2022年10月5日水曜日

和田秀樹(高齢者専門の精神科医)    ・80歳の壁は乗り越えられるか?

 和田秀樹(高齢者専門の精神科医)    ・80歳の壁は乗り越えられるか?

和田さんが書いた「80歳の壁」や、「70代で死ぬ人」、「80代でも元気な人」、「70歳が老化の分かれ道」など多くの本が大ヒットして話題になっています。   30年以上高齢者医療の現場で多くの患者を診てきた和田さんがよりよい晩年を送るのにはどうしたらよいかなどを書いています。  人生100年時代と言われていますけれども、80歳が一つの節目、80歳の壁を乗り越えるのには、60代、70代をどう過ごしてゆくかが大きな課題の様です。   受験アドバイザーや映画監督の肩書を持っている高齢者専門の精神科医、和田秀樹さんに伺います。

若いころから受験勉強法を書いたり、心理学の本を書いたりいろいろしてきましたが、まとめて売れたのは初めての経験です。  今の日本の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳ですが、健康寿命が大事です。   健康寿命は男性は72,3歳、女性は75,6歳です。  男性で9年女性で12年ぐらいなんかしらの不調、障害を抱えながら生きてゆく年齢です。    70代だったらせいぜい5~10%、80代になると3割ぐらいになってしまう。  90代になると6割ぐらいになってしまう。   元気なお年寄りになる方法がいくつかあると信じています。  

高齢の人が仕事を続ける能力というのが、それを維持するという事が大事です。   認知症の人を見ていてご家族の方はこれもできなくなった、5分前のことを忘れるとか言いますが、話を聞いていると話は通じているし、料理、買い物が出来ているとか、出来ていることが結構あるわけです。   できなくなったことを嘆くより、今出来ていることを減らさないことが大事だと言っています。  100歳でも床屋さんをやっている人は床屋さんを続けていることに意味があると思うんです。   

高齢者は記憶が落ちるとか知能が落ちることを心配しますが、先に落ちるのは意欲なんですね。   意欲を司る前頭葉が50代ぐらいから縮み始めます。  そのころから意欲がちょっとづつ落ちてくる。   認知症の人は意欲が落ちていることが多いので、デーサービスに週に3,4回行って頭や身体を使わせることで進行が遅れるんです。   意欲のある人は歩き続けるから70,80代でも歩き続ける。  60代では歩かなくても歩けなくなることはない。  70,80代の人が病気で1か月寝て居たり、コロナ禍で家に閉じこもっていたりすると如実に歩けなくなるんです。   70代は頭や身体を使い続けるかどうかで、どのぐらい若さ、元気さが保てるかどうかで違ってきます。  

80歳になるために動ける限り動くという事、安易な引退はしない、後食生活が大事です。 肉を食べる、タンパク質をちゃんと摂る。   タンパク質は筋肉、肌、血管、髪の毛などの材料でもあるわけです。    欧米で長寿だったり心筋梗塞の少ない国はフランス、イタリア、スペイン、ポルトガルがあります。   赤ワインを飲んでいるから赤ワインがいいんだという話になってそれも一理あるが、むしろ韓国や日本の方が少ない。   肉や魚が出る国がいいんです。  魚にはDHAとか良い脂肪が入っている。  肉はコレストロールとか悪い脂肪みたいに思われているが、コレステロールは免疫細胞の材料だったり、男性ホルモンの材料だったりします。   コレステロールの多い人の方がセロトニンという神経物質を脳に運ぶ働きがあるので、鬱になりにくいとかあるので、肉と魚の両方を摂ることが大事です。   同時にワインも赤と白を肉と魚に合わせて交互に飲んでいます。   陽の光もセロトニンという神経伝達物質を増やします。   セロトニンが少なくなってくると不安感、いらいらしたりします。 多いと幸せな気分になる。    セロトニンが本格的に減って来ると鬱病になる。  鬱病になると見た目に10歳ぐらい老け込ませるだけでなく、歩かなくなったり頭を使わなくなったりするので一気に老化が進んでしまう。  

人付き合いは有るに越したことはない。    定年後友達がいるかいないかで、その後の老化に大きな影響を与える。   気を遣うストレスは免疫機能にも悪いし、鬱の原因にもなる。  気楽にいられる友達と一緒にいた方がいいです。  後、趣味があった方がいいです。  後人生20年とすると、毎日実験だと思っているといいと思います。   毎日毎日いろんなことが試せるから、本にない知識がいろいろ得られると思います。   毎日実験だと思ったら退屈しないと思います。  

私がみている限り、お年寄りの方で細めの人よりも太めの人の方が長生きしているし元気だし、というのが多いです。   医者が言っていることと本当の高齢者の実態は違うと思うようになりました。   37,8歳で常勤の仕事を辞めて、或る種フリーターみたいになりましたが、認知症、要介護状態になってからのお年寄りを沢山見ていると、若いころ地位が高かった人でも、晩年惨めな思いをしている方がかなりたくさんいます。  肩書で生きて行くよりも私歴で生きていけるようになりたいなあと思います。    あくせく出世を目指すよりも、自分として何が出来るかを考える。  

私が勤めていた病院が日本で最初の医者付の公的な養老院で、老人医学の研究センターにしようという事で始まりました。   ホームで取ったデータに面白いデータがいっぱいあって、血糖値は高い人も低い人も生存曲線は変わらない。   血圧は130ぐらいと150ぐらいでは変わらないが、180を超えると生存率が低い。   

診ている患者の70代の半分ぐらいが認知症で、後は歳を取ってから鬱になってしまった方とかが多いんですが、認知症は80代位以降の病気なんだろうなという事、今の70代は十分に若い、80代になって来ると年寄りっぽくなってくる。  

小学校2年生で父親の転勤で大阪から東京に移りました。(小学校は6回転校)  灘中、灘高から東大医学部に入学。   小学校時代は言葉の件でいじめにあいました。    母親からお前は変わり者だからサラリーマンは無理だろうから、資格を取らないと食っていけないと言われました。   医師の資格を取ろうと東大の医学部に入りました。    何かを始める時にやり方を勉強してからやらないと、何にもできないという事は感じています。 

高校2年生の時に藤田敏八監督の「赤い鳥逃げた?」という映画を観て、「29歳ですることがなければ爺だ。」という映画でした。  私も17歳ですることがないので爺だと思たんです。  自分の想いを一つに作品にできる映画は素敵なものなんだと思いました。   高校3年生で年間320本ぐらい観ていました。(5本立てぐらいなので 50~60回行く)  映画を観に行くために効率的な勉強をしようと考えてやったので、結果的にはそれがよかったです。 当時山口百恵さんが東大生のアイドルで、東京大学アイドルプロデュース研究会を作ったらマスコミ、週刊誌が取り上げてくれて、武田久美子さんという当時まだ13歳の子が優勝しました。  僕らも売り出そうとしましたが、近藤真彦さんの主演映画に引き抜かれてしまって夢は断たれてしまいました。   その時のお金が残ったのとアルバイトで100~150万円たまって映画を作ろうとして半年で半分ぐらいしか作れなかった。  段取りの悪さを指摘されて、現場について勉強することになり、映画製作の段取りを覚えました。   人生観として、やり方も知らないでものを始めてはいけないという事を学びました。 

2007年公開映画「受験のシンデレラ」を作成。(47歳)  第5回モナコ国際映画祭最優秀作品賞、最優秀男優賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞の4部門を受賞。   その後も介護の映画、ワインの映画、レイプ被害者の目から見た世界の映画とかを作ったりしました。   

時たま血圧が200を超えると思っていて、友達が心臓専門のクリニックを開業したので、心臓ドックを受けて、冠動脈は大丈夫でしたが、心臓の筋肉が分厚くなってしまっていました。(心肥大)   筋肉が内側に広がると心室が狭くなる。  このまま放っておくと心不全になると言われました。    血圧を下げる薬を飲んで170ぐらいに下げています。 正常の値まで下げてしまうと、自分の状態としては低血圧になってしまう。       3年前に喉が渇くので。血糖値を測ってもらったら660ありました。  インスリンを使うとやめられなくなってしまうのでこれは避けて、薬を飲んでも下がらなくて、スクワットをやったら血糖値が下がり歩くようになりましたが、300ぐらいはあります。   170の血圧をほうっておいたら、或る時飛行機から降りる時にピューピュー喘息みたいな音がして病院にいったら心不全だと言われました。   一寸歩くと息が切れるようになるんだろうなとがっかりしていましたが、利尿剤を飲んで尿は近く成りますが、信号を渡るのにダッシュできるので大丈夫かなと思っています。   

今出来ていることを毎日毎日普通に続けていただきたいと思います。   その意欲を保つためにはいろんなことを試してみることが大事ではないかと思います。  人生の目的のピークは後ろに持って行った方がいいのかなという気がします。  私は糖尿病ですが、眼底は今のところ正常だし、腎機能も正常なので、数値よりもそこがどうなるのかの方がよっぽど大事だと思います。