福井敬(オペラ歌手・国立音楽大学教授) ・〔夜明けのオペラ〕
福井さんは岩手県出身、国立音楽大学声楽科・同大学大学院を修了後、文化庁オペラ研修所を経てイタリアに留学、二期会、ラ・ボエーム(ジャコモ・プッチーニの作曲した4幕オペラで、最もよく演奏されるイタリアオペラのひとつ)でロドルフォ役でデビュー。 その後新国立劇場や琵琶湖ホールなど様々な舞台で主役を演じ、輝かしい声と卓抜した表現力で、日本を代表したテノールとして活躍、これまでに第65回芸術選奨文部科学大臣賞はじめ数々の賞を受賞、ソリストとして活動するだけでなく、国立音楽大学教授、東京藝術大学講師として後進の指導にもあたっています。
NHKでは今年で25回目です。 オペラ歌手としては丁度30年になります。 最初に歌った曲は「トスカ」というプッチーニのオペラのなかの「星は光りぬ」とモーツアルトの「後宮からの逃走」の中の二重奏の2曲を歌いました。 クラシックの歌手がテレビで歌っているさまを紹介していただけるのは本当にありがたいです。 生放送なので何時になっても緊張感は慣れないですね。 大学でも教鞭をとっていて、今は試験のシーズンなので毎日のように生徒の歌を聞いてその忙しさは大変です。 歌を歌うこと自体が有酸素運動なので素晴らしい事です。
岩手県の水沢市(現在の奥州市)で生まれ、高校生までは過ごしていました。 中学、高校と吹奏楽部に入り、トロンボーンを吹いていました。 平泉の中尊寺が母親の実家で茅葺の屋根で100年以上たっています。 代々お坊さんとして中尊寺に通っていました。 お経、御詠歌など声には関わっていたという気がします。 家庭では音楽はありませんでしたが。 音楽の大学に行こうと思ったのが高校3年生になってから、間に合うかどうか大変で、月一度帰ってくる音楽大学の先生とか、教会の牧師ご夫妻が音楽大学を出ていて、歌、ピアノなど習いました。
*トスティーの歌曲 「暁は光から闇を」 歌:福井敬
でも大学を受かることが出来ました。 大学院へ行ってさらに学んだら、歌う楽しさが判ると思ってオペラ科に進みました。 栗山昌良先生からいろいろ深いことを教えていただいて、オペラっていいものなんだなと思い始めました。 その後二期会という団体でデビューさせていただきました。 それが「ラ・ボエーム」という栗山先生の演出による作品でした。 ロドルフォ役でデビューすることになり、本当にありがたかったです。
*「ラ・ボエーム」から「冷たき手を」 歌:福井敬 詩人ロドルフォの自己紹介である。「貧しいながらも詩作を通じて夢を求めている」と歌い、ミミに早くも心を奪われたと恋心を打ち明ける。
去年は還暦のコンサート。 テノールは若い役が多いので如何に声とかいろいろ若さを保つか、大変ですがやっています。 宮沢賢治の歌曲集、自分で詩を書くだけでなく曲迄作ったりしている。 一番有名なのは「星めぐりの歌」 教員をやっていた時に学生たちに自分で台本を書いて、曲も作って、演出もして、歌わせてという事をやっていたらしい。 実は楽譜がほとんど残っていなくて、歌った人たちが覚えていて、口承で伝わっていて、後に楽譜に起こしてそれが残っていて、曲集が2冊ぐらいになっていて、出版されています。 曲集を全部CDにしませんかという事を頂いて、去年行いました。
*「星めぐりの歌」 歌:福井敬
演技、衣装、メイクだとかは、実は歌う時に助けになっています。 人間が愛したり、感じたりって言うのは200年、1000年前であろうが、思っていることは変わらないんですよね。 それを今の人たちの思いと結びつけて演じたり、歌ったり、表現したりすることは凄い素敵なことだと思います。 クラシックの素敵なところはそういうところにあるんだと思います。
*「道化師」から「衣装をつけろ」 ルッジェーロ・レオンカヴァッロ作曲「道化師」 (『道化師』第1幕の幕切れで、妻ネッダの浮気を知った旅回りの道化一座のカニオが、怒りと悲しみに震えながらも、道化はそんなときでも客を笑わせるのが仕事と、身の辛さを激情的に歌うアリア)
3月に琵琶湖でドイツオペラ ワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』という休憩を入れると6時間半ぐらいの長いオペラがあります。
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