大川直人(写真家) ・原点はモノクロームのリアリティ
ご自身が還暦を迎えたのを機に、これまで撮影してきた写真をモノクロに現像し常開型の写真展を開いている大川さん、展示内容やアーティストとの撮影秘話、写真家として大切にしてきたことなどを伺いました。
タイトルが「音楽の仕事40年に軌跡」の写真展、写真のすべてがモノクロです。 約100点あまりです。 写真は主に音楽業界で活躍している方々です。 80年代、90年代に撮影した作品です。 山下達郎さん、 大江千里さん、ドリカムさん、松たか子さんなどたくさんのアーティストがあります。 引退、乃至は解散したチェッカーズ、安室奈美恵さんなどもあります。 忌野清志郎さん、尾崎豊さん等亡くなった方もいます。 安室奈美恵さんの写真の前で30分ぐらい号泣していた方がいました。 ROLLYさんと谷山浩子さんの写真の前で3時間も眺めていた人もいました。
懐かしいという人もいるし、その時代の青春がよみがえる人もいます。 いい仕事をしたなと思います。 言葉より心が動いた瞬間を撮りたいので、言葉は余りかけないです。 サザンオールスターズや米米クラブなども印象に残っています。 飛行機の尾翼に桑田さんが立っている、大きな美術を作って、そういう撮影もあれば、米米クラブは10m以上ある骸骨美術を作って、砂漠へ持って行って撮るとかやりました。 お金も凄くかかるし、一つ写真を撮るのに3日かかるし、スタッフも15人ぐらいかかります。 アナログの良さは、合成無しで撮っているのでリアリティーが違うと思います。
渡辺美里さん 「合図」という、髪の毛を切る瞬間の写真。 この瞬間が凄くいいと思って、撮影するところへ移動してもらって撮影しました。 用意していなかったドキュメンタリーの写真です。 これがきっかけでレコードがミリオン売れるようになって行くんで、大きなきっかけでした。
還暦を迎えてこれまでの仕事を振り返ってみましたが、音楽の仕事が中心だったんだなと言う事で、眠っているネガで少しづつ現像していきました。 写真集を作ろうと思ったがOKしてくれなくて、写真展をしました。 ある種の音楽業界の歴史が写っているのではないかと思いました。 100人を想定していてその中から一枚しか選べないという風に自分で思って、選んでゆくのに物凄く考えました。 2年ぐらいかかりました。 30年、40年経っているので冷静にセレクト出来ました。 モノクロの魅力は見る人によって色が感じられたり、受ける印象が違うと思います。 黒から白のグラデーションがモノクロだと思います。 写真と言えばモノクロというぐらいの、その感覚は有ります。 ゼラチンシルバープリントというモノクロでは最高峰の紙焼きです。
aikoさんの「カブトムシ」という曲のための撮影、 夜の港の撮影でしたが凄く時間がかかりました。 松たか子さんは音楽デビューの高校3年生のころから撮っていますが、撮影の時に集中力のある人で、普段しゃべっている時とはガラッと変わって、さすが女優さんという感じです。
東京総合写真専門学校映像芸術学科を卒業後、映像関係の仕事をして、22歳のころにレコードジャケット用の写真をしたいと思い立ち写真家の道を目指す。 25歳で独立し、レコードやCDジャケット、雑誌の表紙など様々なアーティストの作品に関わってきました。
イラストレーター志望でしたが、レベルが違い過ぎて断念しました。 映画のカメラマンに成ろうと思い映像芸術学科に入りました。 レコードジャケットが芸術にまでなった時代だったので音楽の写真を撮りたかった。 スタジオ撮影のアシスタントをして修業をしました。 ニューヨークへ3か月モノクロのスナップを撮りに行きました。 疲れはてて観覧車に乗っていた時に窓枠がカメラのフレームのように思えて、観覧車は一周風景を見せてくれるので、これこそが写真なんだなと悟りました。 自分の目の前にしかいろんなことは起きないんだ、それを受け入れて写真にすればいいんだという事が判りました。 レコード会社との出会い、渡辺美里さんとの出会いがあり、それからは忙しくなりました。 写真集を出したいと思っています。