渡辺崇人(ベンチャー企業代表) ・〔美味しい仕事人〕 食品ロスと食糧危機に挑む
まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロス、一方で世界人口の増加による食糧危機、この二つの課題に、昆虫のコウロギを役立てようと取り組みを進めている人物がいます。 ベンチャー企業代表の渡辺崇人さん(38歳)です。 渡辺さんは徳島大学バイオイノベーション研究所の講師でもあります。 現在大学発のベンチャー企業でタンパク質が高度なコウロギを食料として役立てるため、養殖から商品化までの一貫生産に取り組んでいます。
コウロギを乾燥させて粉末化してプロテインのパウダーとして使って行っていただこうと思っています。 コウロギせんべいは全国的にヒット。 20代後半から40代の人が客層としては多いです。 コウロギチョコ、クッキーなども販売しています。 LCTの機内食の一部ではパウダーを使ったハンバーガーとかパスタが採用されています。 味は育て方、粉末化する過程でも変わって来ます。 一般的に言われるのはエビやカニのような甲殻類に近いような風味があると言われます。 栄養面ではタンパク質が豊富です。 乾燥状態で70%はタンパク質になっています。 ビタミン類、ミネラル類も含まれています。 健康面にどういいかという事を見出そうとしています。
既存のたんぱく資源(牛、豚、鳥など)と比べて育てるための環境負荷という面でかなり効率が良い。 コウロギは変温動物なので一定の温度に保つという事がありますが、そのための温室効果ガスは牛や豚に比べれば少ないです。 同じ量の餌を食べてそれが何kgタンパクになるのかという効率がありますが、牛や豚に比べれば5倍程度はあります。 コウロギは餌を平均で1,7kg与えれば1kg体重が増加すると言われていて、牛だと10kg餌を与えて1kg体重が増えるという状況です。
サーキュラーフード(循環型の食品)と呼んでいます。 日本ではいろいろな食品を輸入に頼っています。 世界的に見ても食品が有効活用されていない。 食品ロスを活用する手段一つとしてコウロギが使えるのではないかと思っています。 食品ロスからコウロギを育てることで、循環型のたんぱく質を得るためにコウロギ使って行こうというのがサーキュラーフードというわけです。 コウロギが雑食で何でも食べてくれます。 小麦のぬかなどを使っています。 余分に生産してみんなの口に入っていないものが多い、1/3は食べられずに捨てられてしまっているという現状もあります。 その食品ロスをコウロギの餌に使って生産していけば、食糧問題の一つの助けになると思います。
元々は遺伝子工学が専門でした。 受精して一個だったものが細胞分裂してそれぞれの形になってゆくが、遺伝子によってコントロールされている。 その遺伝子がどのようにかかわって来てるのかという事を研究していました。 どちらかというと昆虫は苦手なタイプでした。 研究の対象としていたのがコウロギでした。 研究費の確保ができなくなって 、どうやったら社会の役に立てるのかという事を考えた時に、欧米で昆虫を新たなたんぱく質資源として使うという研究があり、そこに軸足を置いた方がいいという事でコウロギを食料にしてゆこうという事に向かっていきました。
徳島大学では30年以上のコウロギに関する歴史があります。 私自身はコウロギの研究は17年目です。 2016年から応用研究をスタートして、2019年に徳島大学初のベンチャー企業がスタートしました。 直ぐにコウロギせんべいの取り組みが始まりました。 1年後には販売に繋がりました。 持続可能な産業にするためには効率化を図っていかなければならないので、人件費がかかるので自動化のことも考えないといけないと思っています。 コウロギがストレスなく過ごす環境を取り入れながら、水、食料の供給など自動化してゆく。 まずは大量に供給できる体制を整えなければと思っています。 手に取って購入することが変わったことではないと思えるようにさまざまな商品を出しながら、広げてゆくのが大事なポイントになると思います。 海外での生産体制の拡充も図っていきたい。 食品ロスを使って効率の良い生産をしていきたいです。