西里俊文(養護学校教頭・書家) ・個性を大切に、認めあう
西里さん(52歳)は青森県立八戸第二養護学校の教頭先生で書家でもあります。 1999年(平成11年)に5人の教え子と一緒に書道会を開いて今年23年経ちました。
3月までは八戸聾学校で教員をしていました。 書道会はボランティアで教えています。 障害のある子が約8割ぐらいです。 現在は33人います。 最初は自宅を開放してそこでやっていました。 その後近くに家を建てたので、そのまま引き続きその家で教えています。 学校で書道を教えていましたが、或る子が続けたいといことでそこからスタートしました。 最初は書き順にこだわったりしましたが、なるべくいいところを引き出して作品つくりをした方がいいのではないかなあと思って、転換して教えてきました。
「俊文書道会」では子供たちがいろいろ展覧会で賞をもらっています。 自身も2007年に第41回高木奨励賞、読売教育賞、人間力大賞、博報賞、毎日書道展賞などを受賞。 2020年障害学習支援活動に係る文部科学大臣表彰を受賞。
「僕の中にライオンがいる」、「おならは友達なのだ」「なんでだろう心が一つに成れるのは」・・・・・等々、かなり好き勝手な文章のようなんですが、各会員さんと書く時に会話をして、いろいろ引き出してそれを作品にしたいなあと思って、そうすることでその人の個性とか、思いが作品の中に入って、いい作品が出来るのではないかと思ってやっています。「僕の中にライオンがいる」と書いた会員さんは筋ジストロフィーで電動車椅子で通ってまして、訥々と話しているなかで出来ました。 「筆文字で伝えたいことば大賞」を受賞しました。 メッセージ性のある作品だと思っています。
個人の特性を生かしながら文字を選んだりしながら作品を作っていきます。 大きいのは全紙、縦が136cm横が70cmを2枚貼って、墨まみれになってもいいという感じでやっています。 青空のもとで書いたりもしました。 作品集「凸凹の書」 誰も凸凹を持っていると思いますが、凸凹の良さを磨いて指導の方がいいと思っています。
うちの会の20周年と重なって2020年のパラリンピックがあるので、展示会を開こうと思ってましたが中止になって、2021年にもできなくて、2022年にできないかと再度会場を押さえているところです。 7月29、30,31日と行う予定です。 大きな作品は横が10m縦が4.8mが2点、8m級が3点あります。 褒めてもらう事が次につながると思いますので、展覧会は大事だと思っています。
北海道出身で松前で生まれて、函館、その後弘前に住みました。 大学が弘前大学で、理学部です。 書道は小学2年から近くの書道教室に通っていました。 その後もずーっと続けて大学では佐藤先生と出会いました。 24歳で肢体不自由な養護学校に行きました。 教育をしながら書道は続けました。 そのなかでいろいろな賞を頂きました。 会員さんのエネルギーを糧に自分の作品に落としこもうかなと思っています。 養護学校に5年その後聾学校に7年第二養護学校に8年、聾学校に8年そして今年4月第二養護学校に戻りました。 高校で書道の先生を希望しましたが、特別な学校でそこで頑張れと言う風に思って、今は感謝しています。
それぞれの会員さんの特性に応じて調整する場合もありますが、ない場合は上手く交われるようにしています。 うちの会員さんの何人かでユニットを作ってコラボの展覧会をしたいと思っています。 交わったことがない会員さん同士が交わって一つの展覧会を作るという形で展開していきたい。 いろいろな交わりをきっかけにして広がって行ければなあと思っています。 自分は書で成長させていただいたので、書で恩返しができればいいなあと思っています。