2023年1月11日水曜日

大友啓史(映画監督)          ・映画だから伝わること

 大友啓史(映画監督)          ・映画だから伝わること

1996年生まれ、岩手県出身。  慶應義塾大学法学部法律学科を卒業1990年にNHK入局、秋田放送局を経てドラマ番組に配属、連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズ、「ハゲタカ」、「白洲次郎」、大河ドラマ「龍馬伝」などを演出しました。  2011年NHKを退局、その後映画監督として活動しています。  2012年から始まったるろうに剣心」が大ヒットして、そのほかにも「3月のライオン」、「億男」など話題の映画を監督しています。

新作映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』今月27日から公開。  戦国時代、信長を主人公にした映画で、濃姫の目線から見た信長で、一風変わったラブストーリーとみてもいいのでは。  信長に木村拓哉さん、濃姫に綾瀬はるかさんを軸に展開する。  レジェンド」は織田信長のことであり、「バタフライ」は「帰蝶」という呼び名があったと言われる信長の正室・濃姫を意味する。  2時間48分ですが、あっという間でしたと言われます。  ネットムービーとはちょっと違たものを作らなければいけないという意識がありました。  若い人、時代劇を見ない人にも届くものを作ってほしいという熱意を凄く感じました。   「龍馬伝」もそうでしたが、今回の信長も身近な存在として表現したかった。  同じ人間であり、同じ風土で生きた人間なので、信長の生っぽい感情を大切にしてゆきたいと、木村拓哉さんも言っていました。 

戦国時代は男尊女卑、夫唱婦随の時代ですから、そちらの観点から見がちですが、今回の話は濃姫の夢を叶えるために信長が動くという、この切り口は面白いと思っていて、冒頭の輿入れではお嫁さんが完全な人質なわけです。  戦国時代の男と女の命がけの儀式であったと、戦国時代は家の生き残りであったと、そう捉えると見え方が変わってくるわけです。  濃姫が男だったら天下を取ったのではないかというような設定で作っています。   男って地位を与えられるとどんどん昇って行ったり、地位で物を言ったりしますよね。    その過程で愛を知り、愛が生まれ、熟成をしてゆくというような話になればいいと思いました。   お城を二人が出ると街中では、一般庶民と接することはないので二人の顔を知っているわけではなく、一瞬の心地よさ、自由さを感じ、未知の世界に憧れてゆく、二人で同じ自由を感じて、そこで愛を確認し合うという事です。  

撮っている時の自分は熱くなっているわけではなく、とっても冷めています。   作るうえで大事なのは、作品は自分の魂を込めてゆく作品を作るという事なんですが、一方で誰かに見てもらわないとしょうがない事なので、観てもらうという事はどこか僕のなかのベースにある、そのベースはサービスなんじゃないかと思うんです。   サービスなんかどうでもいいという風に傾けて撮ったのが、唯一「影裏」という作品ですが、それ以外の作品は観ている人が第一だと思って作ってますが、その時には緩急とかバランス、シリアスと笑いのバランスとか、自分の整理のリズムとして撮っているのがあって、微調整は常にやっています。  寝る前に編集などしてしまうので不眠症に成ったりします。

映画が2時間か、1時間半なのか、連続ドラマなのか、時間によって整理のルールがあるんです。  20,30年やっているとそういった体内リズムが出来てきます。  音楽も大事でチェロをメインにしたいと思って話したら、音楽担当の佐藤直紀さんが日本にいる一流チェロリストを全員集めて、32本のチェリストの編成を今回やりました。  合戦のアクションの激しさに当てるのではなくて、人物の感情はどうなのかそちら側に当てています。  時代劇ですが洋風な感じになっています。  テレビだと音をコントロールするのが難しいが映画だと自由に出来るので楽しいです。  

フリーになる時も何となくもうやめなきゃな見たいな感じで辞めたので、自分で選択しているので、自分で決めたことを割り切れたりするので、そういった部分でのストレスは余り無いです。   秋田放送局に入った時には、なんでもできましたが、ドラマだけは地方局では作れませんでした。  やったことがないことをやりたくて、ドラマの人ともつながりが出来て、ドラマの道に進みました。   放送局時代にノンフィクションで得られた手触りをフィクションに持ち込みたいと思ったんです。   今回も衣装、肌の感じとか生活感とか徹底してやっています。  そういったことはドキュメンタリーがベースになって来ました。  ドキュメンタリーは構成通りにはいきません。  若いころからそういった形でやってきたので、監督のプランニング通りに出来て当たり前というようなことが普通の発想ですが、僕の頭のなかの想定以外のことが起きてくれないとOK出さないような整理になってしまっているのがややっこしいところです。