2022年7月5日火曜日

松岡希代子(美術館館長)         ・世界の絵本を原画で楽しんで

 松岡希代子(美術館館長)         ・世界の絵本を原画で楽しんで

1961年東京生まれ、女子美術大学、千葉大学大学院を卒業後、板橋区立美術館の学芸員となり、去年の春から館長兼学芸員となりました。   イタリア北部のボローニヤでは出版業が盛んで、1964年から児童書のブックフェアが開催され1967年から国際イラストレーター展が始まり、絵本の原画を展示するようになりました。  この展覧会はまだ出版が決まっていない原画でも 応募できるコンクールで この春は92か国過去最多の4000件近い応募がありました。   ボローニヤ国際絵本原画展が最初に日本に紹介されたのは1976年西宮市大谷記念美術館で、その後板橋区立美術館が中心となって日本各地で巡回展が行われています。  原画展は今年も6月25日から板橋区立美術館で開催されています。   絵本原画展の面白さ、原画の魅力などを語ってもらいます。

高校1年の夏休み明けのころ学芸員になりたいなあと思いました。  幼いころから絵を描いたり工作することが大好きでした。  女子美術大学付属高校に進みましたが、周りの人が上手で自分の絵は魅力的じゃあないという事に気が付いて、学芸員と言う仕事を教えてもらいました。  学芸員の資格がとれるコースを大学で専攻するという事で選びました。   女子美術大学の後、千葉大学大学院へ行き、卒業後板橋区立美術館の学芸員となりました。  学芸員は空きがないと募集がありません。   

母が旅行が好きで、高校時代に海外旅行に連れて行って貰いました。  最初がローマで感動しました。  キリスト教美術に興味を持って、そういったものを勉強したいという気持ちになりました。  大学では美術史を学び、ヨーロッパの美術館を沢山見てやろうと思って予備知識を蓄えて、大学3年の時に2か月間独り旅をしました。  ボローニヤは私の第二の故郷です。    森泉文美さんという有能なコーディネーターとボローニヤで出会って一緒に仕事が出来て助かっています。   30年の付き合いです。  

絵本の原画展は世界的にも珍しかったです。   ボロ―ニヤチルドレンズブックフェアという子供の本専門の見本市がありますが、1964年にスタートしています。  ビジネスの場ですが、壁面が寂しいので絵でも飾ったらいいんじゃないの、と言うところから始まったそうです。  絵本の原画を飾ることから始まり、コンクールが行われるようになりました。 作家と編集者を結び付ける役割が出来大きくなっていきました。      

西宮市大谷記念美術館が絵本の原画展を日本で初めて行いました。(1976年)  好評で絵本の原画展に注目し始めました。   2年後にボロ―ニヤの原画展をに西宮でやるようになりました。  1977年にはいわさきちひろ絵本美術館が開館。  絵本文化が広まった時期でした。  西宮市大谷記念美術館がボローニヤ原画展を始めたのが1978年で、板橋区立美術館がオープンしたのが1979年で1981年からボローニヤ原画展を開催しました。  1989年に西宮市大谷記念美術館がリニューアルすることになり、2年間閉館することになり、板橋区立美術館が幹事館になることを依頼されました。   私が担当することになり1989年にボロ―ニヤに出張しました。  

絵本原画を5点一組にしてボローニヤに送ると、出版、未出版関係なく無料で審査します。 審査員が変り5人で国籍が違う事という様になります。   審査員のチームを作るのが大変です。  

観る人が様々な絵の中から読み取ってお話を感じる絵という事だけで魅力的で、原画で見ると技法とか、作家の手の跡を感じ取れることができる事も魅力的です。  ボローニア原画展は絵本作家になりたい人が集まってくる場なので、背中を押されるような場になっていると思います。  「くっついた」と言う絵本を出版した三浦太郎さんはまずボローニヤ原画展で入選して、そこから絵本作家になっています。  

コロナではイタリアは大変厳しい状況でした。  2020年1月にイタリアに行ってきました。  イタリアではその後急激に悪化して、ボローニや原画展も中止になってしまいました。  翌年も中止になってしまいました。   それを日本に持ち込んで開催できました。  イタリアのボローニヤ原画展はオンライン方式で行う事になりました。  今年はオンライン審査2回目で、一次審査を通ったものを審査員がボローニヤに集まって審査することが出来ました。 

 ワークショップ、講演会とかアクティブなことを併せてやっています。  世界100か国、3万冊、70言語の絵本が板橋区中央図書館に置いてあります。 ボローニヤで行われるブックフェアで集まった本の中から毎年寄贈してもらっています。  1階は全部子供の本で半分がボローニヤからの絵本です。