奥田佳道(音楽評論家) ・【クラシックの遺伝子】
2年ほど音楽祭も制限されたり、中止になっていたりしましたが、今年は大分開催されるようになりました。 来週から札幌でパシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌、秋には征爾小沢松本フェスティバルが行われます。
*モーツアルト ヴァイオリン協奏曲 第5番 トルコ風の最後の楽章 オスマントルコが弱くなってきてトルコ音楽がウイーンなどでもてはやされる様になる。 新しい要素としてトルコの強いアクセントのある響きを入れて、ウイーン古典派の時代にトルコ風の音楽が流行しました。 今回トルコ風の遺伝子も紹介しますが、異文化の遺伝子がクラシックにどんな作用をもたらしたかと言うのを楽しんでみたいと思います。
どんな楽器で表現するかと言えば、大太鼓、シンバル、トライアングル、ピッコロ、トランペットです。 頭に強いアクセントが来るのがトルコ風。
*歌劇「後宮からの誘拐」からの序曲 作曲:モーツアルト モーツアルトの若いころの曲で溌剌としている。
交響曲第9番 のフィナーレにもトルコ行進曲とは銘うたわれてはいないけれど、シンバル、大太鼓、ピッコロが大活躍する場面があります。
*交響曲第9番 第4楽章から 作曲:ヴェートーベン 自分の崇高な人類愛を歌い上げる交響曲に人間にも世俗的な部分もあるんじゃないかと、第4楽章は山場がいくつかあるが、間奏曲と言っては失礼ですが、気分を変えるという、ヴェートーベンのプロデューサー気質があったのではないかと思います。
*交響曲第4番 愛称「イタリア」の冒頭 作曲:メンデルスゾーン
リヒャルト・シュトラウスにもイタリアを意識した響きがあります。
*大オーケストラのための交響的幻想曲 「イタリアから」 作曲:リヒャルト・シュトラウス
リヒャルト・シュトラウスはイタリアに古くから伝わる民謡であると勘違いし、1886年に作曲した交響的幻想曲『イタリアから』 に「フニクリ・フニクラ」のメロディーを取り込んでしまった。 実は登山電車の世界最古のコマーシャルソングだった。 指揮するたびに使用料を払わなければならなかった。
*「中国人のギャロップ」 作曲:ヨハン=シュトラウス1世 テンポが速くて音域の高いものを強調している。
*「ウエーバー主題による交響的変容」第2楽章 『トゥーランドット』 作曲:パウル・ヒンデミット
*歌劇『トゥーランドット』第一幕から 作曲プッチーニ
*「アンダンテ・カンタービレ」 作曲:チャイコフスキー 妹の嫁ぎ先がウクライナのカメンカ(ウクライナ語ではカミヤンカ) 「アンダンテ・カンタービレ」を聞いてトルストイが涙したという話もあり、チャイコフスキーにとっても最高の調べだと思います。