奥田佳道(音楽評論家) ・〔クラシックの遺伝子〕
*交響曲第9番ホ短調「新世界から」の第4楽章 作曲:ドヴォルザーク
赴任先のニューヨークで 故郷を思って書いたのが、「新世界から」、 1893年 ドヴォルザークが52歳の時にニューヨークのカーネギーホールで初演され大成功を収める。 出だしの部分をドヴォルザークは蒸気機関車の発車の音からヒントを得たのではないかと言われている。 鉄道マニアだった。 今日のクラシックの遺伝子は乗り物をテーマに行います。
ハイドン、モーツアルト、ヴェートーベンの時代は鉄道はなく馬車、船でした。 ハイドン、モーツアルト、メンデルスゾーンもヨーロッパから船でイギリスに渡っています。 19世紀半ば以降、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザークが活躍するころは蒸気機関車の時代がやって来ます。 船も大型になり大西洋路線が注目を集めるようになる。万国博覧会が開催されヨーロッパとアメリカの文化が行き来して、アジアの文化がヨーロッパに紹介される。 音楽もそうした動きと無縁ではないです。
*交響曲第9番ホ短調「新世界から」の第1楽章 作曲:ドヴォルザーク
ホルンの音からのイメージは汽船が旅立つときの汽笛のように聞こえる。 ドヴォルザークがチェコからアメリカに、これから新世界に行くぞという思いの音なのか、アメリカについて、ヨーロッパ汽船を見て故郷に帰れるのかなあという思いなのかはわかりません。
*「コペンハーゲン蒸気機関車のギャロップ」 作曲:ハンス・クリスチャン・ロンビ 列車が駅から走り出して次の駅に停車するまでを忠実に音楽的に再現している。
*「観光列車」 作曲:ヨハンシュトラウス 1864年宮廷舞踏会場 産業協会舞踏会のために作曲された。 鉄道関係者が集った舞踏会。
*「パシフィック231」 作曲:アルテュール・オネゲル 231は19世紀フランス国鉄の蒸気機関車の車軸の配列の事です。 前輪が2軸、動輪が3軸、後輪が1軸。 オネゲルは蒸気機関車が大好きだった。
ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」 第3楽章 作曲:カミーユ・サン=サーンス ナイル川を下る蒸気船のエンジン音を表わすのではないかと言われるフレーズがある。
*「パリのアメリカ人」 作曲:ジョージ・ガーシュウィン パリの目抜き通りの賑わい、自動車のクラクションの利用に認められるように現代の都会の生活や喧騒が、ウィットを交えて楽しく描き出されている。 本作のニューヨーク初演のために、ガーシュウィンはパリのタクシー用のクラクションをアメリカ合衆国に持ち帰った。
*映画『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』から 「オートバイとオーケストラのスケルツォ」 作曲:ジョン・ウイリアムズ