藤井亮(映像作家・クリエイティブディレクター)・【私のアート交遊録】 面白いと思えるものを自分の手で
藤井さんは実写、アニメーションを問わずインパクトのある映像を数多く制作してきました。 滋賀県の『石田三成CM』をはじめ、NHK『ミッツ・カールくん』など、独創性の高いコミカルでインパクトの強い作品を手掛けてきました。 この夏もNHKのEテレで、芸術家岡本太郎さんの世界観を元にした特撮作品『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』を制作し、おおきな反響を呼びました。 この作品はTAROMANが怪獣となった岡本太郎の作品と戦うという、70年代の特撮ヒーローをマージュした短編特撮番組です。 主役のTAROMANは正義の味方ではなくシュールででたらめなやり取りで奇獣、怪獣と戦う存在です。 岡本太郎の疾走する眼や 駄々っ子などの作品が造形化されたものです。 藤井さんが考える面白い世界について伺いました。
『TAROMAN』は思っていた以上に反響があって吃驚しています。 こういった特撮がみたかったとか、子供たちの反応がよかったりしました。 これを見て岡本太郎が判ってきて、より興味を持つ人は書籍を読むとかに繋がっていけばいいと思っています。 最初は変なおじさんというようなイメージがありましたが、太陽の塔を見てから凄いぞと思って好きになって行きました。 迫力に圧倒されました。 岡本太郎には「でたらめにやってごらん。」という言葉があって、それをテーマにして特撮を作りたいと思っていたので、ちゃんとでたらめに出来るように頑張ったつもりです。
脚本を書く時に一番苦労して、 岡音太郎の言葉を曲解してはいけないと思って、気を使い過ぎても面白くならないと思って、いろいろ腐心した記憶があります。 「でたらめにやってごらん。」「自分の歌を歌えばいいだよ。」「一度死んだ人間に成れ。」 「同じことを繰り返すぐらいなら死んでしまえ。」とかどれも響きますね。 今回は言葉から作っていきました。 「でたらめにやってごらん。」という言葉があったからこそ中途半端に出来ないという怖さがあって、ずーっとその言葉が頭に残っていて、特撮映画を馬鹿にしたものにはしたくなかった。 でたらめって簡単そうで一番難しい。
「好かれる奴ほどだめになる。」「積み重ねより積み減らし」という様なことも岡本太郎は言っていました。 「好かれる奴ほどだめになる。」結果的に自分を狭い方に閉じ込めてしまうのではないかと思います。 根っこは褒められたいという気持ちはあると思いますが、過剰に褒められたりは危ないんだろうなと思います。
「同じことを繰り返すぐらいなら死んでしまえ。」 これは凄く怖い言葉ではあります。 人間癖みたいなものがあって、似たようなものを作ったり楽をしようとしたりするが、この言葉によって同じことをしないようにしました。 10分番組ですが凄いカロリーを使って作ってしまいました。
1970年代の特撮番組を再放送しているという定義です。 大阪で『TAROMAN』祭りをやったんですが、入館迄1時間待ちとかという様な状況になっていて、一日3000人ぐらいの来場者が来ました。
武蔵野美術大学をでて、広告代理店に入ってCMの制作を14年ほどやっていました。 映像を作りたかったが、当時はユーチューブもなかったので、テレビか、映画か、CMぐらいの選択肢しかなかった。 長いものは作れないと思ってCMの世界に入りました。
滋賀県の『石田三成CM』 もともとは滋賀県のPRの動画の仕事があって、当時大河ドラマの「真田丸」があって、石田三成も大きく取り扱われるという事があったので、琵琶湖以外でPRできるものを考えて欲しいという要望があり、県が武将をPRすることはないと思って滋賀県が石田三成をPRすることは面白いぞと思って、提案しました。 冷酷なイメージがあるので、石田三成のイメージを変えたいと思って作りました。
根本には面白いものを作りたいという思いはあります。 自分が描いたものが人が笑ってくれるのは嬉しいという思いは、子供時代からありました。 大学で5人ぐらいで映像を作って発表するという授業があって、どっと受けた瞬間があって、その時の気持ちよさが忘れられなくて、そこから映像を作ることにはまってしまいました。 電通関西支社の面白CMを作るところに入って、言葉、セリフの面白さが全然できていなかったので、言葉に対して一から学び直して、絵と言葉の両方で面白くさせることを学ぶ事が出来ました。
NHK『ミッツ・カールくん』 5秒という制限があったので、音だけで勝負しようと思って、みつかるをキャラクターにしようと思ってミッツ・カールくんというキャラクターを作りました。長く物を作っていきたいという事は念頭にあって、ドラマ、映画みたいなものを作ってみたいという思いは有ります。 なんでも映像化してもいいよと言ったら、藤・F・不二夫先生のモジャ公かなと思っていて、ちゃんと作れば凄くおもしろいSFのいい映画が出来るのではないかと思います。