山下智道(野草研究家) ・【心に花を咲かせて】 令和の牧野富太郎を目指す"ハーブ王子"
山下さんはまだ33歳ですが、植物への知識は驚くほどで植物の名前や分類が判るだけではなくて、どうやって料理すれば美味しいか、どんな歴史があるかなど、ワークショップやブログで伝えて、その内容が魅力的だと、全国あちこちから講演してほしい、観察会をしてほしいと呼ばれています。 植物愛と知識量は令和版牧野富太郎だということです。 プロフィールを見てみますとシンガーソングライター、モデル、植物学を専門的に学んだという事はないようです。 どうやってその知識を身に付けたのでしょうか。
今から8年前ぐらいに"ハーブ王子"と自分で決めました。 もともと歌手とかモデルをやっていて、イケメンボーイズコレクションがあって準グランプリになって、〇〇王子が流行った時代でなんか付けたらいいと言われて、ハーブにしようと思って決めました。(24,5歳) 名乗ったからには勉強しないといけないと思いましたが、勉強する前から植物の名前ぐらいは知っていました。 歌手になりたくて福岡から18歳で出てきたんですが、芽が出なくて24歳ごろに母親からもう帰ってくるように言われました。 モデルは業界とのコネクションを作るためにやっていました。 何とかしないといけないと思って"ハーブ王子"と付けたんですが、フェースブックに植物の事、それに関わる料理のレシピなどを投稿すると評判が良かったです。
ハーブの検定、山菜の検定とかあり勉強していって、"ハーブ王子"という名前の方から広まっていきました。 最初図鑑、文献を見ながら勉強して、専門家に会いに行くという事も好きで、識別の難しいものは直接持って行って、質問攻めでした。 横浜の方に植物の同好会、研究会があって学者も集まってくるので、判らないものを書きこんで積み重ねて行ったのがもとになっています。 家でもそれ以外のところでもずーっと勉強していました。 3,4歳から植物に興味を持ちました。 お年玉の替わりに万作とか蝋梅とか苗木を買ってもらいました。 30、40株買ってもらいました。 栽培が好きです。 思春期には男性がやるものではないというような見方をされるので、こっそりやっていました。 生け花の先生と祖父(漢方の先生)の影響が大きかったです。 漢方の薬草の本がずらりとあり、常にドクダミとか薬草が身近にありました。 土日は祖父と庭いじりするのが日課でした。 父親が登山家で高山植物のツアーなどでは先生が同行していて、父と一緒に行って質問攻めしていました。
15歳の時に英語の授業が入って来て、カーペンターズ、ビートルズなど流してくれて、心ちいい歌に魅了されました。 自分で声を出して歌う事に感激して歌手になりたいと思いました。 ボイストレーニングに通い始めて、植物とはかけ離れていきました。 或る先生のフィールドワークに参加した時に、聞いているとほとんど判ると思いました。 25歳の時には又植物に戻ってしまいました。 歌とは違う楽しさがあります。 ライブは距離感がありますが、観察会ではガイドとお客さんとは直ですから、温度感が凄く判り易いです。
どういう風に食べれるように改良していったのかとか、こういう風に合わせると物凄くおいしくなるかとか、話すと喜ばれます。 猫じゃらしは食べるイメージはないが、実は食べれるというギャップがあると、参加者は盛り上がるわけです。 ケーキの表面にコーティングしてやるとゴマみたいに粒感が味わえるし甘いです。 海外での食べ方なども勉強すると同じ食材でも説明の幅が広がっていきます。 植物の世界、死ぬまでこれでやって行こうと決めました。 本を出したいと思ったら編集部の方から声が掛かったり、やりたいと思う事がいろいろ実現していきました。 テレビに出るのも目標でしたが、意外と早かったです。 そこでさらに広がって行きました。 25歳でワークショップを立ち上げました。
葉っぱを持ってきて、「食べてもいいですか」と言ってきますが、それは怖いです。 全体を持ってきてくれとは言いますが、責任を感じます。 食べる時の注意点はうるさく言っています。 植物は生で見ないと絶対駄目ですね。 香りで識別するタイプもありますし。 イネ科、笹、竹とか地味な植物が好きです。 蘭科などはまだまだ勉強したいと思います。 自生がなくなってきているし、生で見ないと自信がつかない。 ヨモギを今研究していて、世界で350種類ぐらいあって、日本では50種類ぐらいあります。 ヨモギは分布が狭いですし、専門の研究者もいないです。 識別の検索表を作っています。 全国を回れるようになってきて、キイチゴも面白いと思っています。 50種類ぐらいあって、地域によって違った固有種があります。 味、糖度も違います。唐辛子も種類が多くやりたくて、原種が中南米で、そこから広がって行っています。 歴史がかなり重要になって来ます。 世界史、日本史は植物学に絶対大事です。
やる事が膨大なので人生逆算して順番を決めています。 牧野富太郎は尊敬しています。 植物に対する思い、考え方が凄いと思います。 日本の植物を全部網羅した本を書きたいです。 植物の好きな人を増やしてゆく窓口として伝えてゆくというのが自分の役目かなあとは思っています。 植物には小さな感動があり、日々の生活に色どりが増すと思います。