2018年10月6日土曜日

原田禎夫(大阪商業大学准教授)      ・川ごみが海をよごす

原田禎夫(大阪商業大学准教授)      ・川ごみが海をよごす
京都府亀岡市から京都市の嵐山まで、船で下る保津川下りは保津峡の美しい景観が魅力的で多くの観光客が訪れています。
しかし岸辺を歩くとごみが目立つということです。
近年増えているのが、ペットボトルやプラスチックごみで、川の流れに乗って大阪湾、瀬戸内海に流れ込んでいます。
亀岡市在住で大阪商業大学准教授の原田さんは2007年にNPO法人「プロジェクト保津川」をつくり、代表理事として川の清掃や一般への啓蒙活動をしています。
今、世界的な問題になっているという川ゴミ、特にプラスチックによる海洋汚染と、「プロジェクト保津川」について伺います。

トロッコ列車には年間100万人以上が乗り、保津川下りも20~30万人が来ています。
京野菜を求めにきて大人気ですが、そのほとんどが亀岡市と南丹市で作られています。
京都駅から亀岡駅まで20分位です。
2007年にNPO法人「プロジェクト保津川」をつくり、川の清掃や一般への啓蒙活動をしています。
大学院生のころから水の研究をしていました。
水道料金はどうやって決まるだろうと研究しているうちに、水はコストのお金しか考慮していなかった。
或る日保津川下りの船頭さんたちが来て、「保津川のゴミがひどいのでどうしたらいいでしょうか」と相談に来られました。
写真を見てびっくりしました。
地域の皆さん、船頭さん達とNPOを作って、清掃活動を行ったり、川のごみの問題をどうしたらいいのかを、考えるようになりました。
会員は100人弱います。
清掃活動を毎月やっていて、今年の2月で100回を迎えました。

到るところにペットボトル、レジ袋、食品の発砲スチロールのトレーなど様々なゴミが大量に流れついています。
ポイ捨てもあるが、フェルトペン、筋肉痛の薬、納豆の容器などもある。
ゴミ捨て場の管理が悪いのかどうか判らない。
ゴミの原因、生活の中にプラスチック製品が多過ぎて、雨が降った時などにどっと川に流れ込む。
「貴方の家の前がごみの出発点ですよ」と言っています。(カラスが突っついて中身が出てしまいそれが雨で流れだす。)
見付けたら一個でもいいから拾う人になって欲しいと言っています。
多い時は何トンという量が集まります。(保津川河原だけで)
保津川から淀川に入って行き大阪湾に、瀬戸内海、太平洋に出て行く訳です。

マイクロプラスチック、全長が5mm以下の物をそう呼んでいる。
顕微鏡レベルまで小さくなってゆくものがあります。
ペットボトルの蓋の細い部分、価格票の留める細いT状の物、人工芝の破片とか、足ふきマットの破片など、水路を伝わってやがて海へと行きます。
悪意が無いけれども、結果としてプラスチックゴミの原因をになってしまっている。
そういったことはなかなか気付かない。
紫外線を受けてプラスチックは劣化し、波の力で岩に砕けられどんどん細かくなってゆく。
プラスチックそのものが、製造過程で様々な添加物が含まれている。
添加物が及ぼす影響については未知の部分もあり、大量に摂取すると人体に影響を及ぼすものがある。

知らず知らずに食物連鎖の中で、我々は摂り込んでしまうという危険性がある。
小さなプラスチックをプランクトンが食べると言うことは研究で明らかになっている。
食物連鎖のなかで濃縮されてゆくので、プラスチックの持っている毒性も濃縮されて行く。
元は石油なので非常に色んな有害物質を吸着し易いという性質がある。
台風などでまぜっかえされると、かつて高度成長時代に使われた有害物質が巻き上がってしまう。
そこに含まれていた有害物質が再びプラスチックに吸着されてしまう。
プラスチックごみが過去の有害物質の運び屋になってしまう、その影響も深刻です。
どの程度摂取したらどんな影響が出るのかまだ判らない、リスクが判らないということが一番の問題だと思います。

海水に流出したプラスチックは海水と反応する中で、鳥たちが好きな餌と同じようなにおいを発生しているので、最近の研究では鳥たちは好んでプラスチックを食べているのではないかと言われています。
防ごうと思えが防げるものなので、放っておくと数十年後は10倍になってしまうかもしれない。
瀬戸内海は沿岸からの流入が70%程度は我々の街から出ていると思う。
そのうちの60%位は淀川から瀬戸内海に流れ込んでいると思われる。
清掃活動して一旦は綺麗になるが、大雨、台風が来ると元の木阿弥になってしまう。
でも食いとめないと、まずは続けて行くことが大事です。

「水に流す」などという言葉があるが、昔はプラスチックは無くごみを捨てる影響度は少なかったかもしれないし、川が生活と密着していたが、最近は川とともに生活するということは無くなってしまって、川の水を飲むなどということはもってのほか、ということになってしまった。
ゴミ拾いするだけではなくて、川を暮らしに近づけたいなあと思って、色々啓蒙活動を行っています
何処にどんなゴミがあるのか、スマホで調べるようなアプリも開発したりしています。
写真を投稿してもらって考えていただき、清掃活動が盛んになった地域もあります。
2012年に内陸部で海ごみサミットを行いました。
3回目の川ゴミサミットも開催します。

海洋ゴミが深刻な問題として、地球温暖化などと並ぶ主要議題になっています。
世界では色々取り組みが進んでいて、レジ袋禁止という国も有ります。
ペットボトルを店に返すとお金が返ってくる、デポジット制度が導入している国が出てきています。(ヨーロッパ、アメリカなど)
瓶、缶、ペットボトルなど機械が勝手に分別してくれて、お金がもらえるような機械が出てきています。
機械は店のコンテナに自動的に分別されて、処理工場に行きます。
処理工場では何処の店からどんな製品が回収されたのか、一瞬で機械で仕分けて表示されます。
アメリカでは米を計り売りをしていたりします、紙の袋を使っています。
先ずは問題を知っていただいて、海岸、川がどうなっているかを周りに広げて頂いて取り組んでいただき、行政の人には仕組み作りをして頂きたいと思っています。
衣類の化学繊維の埃も(洗濯で出て来る)マイクロプラスチックです。
我々は意識を変えて行かないといけないと思います。