2023年2月11日土曜日

稲葉香(ヒマラヤに通う美容師)     ・〔人ありて、街は生きアンコール〕 リウマチを抱え、ヒマラヤ奥地を歩く

 稲葉香(ヒマラヤに通う美容師)     ・〔人ありて、街は生きアンコール〕  リウマチを抱え、ヒマラヤ奥地を歩く

普段は美容師として働き20年ほど前からコロナ禍に前までは、毎年の様にネパールを訪れました。   1回の滞在は1か月から3か月最も長い時は4か月で持病のリウマチを抱えながらヒマラヤ奥地の険しい山岳地帯でトレッキングを続け、一昨年4月には世界的な冒険家の植村直巳さんにちなんだ第25回植村直巳冒険賞を受賞しました。   その冒険をまとめた本「西ネパールヒマラヤ最奥の地を歩く」を出版、観光地化していないネパール西北部のドルポを中心に荒々しくも美しい山々や村人の素朴な暮らしぶりを紹介しています。   稲葉さんは今から120年ほど前、同じリウマチを抱えながら仏典を求めてネパールから、当時鎖国状態のチベットに入った僧侶の存在を知り同じルートをたどる旅を続けています。  ヒマラヤ奥地はどんなところか、何が稲葉さんを惹きつけるのか、伺いました。

ヒマラヤ山脈の南側がネパールで北側が中国チベット自治区、有名な山はエベレスト、チョモランマほか標高7000mの山々がずらりと並んでいます。  ネパール西北部のドルポを中心に歩いています。  ドルポの村は標高4000mぐらいのところで、5000mを越えないとドルポには入れないです。  空気は薄いです。 高度順応が一番重要になります。   息を吐く方を意識します。  

「西ネパールヒマラヤ最奥の地を歩く」   東ネパールの方が高い山は多いです。   この時は女性2人でいってネパール人3人雇って、カッチャルと言って馬とロバの掛け合いの荷物を持ってもらう動物を3~5頭の形でキャラバンを組みます。  道幅は50cmぐらいです。    次の写真は谷底に川が流れていて、沢山の段々畑がある。  季節は秋でした。  ピンク色はそばです。  ヤクを使って耕していました。  次の写真はハリジェ村、数十軒の家が写っている。  家は白い石が積んである。  次の写真はアッパードルポ ツアルカ村、夕食でそばのパンを作る、というコメントあり。  一見お好み焼のようなものを焼いている。  男の子が食べているのはチャパティです。  家のなかでも寒いです。   チベット仏教のお祭りの写真もあります。   もっと古い仏教も残っています。   

18歳でリウマチになってしまいました。  手首、足首が痛いです。  医師からは直らないと言われてショックでした。   10年後は歩けないと言われました。   美容専門学校に通って美容師になりました。   4年ほど勤めましたが、毎日痛かったです。 我慢できなくなって辞めて旅に出ました。   最初はベトナムに行きましたが、目に入って来るのは手足のない人たちがオープンに力強く生きている姿が衝撃でした。  凄く勇気を貰いました。   一番強烈だったのは両足をなくし、スケボーに乗った少年が私の目の前を漕ぐようにして走ったんです。  自分の病気は死なないし、手足を切らなくてもいいし、併せて日本の安全を感じました。    恵まれた環境、恵まれた時代に生まれてきたと思いました。   病気を正面から受け止めるきっかけになりました。  

そこからいろんな国を旅しました。   出会う数だけ生き方ってあると思いました。  フリーでの美容師があり美容師を復活させました。  年に1回、1か月の旅をするという事を美容師をしながら始めました。  旅の延長で山に出会って、それからネパールにのめり込んでいきました。   神々の山嶺」という夢枕獏の小説がネパールが舞台で、山ってどんなのかなあと思い始めて、エベレストを調べていったら植村直巳さんが日本人でエベレストを初登頂した人だという事を知りました。   本を読んでゆくと植村直巳さんの人柄にほれ込んでしまいました。   

まずアラスカに行って登れないので見に行こうと思いました。  大自然に圧倒されました。   植村さんが29歳で初登頂しているので、その翌年自分も29歳なので、トレッキングということもあることを知って、歩いて近くまで行けると思って、そこから山に行くようになりました。 ネパールには21回ぐらい行きました。(ほぼ毎年)   寒い時にはマイナス20℃ぐらいにはなります。    アップダウン、環境が厳しければ厳しいほど、人間本来の力がよみがえるような感覚をこのネパールで気づかしてくれました。   自分だけの感覚ですがネパールに行くとよくなります。 

 河口慧海さんという僧侶(120年前の僧侶)が仏教の仏典を求めてヒマラヤを越えて最初にチベットに入った方です。(鎖国時代)      河口慧海さんもリウマチでした。  リウマチでもヒマラヤを越えられるという事で、じゃあ私も、と思っちゃいました。   色々調べていきました。  2007年から、河口慧海研究プロジェクトがあってその方々と出会えて、入れてもらい連れて行ってもらいました。  

第25回植村直巳冒険賞を受賞しました。  2019年11月から2020年3月までネパールのドルポで越冬生活をしていました。(日本スタートから含め120日間)  これがメインですが、これまでの私の生き方をトータル的に見てくださって、それが受賞の対象になりました。   ドルポには5回になります。  ドルポに入るのに片道8日間歩きました。  ドルポはチベット仏教が強く残っていて、1992年に外国人の立ち入りが解禁になりました。  部屋を借りて行けるところを行っていました。  屋根が一部分空いていて寒かったです。   食べ物は100日間の食べ物を持っていきました。  

ヒマラヤ奥地の魅力は、少ない食料と燃料でみんなで助け合いながら知恵と技術を使って生きているのがかっこいいと思いました。  美容師は外側を美しくする仕事ですが、彼らから感じた一番大きなことは、内側から湧き出る美しさ、強さが凄くかっこよくて、そんな人間になりたいと思いました。   生まれて初めて風呂無し、シャワー無し生活をしました。  野生の感覚に一歩近づけたかなと思いました。   人生が豊かになりました。