廣瀬タカ子(里親・ファミリーホーム運営)・いのちが出会って家族になる
74歳、里親として常時5,6人の里子を受け入れるファミリーホームを運営して31年になります。 里子を受け入れる環境を整え、広げたいと全国連絡会を作って国に陳情し、この小規模住宅型児童養育事業ファミリーホームは2009年から国の事業にもなっています。 子供にとって乳児期に信頼できる大人と深い愛着関係を育てることが、その後の人間関係を築くうえで大切です。 それは血縁に限られるものではないと廣瀬さんは言います。 親子とはなにか、家族とはなにか廣瀬さんと里子たちとの日常の暮らしから考えて行きます。
今は6人と補助さんと私たち夫婦と暮らしています。 補助さんは常勤とパートさんといて14人ぐらいいます。 補助さんは日中自由に出入りします。 いま赤ちゃんから高校生までばらばらにいます。 朝は起きてきた順番に食べるようになります。 ホームに初めて来た子は何を食べたいかとか言えないし、冷蔵庫の中とか自分の席にないものは食べられないと思っている。 施設にいた子は決まった時間に決まった事をやるような生活をしていたので、自由に出来ることに対して最初は大変だったようです。 食べるもの、お風呂とか、寝る時間、起きる時間など自分たちで考えて行動していけるように、向けてあげたらいいなあと思ってます。 家のなかではリラックスできるところだと思います。
以前は「お母さん」と言われていましたが、今は「タカちゃん」と名前で呼んでくれています。 子供たちも名前で呼んでいます。 実の親については児童相談所と連絡を取りながら、子供たちにいつかは認識してもらって、自分は自分で必要な環境の中で学んだことを自分たちで生かしていってくれればいいと思います。 肉親の関係を途切れることなく、命と言うもののつながりがあるんだと、「タカちゃんたちは応援しているからね」と言ったりして対応しています。
病気の時などは受診券を県から発行してもらって、保険証のある子は出して、受診券を出して登録してもらって受診します。 地域の人、医療機関、学校など関係機関が連携して暖かく見守ってもらっています。 0歳児は児童相談所が動いて委託先をさがしてきます。 うちではどんな子でも、と言う風にうちの基盤があるので、途中で逃げ出した親御さんであっても、虐待で死にそうにたり、殺されそうになった赤ちゃんでも、未熟児、へその緒が付いた赤ちゃん、どんな赤ちゃんでも受けます。 命を助けるのに私も死に物狂いというか、新生児が来たばっかりはどんなことが起きるかわからない。 ミルクが全く飲めない、2000gに満たない赤ちゃんがいて、病院に連絡を入れたら、体内虐待を受けている子だった。 お腹の中にいる間に、DVを受けたり、急激な変化がお母さんのなかで緊張したり、いろんな外圧にお母さんが耐える時に、赤ちゃんもお腹の中で耐えるんだと思います。 24時間365日目を離さない。 熱出したり、下痢したり、吐き戻したりすると一番危険です。 病院にすぐ連絡できるようにします。 そういった乳幼児は30人ぐらいいて、養子に行けたら養子に出します。 実の親のところに帰れる子は帰る。
若いお母さんは自信をもって生んで欲しい。 赤ちゃんが出来たからと言って罪なことではない。 サポートするところはいっぱいあるから、応援するからと言いたいです。 子供たちは決してどうでもいい子なんていないんです。 一人一人大切な命をみんなで支えるような世の中になってほしいと思います。 74歳になっても、生まれてきた命は明日につなげたい、ただただそう思っています。 毎日が凄く大変ですが、大変な毎日を誰かがサポートしてくれるものなんです。 中学生ぐらいから妊娠、出産につながってくるケースがあるんです。 サポートにつなげていけるところがあればいいし、手を差し伸べてくれる人たちがいればなおいいと思います。
親が納得すれば養子に行くケースが多いです。 親子の別れがあるわけで、その親に言うんですが、「貴方は貴方の人生だし、いま思春期でこれから楽しいことがいっぱいある、この子のために楽しい人生を棒にしたら絶対生涯苦しむことになるから、自分の人生を、正しい状況で青春を謳歌しなさい、そのためには過ちと思わないで、それを別の人にゆだねるのも方法だよ」と、説得するわけです。 「うん」と言ってくれる人は手続きをする。 養子に行って20歳を過ぎたら、やっぱり親に会いたいと言ってきます。 生みの親は生みの親で生活しているから、会うことは構わないけれどもそこに入り込まないようにと一言言います。 「そうする。」と言います。 赤ちゃんからそこまで言うまで、育てるのがまあ大変なんです。 小学校2年生の頃に自分の養育歴を勉強するわけです。 そこのところがネックになっていますが、そこでは事実を隠さないでしっかり教えています。
自信がないと前に進めないんです。 心の支えは一緒にいる人がどう寄り添うかによって、子供の成長過程は変わってきます。 相手方がいいとか悪いとかは、自分の見方だから、自分の目線だからね、自分の目の高さでないと排除しよとするから悪くなってしまうけど、それは自分と違うから相手も違うというところで、小さい時から教えてゆく。 みんながそれぞれ違っていいからそれを否定しない、と教えて行かないと大人の世界になった時に、あいつは厭な奴だとか、いじめに成ったりにつながって来る。 反抗期は自分を相手に団交できるという事は自分を出すという事だから、自立に向かっているわけです。 蓋をしないで大人になったねと、ものを壊すようになったねと言うわけです。 寛容に受け止めてあげて、対処の仕方を言ってあげる。
パワーはどこから生まれてくるのかと言われますが、子供たちから学びます。 子供たちは昨日できなかったことを今日できるんです。 その発見が何とも嬉しいわけです。 良いこと、悪いことの知恵の周り方が十人十色で全部違うわけです。 それが凄く新鮮なんです、毎日。 だから子供と一緒にいないと自分が自分でないような気がします。 人同士がやり取りする、支え合う、交流する。 年齢のリレーみたいなものだろうなあと思います。