2022年2月3日木曜日

市村マツ(まゆ工芸家)          ・紬の里でまゆと向き合い

市村マツ(まゆ工芸家)               ・紬の里でまゆと向き合い

結城紬で知られる茨城県結城に住む市村さんは繭玉を切って平らに延ばし、パッチワークのように縫い合わせてお財布やコスターなどの小物や帽子などを作っています。  全国で唯一の繭工芸として茨城県伝統工芸士に認定されて、86歳になった今も商品の発案から染色、縫製、販売などもすべて市村さんが手がけています。   繭工芸にかける思いを伺います。

被っている帽子も繭で作っています。  繭は夏は涼しく冬は暖かいです。  デザインも自分でやります。    最初、丸い繭の端を切って開いていって、一旦洗濯機で洗います。  洗ったら水に漬けておいて一晩おきます。  その後に染めます。  濃いところと薄いところが出来ますが、それがまたいいグラデーションとなります。   鶯色の物は大根の葉っぱで染めました。  母親が糸を染めていたので母親に染め方を教わりました。   天然のものは最初本を買ってきてやりましたが、段々自分で工夫してやるようになりました。  春咲く紫の大根の花、蕗の葉っぱ、あしたばの葉っぱ、金魚草の赤い葉っぱ、柿の木の葉っぱなどいろいろやってきました。  紫陽花の花は色が出なかったです。  天然の物は淡い色が出ます。   染めたら天日干しにして乾かします。  まだ多少しっとりしているうちにアイロンで延ばしますが、それが大変です。  

繭は蚕を買っている家があってそこから分けてもらいます。  繭の中はまださなぎが生きています。   帽子では100個以上の繭を使います。   これは1万円札が入る大きさの財布です。   平らになった繭をミシンで縫い合わせます。   ミシンは4台ありますが、機能が違います。   夏は5時ごろから作業をします。   帽子、財布、名刺入れ、カードホルダー、小さいバッグなどがあります。 

小学校で作り方を教えに行ったりもしています。    お客さんによってはこういったものを作って欲しいと要望もあります。    

布で小物を作ることを通信教育で習っていました。   洋裁、和裁は習っていました。 繭工芸をする前はカメラの部品の研磨を主人と二人でやっていました。   プラスチックの部品が出回りだすと工場の仕事が無くなってきてしまいました。   それで始めました。  段々お客さんに買ってもらえるようになりました。  染めと、アイロンかけは力がいるので主人にやってもらいます。   主人が川釣りで使った繭の殻があったのでそれを利用しようと思ったのが始まりです。    始めてから40年近くなります。     

帽子を作るのに、お椀のようなカーブを作るのに苦労しました。   お客さんに教えてもらいながらここまで来たという感じです。   全国物産展で持って行ったものが売れました。   ファイルも繭で作ったものですが、ここに売れた作品の一覧があります。   印が付いているものが売れたものです。  その前から売れてはいましたが、1999年から書き入れて居ます。   いろいろなところの物産展に出品してきました。    お客さんからは長持ちすると言って喜ばれています。   

作品を作ること自体が楽しみです。   伝統工芸士の免許も何年か前に頂きました。  繭で作っているのはほかに人がいないので、生き甲斐としてやっています。   86歳になりますが、仕事を続けるためも元気でやって行きたいと思っています。   教室をやって伝えたいが先立つものがないからできなくて、忙しい時には2人手伝いに来ているので、伝えられればいいなあと思っています。   何とか技を残していきたい。