田中ウルヴェ京(スポーツ心理学者) ・心を整えるとは?
6歳で水泳を始め10歳でシンクロナイズドスイミングに転向しました。 シンクロはご存じのように今はアーティスティックスイミングと名前が変わっています。 田中さんは1988年ソウルオリンピックシンクロ・デュエットで小谷実可子さんと銅メダルを獲得しました。 翌年には引退して日本代表チームのアシスタントコーチに就任しました。 その後もっと勉強しようと26歳の時にアメリカに渡ってシンクロのコーチをしながら、大学院でスポーツ心理学を学びました。 そこで心を整えるという事を学び、スポーツ心理学者として多くの人に指導しています。 田中ウルヴェ京さんはフランス人と結婚して1男1女をもうけています。
オリンピックは34年前になります。 21歳の時でした。 さかさまになっての競技なので息が苦しいし、人に合わせるという事は本当に難しい。 1984年からシンクロナイズドスイミングはオリンピックの正式種目になりました。 その時はソロとデュエットでした。 1996年アトランタオリンピックからチーム種目が入りました。
心というものの整え方や鍛え方をスポーツ選手などを対象にして、研究したり実践するというのが自分自身がやっていることです。 人間がどのように力を発揮することができるか、心理面で研究しているので、どんな対象者にも当てはまるもので、宇宙譜飛行士、研究者、ビジネスパーソンのプレゼンテーションの前、ドキドキするイベントの前とか、学生の受験の前とか、人が頑張らなければいけない、結果を出したい、そんなときの心の整え方、鍛え方を研究したり実践したりというのが自分自身がやっていることです。 人間として抱える問題はアスリートだろうと研究者だろうと一緒なので、どのような心を持つことが健康であり、より健康になるか、というようなことはどなたにでもあります。
メンタルの強さも、どのように考えて、どのような感情が自分はあるのかということに気づいている人だと、自分という人間の本当のコントロール力があると言えます。 メンタルの強い人心の強い人は存在します。
2月の早生まれだったので、幼く小さかったと言われました。 小学2,3年生になると、人間は死んだらどこに行くのだろうとか、何故私は生まれて来たんだろうとか、という考えていることを誰にも言ってはいけないと悩んでいる子でした。 6歳で水泳教室に通い始めて、7,8歳では競泳の全国大会の予選に出る様にもなりました。 9歳でシンクロナイズドスイミングに興味を持ちました。 しかし、足が短い、ぽちゃぽちゃしているからと言われ、逆にむくむくしてきました。 10歳でシンクロナイズドスイミングに転向しました。 シンクロナイズドスイミングでオリンピックに出られる可能性があると思うと、オリンピックの選手になってみたいと思う様になりました。 高校3年生の時にシンクロナイズドスイミングをとるか、学業をとるかという問題になって、大学4年生で迎えるソウルオリンピックは、出れるかどうかかけてみたいと思いました。 話をしたら、母は絶対出れないと思ったらしくてその時には泣きました。
デュエットのパートナーとなる小谷実可子さんは、身体も先天的に恵まれ、練習も沢山して、メディアに乗って行きました。 デュエットでも「小谷等」とか、ソロで私が優勝した時でも、「田中初優勝」ではなく「小谷負けた」というような見出しで、凄く悔しいし、悲しい思いをしましたが、両親は温かく見守ってくれて、有難かったです。 絶対に考えないようにしていたことは、尊敬しちゃうこと、小谷実可子さんはライバルなのに凄いとか素敵だと思っちゃったら終わりだと思いました。 身近にライバルがいることはありがたい事でした。
その後、コーチの道に進みますが、メダルを取っているし技術は自信がありました。 10年コーチをやりましたが、コーチは自分の選手経験だけでやるものではないのに、選手にはそれぞれの特性とか、その他いろいろあるのにも関わらず、そういった方向の視点がありませんでした。 指導者として学んでないのかなあと思い始めたのが5,6年経ってからでした。 シンクロナイズドスイミングのちゃんとした勉強をしたいと思ってアメリカに行きました。 アメリカのオリンピックコーチの元でアシスタントをするんですが、練習の前、最中、後、心理的な話ばかりするんです。 スポーツサイコロジーを勉強するといいよと言われました。 メンタルに関するちゃんとした理論があってとても新鮮でした。 スポーツ心理学が勉強したくて大学院に入りました。 メンタルの鍛え方は人によってそれぞれ違う事が判りました。 図書館に行って研究論文などを色々読みました。
心の整え方、まずは心とは何か。 心理学では感じる心(感情)と考える心(思考)、これを心だと思ってくださいと言います。 これを気付いてくださいというのが最初です。喜怒哀楽、今日嬉しかったことは何か、悲しかったことは何か、など感情の種類に気づく。それがどんな行動につながったのか、を考える。 焦っちゃいけないと思うが、まず焦る自分に気づくのが大事です。 焦る理由はちゃんとやりたいからかもしれないし、悪い事ではない。 怒ることも怒る感情が悪いのではなくて、怒鳴ったり人を殴ったりする行動が悪いだけです。 それに気づくと、焦っているなら深呼吸をしようとか、ゆっくりめのしゃべり方をしようとか、行動につなげることができる。 気付けば絶対に行動は変えられる、というのが心の健康の作り方です。 大事なのはどんなふうに動じるかを知ることの方が大事です。 それを認めて行動を作る。 「まず落ち着きなさい」は無理です。
長年目標にしてきたことが果たせました。 システムデザイン・マネジメントという博士課程を6年半かかって取得できました。 現在燃え尽き状態です。 それを今後少しずつやっていきたいです。 日本人のトップアスリートの引退後の課題をどのように解決することが重要か、メンタルヘルスの問題もあるし、選手としてのアイデンティティーが亡くなった後の人生の作り方、こういった深い大事な心理課題もあるので、その解決の仕方など、まだしっかり入り切れていないので、そのことはやっていきたいと思っています。