2022年7月26日火曜日

今井通子(登山家)            ・山に魅せられ、森に学ぶ

今井通子(登山家)            ・山に魅せられ、森に学ぶ 

ヨーロッパアルプスの三大北壁を女性として世界で初めて登頂に成功した登山家です。    今井さんは子供のころ長野県の蓼科で暮らし、長く山や自然にかかわってきました。    山や森の健康効果の研究にも取り組み、森林浴を健康増進や治療に役立てようという活動を行っています。 

*電話を介しての対談だったので聞き取りずらいところが多くて、間違った内容のところがあるかもしれませんのでご了承ください。 

先週岩手県の岩手町から八幡平の方に行って、姫神山に登りましたが8合目以上は天候が悪くて登れませんでした。   八幡平は下界は猛暑日でしたが、頂上付近は雹(ひょう)が降って風も物凄かったです。  60代の頃にも白馬岳に9月の1週目に登った時も、大雪渓の途中まで来たら急に寒くなって、マイナス2℃ぐらいになり、しゃべれなくなりました。   山の天気はニュース、新聞の天気予報とは全然合わないです。  狭い場所によっても違うし気象が荒くなってる感じがします。   

泌尿器科専門医、登山家、日本山岳ガイド協会特別顧問、国土緑化推進機構森の「名手、名人」選考委員会委員長、森林セラピーソサヤティー理事、エコツーリズム推進協議会アドバイザー、日本ユースホステル協会副会長など山に関する役職が並んでいます。  

山は大好きです。  国土緑化推進機構森の名手、名人選考委員会委員長と言うのはそのプロジェクトが2019年に終わったのでなくなりました。  

ヨーロッパアルプスの三大北壁はグランド・ジョラス マッターホルン北壁、アイガー北壁、グランド・ジョラス北壁で、マッターホルン北壁は若山さんと二人で女性同士で登って、アイガー北壁は男性たちと一緒に新しいルートで登り、グランド・ジョラス北壁は今の夫と頂上で結婚式を挙げようという事で登りました。   北壁は垂直を越えているところもあります。   ボルトを取り付けて3段ぐらいの梯子を取り付けて1mぐらいずつ上がります。真下は牧草地帯で牛が鳴いていたりします。   誰も見たことのないような芸術作品の岩の形とか、見られてそれなりに楽しいです。   

両親とも医師ですが、自然の中でのびのびを遊ばせることで健康管理をしようとしていました。    夏になると蓼科とか八方尾根とかに行って、地元の食材を食べて、小学校に入ってからは午前中は勉強、午後は川筋をずーっと上がって行って、森で遊んだりしました。 蛇を捕まえて渡すと或るおじさんがお金をくれるので、よく蛇を捜して捕まえましたが、後で知ったんですがマムシでした。 

高校3年生の時だけは受験勉強があり自然との付き合いはなく、身体が弱ったのを実感しました。  太陽に当たらないと駄目だと思って、大学では日に焼けるためにたまたま山岳部に入る事になりました。   道具類はかなり発達して荷物も軽くなりました。   一番大切なのは気候条件をよく知るという事と、地上の気象だけ観測していったのではだめで、1000mであれば1000mの気象はどうかという事をきちっと把握してから行かないと危ないと思います。    私は上空の予報の気象から見ていますが、当たらないとこの方が多いです。  現場に行って風が強い様であれば森に逃げます。   

登山は文明の利器はなかなか使えない。  頭を使うようにしています。  計画、・・・(よく聞こえず)気力とか、周りを見たり、危険と安全を見極めるために、回りの音とかにも敏感でなければいけない。   森林セラピーの指導員として行った時には、凄い大風で森の中にいた時に、弱った枝がドスンと目の前に落ちてきました。   そういったこともあります。     動物として大脳とか脳幹、小脳を含め、全部対応させないと自然との対峙は難しい。    医学的には証明されてはいないが、天然セラピーの場合は1982年ごろに林野庁長官・秋山智英さんが森林浴と言う療法をイメージして言葉を作りました。  1930年代にソ連の学者のB・Pトーキンさんが植物をいろいろ観察、実験をしていたら、植物自身が自分が生き延びるために微生物と戦って、微生物を殺してしまうとか、遺棄してしまうとか、無力化してしまうという揮発性物質を持っているという事に気が付いて、提唱された。 その6年後に野副 鉄男さんと言う科学者がタイワンヒノキからヒノキチオール微生物を殺してしまうとか、遺棄してしまうとか、無力化してしまうという揮発性物質)を発見、構造式も解明した。  身体にいいという事が証明された。  それから50年経ってしまって、トーキンさんが日本にきて「不思議な力 フィトンチッド」を出して、それを読んだ秋山さんがそういう事もあるんだと森林浴と言う言葉を、日光浴、海水浴となぞらえて、科学的に証明しようという事で都会にいるよりも森林に行った方がストレスがなくなることを突き止めました。  森が人にとって効果があるという証明する時期もあり、2003~6年ごろに、森にいた方が免疫力が増すと言う、自然免疫のNK細胞が増えるし、抗がんタンパク質も増える、という結果も出ました。 

林野庁は8項目を挙げています。  寒い時には森の中はあたたかい、暑い時には葉っぱから蒸発させているので涼しいです。  気候緩和機能がある。  それだけでも地球温暖化を防ぐようなこともできる。   文化機能としては森に関わる芸術、精霊、神社仏閣がある。   生産機能としては木材の生産など。  日本は森林の占める割合が多(68%)、天然林と人工林がある。   人間は搾取する側で、搾取する側にならないようにするためにはお金を払うしかない。   森を元気にするためには森にお金を払わなければならない。  森林セラピーで森林から私たちが元気にしてもらい、投資家、セラピスト、道の駅などの観光施設などに対し、仕事が豊かになれば、地元の行政が森の政治をしたりして、ぐるっと回るようですが、そうすると森が元気になると思って森林セラピーには力をいれています。  

森林サービス環境という事で森林セラピーとか森林に関わるいろいろなことをして、お金が入るが、官から民へと移行してきて、研究に関するお金も少なくなってきています。   日本衛生学会賞と言うのがありますが、いま私たちがやっているInternational Society of Nature and Forest Medicine の副会長が森林医学について日本衛生学会賞をもらいました。