2018年4月3日火曜日

森田和市(南信州観光公社市民ガイド)   ・伊那谷の桜守

森田和市(南信州観光公社市民ガイド)   ・伊那谷の桜守
長野県の飯田市、伊那谷の谷のお陰で木々が風雪に守られて樹齢200年を越える桜が残っているのではないかと森田さんは考えています。
花の時期は恋人に逢うようだと言う森田さん、今年79歳。
50年前に南アルプスの残雪を背に立つ八重桜の老木と出会って、それが桜とのきっかけになったそうです。
今は先人が残してくれた貴重な財産を次世代に残すとともに、伊那谷を訪れる観光客の市民ガイドとして活躍しています。

短い期間ですが、毎年恋人に会えるような思いです。
4月1日が伊那谷の開花予想になっていますが、もうちょっと早くなりそうです。
例年は4月4,5日が開花になっています。
200年以上を古木、銘木と云っていますが、118本あります。
全国的に見ても非常に多いと思います。
福島県、奈良県が多い。
長野県では天然記念物指定の桜の木310本あります、一番だと思います。
伊那谷で一押しは木の大きさ、樹齢と云う点では「安富桜」、安富さんという家老の屋敷があったと云うことでこう呼ばれている。
一本に支柱も無く450年と言われている。(太さ)6.4m
桜の木自体が美しい。
「黄梅院の枝垂れ桜」 飯田で一番ピンク色が濃くて枝垂れ桜では」一番です。
皆さん驚嘆の声をあげます、樹齢350~400年と云われます。
「麻績の里舞台桜」(枝垂れ桜) 通常花弁は5枚ですが、この桜は5~10枚がランダムに咲き、日本にはどこにもありません。
「黄梅院」は武田信玄の娘さんの菩提寺の為に作ったお寺です。

伊那谷は南北に長い谷で東に南アルプス、西に木曽山脈からの山並みが有り、山々に囲まれた温暖で風の弱いところになっています。
彼岸桜は材質がもろくてちょっとした強い風で折れ易いんです。
飯田を400年前に治めた脇坂安元脇坂安治という二人のお殿様が枝垂れ桜が好きで自ら種をまいて枝垂れ桜の苗をお寺などに送ったという伝説が有ります。(文書はないが)
400年ものの枝垂れ桜は脇坂様の残されたものだという気がします。
南信州は天竜川を挟んで、両岸にいくつもの支流が有り集落が有り人が住んでいました。
各集落のお寺に桜が植えてあると、農業用の使用木になっていて、明治5年までは旧暦だった。(1年が355日)
3年に1編、閏月が有って13カ月になっていたが、それでも高低差が有り、自分の集落にあった農業指標を見るためには、彼岸桜の開花を待って農作業を始めれば正確な農作業をすることができる。
そういう訳で重要な木であった。(桜以外にはない、梅では早すぎる)

市民ガイドとしてバスに同乗して桜の案内をしています。
観光会社から指名をされます。
市民ガイドの育成もしています。
「桜守の旅」を始めたのが2000年で18年になりますが、桜の位置から桜のイロハから教えています。
市民ガイドは40人ぐらいいて、今年も9人増えました。
リタイアした方が多いが、今年は40代の女性も参加してくれました。
一本でも多く桜を残したいと思っています。
いいものを残したいと思って、接ぎ木をしたりして苗木を作っています。
八重とか変化にとんだいい桜は種では残らないので接ぎ木をしてやらないと残らない。
江戸時代にいい桜が有ったという文献があるが、今は消えてしまったものがいっぱいあります。
品種のいいものほど接ぎ木しかない。
今まで3,000本育成しました。
難しくて50%付けばいい方です。「森田桜」として広めています。
これまで新しい品種を3種類見つけました。
文献にも載せられることができました。

50年前の5月1日に松本に向かう時に墓地があり一本の八重桜が咲いていて、満開でした。
その景色を見たときに心を打たれました。(29歳)
背景は南アルプスに白い雪が残っておりました。
夜中に桜の種を探して木に登っていたときに、おまわりさんからとがめられたこともありました。
桜のことばっかりやっていて、妻が子供を連れて出ていってしまった事もありました。
妻も60歳を過ぎてから好きになったと言っていて、この人から桜を取ったら何も残らないと思っていたんだと思います。
妻は今はよく協力してくれます。

桜の名所作りのアドバイザーもやっています。
単に桜を植えるだけではなくて色々アドバイスします。
天竜川に200本の桜を植えるにあたって、ソメイヨシノと云うこともあったがそれでは当り前な光景なので、八重桜を植えたらどうかと提案して実現しました。
もう20年たったので大分大きくなりました。
八重桜の街道は全国でも少ないです、注目もされ始めました。
一昨年9月に電話が有り、作る映画に協力してほしいと言われました。
「北の桜守」 蝦夷山桜があるが、種から育てられます。
台本では苗を送るとなっていたが、種の方がいいということで台本も変わりました。
吉永さんが桜の手入れをするシーンが有り、撮影現場にも立ち会いアドバイスもしました。
細かく色んな事を聞いて、吉永さんは役作りに熱心な方だと思いました。
桜も色々ある(約400品種)ので、色んな変化がある、花びらが八重、菊桜(100枚以上ある),桜に近づいてみるといろいろ変化がみられる。
木の下に行ってみると風情が感じられる。
桜切る○○(馬鹿)は、悪い切り方をしていけないということだと思います。
野放図では枝ぶりも悪くなってしまう。
桜の為に汗を流す後継者が欲しい。
苗木からと云うような人はあまりいない。
私は桜守ではなくて、桜に自分が守られていると思っています。