井澤由美子(調理師・国際中医薬膳師) ・【美味しい仕事人】 養生ごはんのススメ
調理研究家としてNHK「今日の料理」や「あさイチ」などでもおなじみですが、365日、日々の食が心と身体の薬になるという考え方から、食薬養生の暮らしを提言しています。 中医学に基づく薬膳に学び、日本に伝わる郷土食の知恵、そして現代の栄養学の視点からも心と身体の健康にアプローチを続けています。
レモン塩が大ブームでした。 レモンをとてもよく使っていたが、皮を捨てるのがもったいなくて塩漬けにしたのが始まりでした。 旬のものをお塩に漬けたり、塩酢に漬けたりして楽しんでいます。 レモンの皮だけでなく果汁を入れた方がおいしいので、塩蔵すると長持ちして皮にとっても効能があって、皮が柔らかくなります。 調理しやすく、スープに一枚落とすだけで、皮は柔らかく香りのいいスープが出来るので、魚介スープだったら臭みも消すし、お肉のスープにいれると、レモンの効果でお肉が柔らかくなったりします。 私だけで6冊のレモン塩の本を出版しました。 企業とかが「塩レモン」を作って有名になりました。
手作りの面白さが皆さんに伝わるといいなあと思っています。 発酵食は長寿食ともいわれています。 長寿食は腸内環境を整えるものが多い。 その土地土地に根付いているものを土地の人が食べるという事が長寿食につながると思っています。 旬の食材はちゃんと効能があります。 7年前に立ち上げたホームページで「食薬ご飯」に毎日食材一つを載せています。 効能、効果、レシピが書いてあります。 心と身体が元気になって初めて人は元気になれるので、繋がって考えています。
国際中医薬膳師、中国の伝統医学に基づくもので、中医薬理論による食の組み立てとその調理法を学んだ人のことを国際中医薬膳師と言っています。 さらに深く学んだ人は国際中医師です。 私は食べたものがどんなふうに作用するかという事が知りたくて勉強しました。 「和魂漢才」と言う言葉がありますが、中国の学びを取りいれつつも日本の大和魂、心を大事にして組み合わせたという言葉です。 日本に伝わる民間療法とか、郷土食とかを上手く組わせて、現代栄養学を取り入れながら、レシピを組み立てています。日常の暮らしの中の食が、そのまま薬になり自分の身体を養生してゆく事になる。
料理の道に進んだのは一言で言うと、食いしん坊だったからです。 祖母が料理が好きで上手な人でした。 茶飯という炊き込みご飯で鰹節とか乗せてくれて食べるんですが、凄くおいしくて、記憶のおいしさと自分のものがいろいろブレンドしていって何かが出来上がっていく、その思いが料理の道へのベースになっていると思います。 母も料理が好きで料理教室などもやっています。 母は和食料理です。
卒業して23歳でお店を始めてしまいました。 4人姉妹で妹が3人居まして、妹に手伝ってもらって始めました。 築地が近くにあり取り寄せて、元気になるようにお客さんからのオーダーメードで作るようになりました。 マーサ・スチュワートの本を買って憧れました。 料理、園芸、手芸、室内装飾など生活全般を紹介していました。 或る人からマーサのテストキッチンを仰せつかって、マーサの日本版編集部に入って料理担当になりました。 私の人生はそこで変わったと思います。 祖母の感覚と似ていてマーサが好きでした。 そのころは店と編集部の仕事と子供も小さかったのでフル回転していました。
シニアー世代へのアドバイスとしては、発酵食の力、腸内環境をよくするという事ですね。 ヨーグルト、納豆、味噌など。 ヨーグルトに食物繊維を足したり、オイルを足したり、腸によりよく効かせる食べ方があります。 納豆も繊維は入っているが、ごま油をちょっと垂らすと、腸によりよく効かせることが出来ます。 発酵食+食物繊維+オイルで腸内環境はさらに良くなります。 納豆に醤油の替わりに酢と塩をちょっと入れると泡がふわふわになるのでそういった食べ方もいいと思います。 酢にコンブ、煮干しを漬けておくと、酢酸カルシュウムになるので、骨を元気にさせます。 常温でずーっと持ちます。
水は喉が渇く前に飲みます。 食はお腹がグーっとなってから食べるのが身体に優しい食べ方なんです。 水も冷たくなく常温にして飲む、胃がしっかり働くのは体温よりも2~3℃上なんです。 ゆっくり飲む方が身体に優しいです。 イチゴも食薬です。身体の余分な熱を取る効果もあり、ビタミンCがあるので栄養面もいいし、酸味と甘味があるので唾液が出やすくなる。 香りもいいので気のめぐりもよくする。 エリンギなどキノコ類は手でほぐして干しておくとビタミンBが増える。 エリンギはなんにでも使えます。 風邪をひいて白い鼻水の時には身体が冷えているので、ニンニク、ショウガ、ネギなど身体を温めるものを食べますが、黄色い鼻水が出ている時には身体に熱がこもっているというサインなので、豆腐とかを食べた方がいいです。
シニア―世代には旬のものを食べるのと,ラッキョウ、ネギ類、ニンニクとか滋養のあるものと身体を温めるものがお薦めです。 緑黄野菜は粘膜をケアしますからウイルスの侵入を防ぎます。 タンパク質も豆腐、魚、肉などバランスよく摂るといいと思います。
おはぎみたいな本を作ってみたい、未来にも残って行く本をゆっくり作りたい。 図書館みたいな、食堂を作ってみたい。 楽しく食べることが第一です。