の創設にも関わった様です。 国連難民高等弁務官になってもテニスは続けて居ました。 アメリカに留学して国際政治学を学んで博士号を取得。 国連の日本政府代表部の講師、上智大学の外国語学部長を経て、1991年に第8代国連難民高等弁務官に就任。
緒方さんが来る前に、ベルリンの壁が崩壊して世界が大きく変動、当時UNHCRで内部スキャンダルがあって、これからいらない組織になるのではないかと言われていました。 第7代弁務官が凄いリストラをして暗い職場になっていました。 そんななかで緒方さんが就任しました。 難民というのは、 英語でrefugeeと言いますが、 refuge(避難、保護、避難所)という言葉から発生した言葉です。 避難民と和訳したほうが近いかもしれません。 昨年5月には避難民は1億人を超えてしまったと発表されている。 11月に人口が80億人を超えたという発表がありましたが、80人に1人が避難民になっているという現実です。
UNHCRの仕事は命を助ける事です。 政治的な解決がない限り、物事は進まない。 でも命の危険のある人がいたらをけたい。 難民支援においては希望が大切です。 命を助ける事だけではなくて、希望を繋いでいくことがいかに大切か、を改めて確信しました。 希望に想いを託す、希望がないと生きて行けない。 未来への希望さえあれば今日を生き抜くことができる。
危険なところへ緒方さんが行くから職員も奮い立つわけです。 緒方さんが満州事変について博士論文を書いています。 実証主義で満州事変のことを纏めています。 その原体験をも
って難民問題についても事実を集めて分析する態度に繋がって行ったと思います。 物事をきちんとするタイプで緒方さんはよく質問しました。 速読出来る方だったとも聞いています。(処理能力の凄さ)
緒方さんからの大事なキーワードが6つ、①並外れた体力 ②言葉の使い手 ③学ぶ力 ④超我の奉仕 ⑤楽天性 ⑥ぶれない信念 緒方さんは物事をシンプルに判りやすく伝えることが上手でした。(抽象的な言葉は使わない、具体的) 「ものは言いようですよ」と言われたことが印象的でした。 言葉を受け取る側のことを常に考えて言葉を発する。 日常生活でも同様ですね。 緒方さんは精神がぶれないです。 楽天的な性格です。 これから起こる事に対して無駄な妄想、心配はしない。 今の一瞬に最善を尽くして生きているんだと思います。 若い人には今から心身を鍛えてゆくことが重要ですよと、この本で伝えたかった。
緒方さんの言葉、 「私は人間が生きる上で一番大切なことは人生という与えられた貴重な時間の中で、自分を十分に生かして生きてゆくことだと考えています。 地球上の誰もがそうした人生を送るためにも、まず一人一人がどこかで苦しんでいる人がいることを忘れずにいて欲しい。 そして地球上共に生きる人間として連帯感を持ち続けて欲しい。 心から願ってやみません。」