安藤忠雄(建築家) ・人生はいつでも挑戦
世界で活躍する建築家の安藤さん、77歳、大阪で生まれ工業高校を卒業後、プロボクサーを経て独学で建築を学びました。
1級建築士の資格を取り独立、安藤忠雄建築研究所を設立、1979年に住吉の長屋で日本建築学会賞を受賞、代表作「光の教会」を初めコンクリートの素材を使って空間や光を取り入れた斬新な作品で注目を浴びます。
東京大学やハーバード大学で後進の指導にもあたり、2005年には国際建築科連合ではゴールドメダル賞を受賞、2010年に文化勲章 2013年にはフランス芸術文化勲章を受章するなど国際的にも高い評価を受けています。
現在も精力的に活躍している安藤さんですが、2009年にがんが発見されて、胆のう、胆管、十二指腸を切除、そして5年後2014年には膵臓、脾臓も切除しています。
5つの臓器を取りながらも手術後は規則的な生活で、医師も驚くほどの健康を取り戻しました。
人生はいつでも挑戦と、今はフランスでの新しいプロジェクトに取り組んでいます。
毎日1万歩、歩くことを目標にしています。
朝6時45分位から40分位歩いて、5000歩位になり、後は仕事などで歩いているうちに1万1000歩位になります。
4年前に手術した後に、内臓が無いので筋肉でカバーして消化を支えないといけない、そのためには毎日1万歩、歩かないといけないと言われました。
朝は10分位で食べていた時間を40分、昼も40分、夜はもう少し長く時間を掛けて食べています。
体重も64kgでほとんど変わっていません。
2009年の7月に小澤さんらと食事をしていた時に体力には自信があると言っていたんですが、8月末に病院から呼び出されてがんがあるので、胆のう、胆管、十二指腸を切除しなければいけないと言われました。
10時間位の手術で3つの臓器を取りました。
11月に小澤さんもがんになって、自信を持っていたらいけないと思って、その後、食べ物をゆっくりするようにと言われ、仕事ももっと控えるようにとも言われました。
山中さんらとの対談があると言うことでしたが、また膵臓脾臓にがんがあると言うので直ぐに取らないといけないと言われました。
膵臓を全部取って生きていけるのですかと聞いたら、全摘で生きている人もいますが、元気になった人はいませんと言われてしまいました。
7月10日に講演会を6時~8時までして、8時~9時までパーティーをして翌日の8時から11時間の手術をしました。
その後山中先生からは出来るだけ早くiPSを作りますとは言われましたが。
食事は40分、仕事を少なくする、それを決めて規則正しくやっています。
痛い、しんどい、下痢、便秘だとか全然無いです。
希望が前にあれば元気よくいけるんです。
私は病院で出てくる食事は薬だと思って全部食べました。
中国から色々仕事が来ます。
5つも臓器を取って元気にしているのでこんな縁起のいい人はいないので、縁起のいい美術館をつくってほしいということで話が来たりします。
去年秋に新国立美術館で美術展があり「光の教会」をそのまま建てて30万人来ました。
場所は借りられるが他は事務所の自前費用、15万人来れば何とかなると思ったが厳しい。
「光の教会」に7000万円、他の展示に7000万円、トータル1億5000万位掛かる。
20万人でプラスマイナスゼロ位かなと思いました。
カタログを沢山売ればいいと思って交渉したが2300円ということだった、別のところで交渉して3万5000部だったら710円ということだった。
その代わり全部の本にサインをするということだった。
その後2万5000部、また増えていって結局10万部売れましたが、サインは大変でした。
大阪人は発想が大胆、合理性があり、強引なところあり、東京では嫌われる、厄介なんです。
日本では女性が長生きで元気なのが売りで、映画、音楽会、本を読んだり色んな事をするが男性は飲んで寝る、これでは頭がしっかりで長生きは難しい。
私は自分が今なにが出来るかということを真剣に考えている間は何とかなるだろうと思っています。
自分が社会に何ができるか自分の建築の設計に何ができるか、ということを考え続けている間は元気だろうと思っています。
フランスで古い建築の中に新しいアイディアを、という話がありました。
2018年10月10日から12月一杯日仏友好160周年記念の中で実施。
古いものから貰えるオーラみたいなものがあるので、ベニスでサン・マルコ広場の前に古い建物の中にピノンさんという人が新しい世界を作った。
パリで同様の事をやる事になり私の処に話が来て、今年中に出来て来年の秋にオープンします。
食生活は大切にしないといけない。
朝はほとんど食べない、昼は簡単、夜コンビニでは長生きしない。(そうすると寿命は63歳だそうです)
朝から晩までパソコンをやっていると、いけない、食べながら一緒にやるとか。
人生を楽しまないといけない。
日本の建築技術は世界一だが値段が高い。
日本では生き生き働いている様には見えない、イタリアでは働いている人が生き生きしている。
古い建物を残して中にあたらしいものを作ることは、手間もお金もかかるかもしれないが、いいものを残すということが大事です。
被災地の古民家のなかを改造して子供の図書館をつくりませんかと、東北の三知事に話しました。
大阪でも作ろうと(中之島の公会堂に)話を持ちかけましたが、建築費が無いということで、では私のところで出しましょうと言って、運営費は30万円ずつ払ってくれる所を200軒集めたらどうかと言ったら反対も無く、上手く動いて行きました。
本を外でも中でも読めるようにしようと考えました。
上手くいかないことも一杯起こりますが、あきらめずにやってきています。
自分の出来る範囲の事をそれぞれがやればこの国は良くなりますよ。
日本は自然と共に生きていたからいいと言うならば、もっと自然を大切にしたほうがいいのではないかと思います。
下町で育って文化的なものがない、大学にも行けず専門学校にも行けず、そういった中で生きてきたので、壁があってもよじ登る、そうすると全国の人から、大阪の人から嫌われる、でも又壁をよじ登ってきたという人生だからいいんじゃないですか。
だれでも自分の職業を一生懸命やっていたら、楽しい人生を送れますよというものでないといけない、今はそういうふうになっていないでしょう。
生きている限り自分の出来ることをやる。
1000円募金で30万坪を森にしましょうということで、何回講演会をしたかわかりませんが、7億5000万円位集まり、1本100円~300円の苗を植えて10年たって森になっています。(海の森)
なんでも地道に時間を掛けてやっていれば出来るという見本ですね。
一流大学を出た人は失敗を恐れます、私は開き直り、覚悟だけはあります。