雨宮正信(スタントマン) ・交通事故防止に燃えるスタントマン魂
今年も今月の30日まで秋の全国交通安全運動が行われていますが、毎年この時期小中学校の校庭で児童や生徒たちの悲鳴が上がります。 自転車が車にはねられてボンネットに乗りあげて地面にたたきつけられる迫真の交通事故の再現シーン、加害者や被害者を生々しく演じるのが雨宮さんのスタントマン仲間です。 こうした恐怖を直視させる教育技法をスケアード・ストレートと呼ぶそうです。 交通事故防止に大きな成果を上げています。 雨宮さんは30年以上にわたるこうした身体を張った取り組みが評価されて、2020年交通安全に功績のあった人に贈られる最高栄誉賞緑十字金章を受章しました。 半世紀近いスタントマン経験を持つ雨宮さんに伺いました。
トラックの助手席に乗って、運転する人を見て凄いと思って運転に興味を持ち始めました。 サーキットなどに明け暮れていました。 或る時アメリカから来ていたスタントカーショーに日本人が真似してやってみようという事があり、面白そうだと思ってスタントカーショーをやっている会社に応募して受かりました。 ショーに参加して後半でボンネットに括りつけられて火の壁に突っ込んでゆくというところから始まりました。 その後解体寸前の車をもって行って多摩川の河原で練習していました。 スピン、急発進、急ブレーキなどは練習しますが、後はセンス、感性といった感じです。
スタントカーショーチームに映画の方からオファーが来てやりだしました。 「狂った野獣」という映画に出ました。(1976年) 走っているバスに突っ込むというようなシーンです。 監督から「お前の車の走り方は生きているね」と言われました。 外国作品を多く見るようになりいろいろ工夫するようにました。 「太陽にほえろ」では2年間ぐらい出ました。 映画では「サーキットの狼」、スタントマンの会社を作って3つぐらいの会社が協力して「この愛の物語」を作り上げました。 映画「ゴジラ」にもいろいろな作品に全部参加しました。
交通事故はこういう風に起きるんだよというような教育映画も長い期間やっていました。 或る時自動車教習所で「イベントがあるんだけれども、映画ではなく実際に目の前でやってもらえませんか」と言われやりました。(平成元年) 映画とは違うところもあるので0.何秒の差で運転席にずれたところに当てるとか、広い土地を借りて練習はしました。 区役所から学校の方でもお願いしますという話がいろいろ舞い込むようになりました。 その地域で一番多い事故を選んでやってきました。 校庭なのでスピードではなく、安全確認をしないで飛び出してくるというのが基本です。 ドライバーの目線、死角、などでこういう事故が起きてしまうという事を説明しながら、歩行者もむやみに車に近づかないようにと注意を促します。 今では対処の仕方、逃げ方などいろいろ説明が増えてきました。
年間30件ぐらいでしたが、警視庁、警察庁などが観に来て、恐怖を直視させるという意味で、スケアード・ストレートという名前でやって行こうということになりました。 年間300か所を越えて実施してきました。(都内だけではなく全国に波及) 小、中,高校に展開しました。 大学でも興味のあるところとか、後イベントですね。 交通事故も減ってきました。 持ち時間は45分ありますが、厳しいところだけを見せていても、同じように見えてきてしまうので、ほっとさせるような場面を設けるようなやり方をすると、事故の一つ一つを分離して捉えると思うので、そういった方法をとっています。
2020年交通安全に功績のあった人に贈られる最高栄誉賞緑十字金章を受章しました。 感謝状はたくさんいただき額にいれて壁、天井まで貼ってあります。 学校ではアンケートを取って送ってきてくれるところもあります。 良く見ていてくれる様子も把握できるし、今後の参考になることもあります。 波動、音それはライブでは通じると思います。 終わった後に交通事故を無くすにはどうしたらいいかという質問、取材に来ますが、それは人間の優しさですよと、最初のころからいっていたんですが ,あまり理解をされなかった。 時間の余裕というか、人間の余裕というか、優しさはそういうところに通じてくるのではないかと思います。 例えば朝ぎりぎりに起きて車に乗って急いでゆくというようなところには危険が一杯あると思うし、朝、喧嘩して出ていくとかも同様です。 人間余裕を持っていないと優しさなんてできないと思います。 歩行者もわたりますよという手を上げて意思表示をすると車も停まります、
72歳になりましたが、視力も足腰もしっかりしています。 若い人も一度こちらの門を叩いてもらえればと思います。