2022年7月30日土曜日

中村桂子(生命誌研究者)        ・生きものらしく自然体で老いる

 中村桂子(生命誌研究者)        ・生きものらしく自然体で老いる

「老いを愛ずる 生命誌からのメッセージ」と言う本を出しました。  難しい生命科学書ではなくて、老いをマイナスに捉えず愛でながら自然体で暮らせば、歳を取るのも悪くないと言います。  中村流老いの愛で方とはどんな愛で方なのか、又生命誌からのメッセージとはどんなメッセージなのか、伺いました。

人間は生き物だという事を考える事なので、難しい事ではないです。  「愛ずる」と言う言葉が自分の生命誌の考えに、一番基本に置いています。  「虫愛ずる姫君」平安時代に書かれたもの。  お姫様が虫が大好きで、毛虫もじっくり見ていると蝶々になって飛んで行く。  虫がいなかったら綺麗な蝶々は生まれない。   見かけが綺麗、綺麗じゃなくて、本当に生きている姿を見ると、とってもかわいらしくありませんか、と言うんです。  「愛ずる」という事を思っていて、歳をとるという事も、通常は厭なことですが、よく考えてよく見ると、とても大事なことだし、いいことがあるような気がしてきまして、「愛ずる」という事を歳をとってゆくことにも当てはめて考えてみたいと思いました。  

86歳になりました。  白髪が増えてきて、黒く染めてもらったりしましたが凄く面倒なんです。  雑誌にあった草笛光子さんみたいになりたいと美容師さんに言って、そうしたら楽で気持ちも落ち着いて、服装とのマッチングも考えられるし、兎に角時間がかからなくて楽です。   自然が好きですが、庭など正直掃除が面倒ですが、でも落ち葉を綺麗にするとスッキリします。  落ち葉が多少残っていても自然だと思って気にしません。  自然に生きる寅さんも大好きです。   寅さんが言う「きりがありませんから」と言う事がいいですね。  

小学校4年生の時に太平洋戦争が始まって、そういう時代に生きてきました。  大谷翔平君、藤井聡太君をこの本に書いたのは、投書に孫みたいで元気にしてもらっているとあって、読んで自分も同じだと思いました。   この二人が素晴らしいのは競争をしていないと思います。  自分が大好きなことを一生懸命やっている。   今は競争させ過ぎると思います。   生命誌は色々あり、蟻とライオンを見て、どっちが素晴らしいのと言ってもしょうがないわけです。  それぞれが思いっきり生きている姿を見るのが、本当に生きているという事を感じさせてくれて、そこで競争しても仕方がない。   この二人は思いっきりやっていますよね。  得意なことを伸ばせるようにするのが大人の役割なのかなあと思います。  

志村ふくみさん、人間国宝で、染色から織りの素晴らしい仕事をされました。  植物から色を取るではなく、頂くとおっしゃいます。   生きて行くためにはほかの命を頂いて暮らしていかざるを得ない。   「頂きます」という、自然からいろんなものを頂く、日本語は良いなあと思います。   

ジェファーソン  アメリカの独立をやった人ですが、凄く能力があったから自分はリーダーになるんだと勉強していろいろ文字を書いていたが、或る人が「君の書いているものには足りないものがある、謙虚という事だ。」と言ったそうで、リーダーになるためには謙虚が必要だという事で、素晴らしいことだと思います。  素晴らしいなあと思う方はみんな謙虚でいらっしゃいます。 (この件は本には記載されていないが)  

世界一貧しい大統領、ウルグアイのムヒカ大統領  報酬の大部分を財団に寄付し、月1000ドル強で生活しているため、「世界一貧しい大統領」として知られている。  日本に来た時に、「私は貧しいんではなくて、質素なんです。 やたらものを欲しがらないんです。 質素でいると自由になれるから、私は質素に生きているんです。」とおっしゃいました。 質素と言う言葉があった、これはいいなあと思いました。  心が豊かになります。   「貧しい人とはものを少ししか持っていない人ではなく、無限に欲があり、いくらあっても満足しない人だ。」と言っています。  そうなると心が貧しくなる。  

まど・みちおさん、代表作「ゾウさん」など、素敵な詩を書いています。        「ぼくがここに」と言う詩があります。 まどさんが一番好きだった詩だそうです。   

「ぼくが ここに いるとき
ほかの どんなものも
ぼくに かさなって
ここに いることは できない

もしも ゾウが ここに いるならば
そのゾウだけ
マメが いるならば
その一つぶの マメだけ
しか ここに いることは できない

ああ このちきゅうの うえでは
こんなに だいじに
まもられているのだ
どんなものが どんなところに
いるときにも

その「いること」こそが
なににも まして
すばらしいこと として」

100歳を過ぎるまで詩を作っていました。

「生まれたところだけが故郷だけではなく、死んでゆくところも故郷  宇宙を故郷にすれば一緒のところになる。」  宇宙の果てまでは138億光年、その果てまで私たちの身体を作っているものと同じ様な物質であるという事は明らかで、私たちは星のかけらと同じで、星とつながっている。  亡くなったら又星に戻るのかなあと思います。   私たち生きものと言うのがこの地球上にいて、私たち生きもののなかに私はいるんだと思って生きているんです。  そうすると広い気持ちで生きられる。  宇宙の仲間と言うところまで広げられると、故郷って宇宙なんだよねと、このメッセージは私にとってもありがたい。 

異常気象、原因は私たちが欲を出し過ぎて、エネルギーをどんどん使い過ぎたことが原因の一つだと思っています。   自然界にはゴミはないんです。  あらゆるものが回っている。  お弁当もぽいと捨てるとゴミになり、ゴミは自分で作る物。  ゴミを土に戻すようにしています。  ゴミをださないような生き方が大事だと思います。  

コロナ、戦争している暇などありますか、と言うのが私が一番の思いです。  山下清さんの長岡の花火の絵がありますが、「みんなが爆弾なんか作らないで、綺麗な花火ばっかり作っていたらきっと戦争なんて起きなかった。」と言っていますが、世界中の人に聞いて欲しい。   中村哲さん、私たちの心の中に生きている素晴らしい方だと思います。    競争よりも共生ですね。  生き物はみんな共生をしています。 一つ一つの生き物が一生懸命生きている。  共に生きるという事をすることがそれぞれが一生懸命生きたうえで共に生きるのが一番いい、或る意味それしかないと思います。   あまり欲張らないで行くというのが、これから地球を愛でる生き方なのかなあと思います。