山田優美子(学校事件事故遺族会理事) ・【人権インタビューシリーズ】身近に潜む"指導死"
学校での教員の不適切な指導が、生徒の自殺を招く指導死と呼ばれる事案が、私達の身近なところで相次いでいます。
今朝は遺族でつくる指導死親の会で活動する山田さんに伺います。
山田さんは7年前に、当時高校2年生の次男を自殺で失いました、
そこには野球部の指導者の行きすぎた指導が、深くかかわっていたと言います。
身近に潜む指導死、山田さんに伺いました。
指導死、教員の指導が原因とした子供の自殺を総称して指導死と呼んでいます。
増えているというよりは表面化してきた感じです。
2011年に息子を亡くしましたが、それまでは全く関心がありませんでした。
野球が好きな子供で、入学して直ぐ硬式野球部に入部しました。
先輩たちがすごく優しいと言っていましたが、夏を過ぎたころから恭平が愚痴を言うようになり、あの監督(二軍監督で副部長)は直ぐに殴るので厭だというようになりました。
自分は殴られた事は無いが、友達が殴られるのを見て、厭だと言っていました。
2年生になって直ぐに、再び恭平が野球部を辞めると言ったことで、厭けがさしたんだなと思いました。
その日帰宅した恭平は肩を落としていて、辞められなかったということでした。
練習試合が終わって帰って来た恭平が落ち込んでいて、部員が3人休憩時間に殴る蹴るの暴行を受けたということでした。
しかし、ほかに恭平自身がボールを落としたという事で、みんなの前でユニホームを脱がされて「消えろ」と一喝されたそうです。(亡くなった後で判った事)
部活に行かなくなって、一週間後に副部長が恭平が練習に来ていないことに気が付いて、教官室に呼び出されたそうで怖かったと思う。
頭が痛くて学校には行きたくないという事で、学校は休ませました。
翌日は送りだしましたが、学校には向かわずに隣町にある廃車の中に入って、練炭を使って亡くなっていました。
アンケート、聞きとり調査もされないままで終わりました。
遺書が無いということと恭平は殴られていないという事で、学校と恭平の自殺の間には何も関係ないと言われました。
文科省に手紙を出して教育委員会も動いて第三者委員会が調査をすることになりましたが、それでもまだ判らなくて県知事に陳情して、新たな第三者委員会が出来ました。
その結論としては暴力が一定数あり、それを見て鬱状態になり、鬱により自殺したという事になりました。
今年5月に愛知県弁護士会の人権救済の申し立てにより学校、当時の副部長に措置が取られる。
部活の中の暴力行為が事件であると認定された文言があり、それが一番欲しかった結果だなと思いました。
30年間で78件の数が報告されているが、ごくごく一部だと思います。
私が把握しているだけでも、明らかに指導死だと思う案件があり、諦めてしまって指導死にカウントされない事案が何件もあります。
指導死とパワハラは似ていると思います、物的証拠がない。
指導死の難しいところは、先生に悪意があってやっている訳ではないという事が多い。
地域の声が、いい先生だという事を言っていたりすることもあります。
そうするとなかなか声をあげられなくなってしまう事もあります。
何でどこかで助けてあげられなかったのかとか、親として自分自身に対して、自責の念を起こしてしまう事もあります。
恭平への体罰はなかったが、指導死は暴力が振るわれていなかった事案がほとんどなんです。
心を一気に追い込めるのは、先生ならではの関係性の問題なんです。
個室で長々説教されて、教師から「お前は生きる価値がない」なんて言われると、子供は自分は生きてゆく価値が無いのかなと思ったりするわけです。
追いつめられて突発的に自殺してしまう事があります。
先生の立場はどれだけ怖い存在なのか、を自覚して指導してほしいと思います。
子供のプライドも気にして、どう指導するのかを考えてもらいたい。
私は子供の自主性を尊重するあまり、子供の話を聞けませんでした。
野球部を辞めるとか、学校を辞めるとか、色んな選択肢がある事を言ってあげるべきだったなと後で思いました。
社団法人「カナリアハート」を立ち上げました。
私自身子育てに自信がなくなり、自我の崩壊というような思いがありました。
そういった人達がいれば、受け入れられる場所を提供したいと思いました。
運営して行く為には資金が必要で、あえて寄付だけでやっていきたいと思っています。
他の選択肢、角度を変えて見ることをお勧めしたいと思います。
殴られた子たちに聞いたことがあるが、エラーをしたり、色んなことに対して殴られた自分が悪いというんです。
それが私にとってはショックでした。(理不尽だとかは一切思わない)
子供達は自分たちに人権があるという事を教わって来ていない。
もっと声をあげるべきだと思います。