穂村弘(歌人) ・【ほむほむのふむふむ】
木下龍也さんは1988年生まれ、山口県出身。 コピーライターを目指さしていた時に穂村さんの歌集「ラインマーカーズ」に出会い、短歌の魅力に引き込まれ、23歳で短歌を作り始めます。 あっという間に雑誌や新聞の投稿欄の常連になります。 2013年第一歌集『つむじ風、ここにあります』 2016年に第二歌集『きみを嫌いな奴はクズだよ』を出版。 2018年には さんとの共著歌集 『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』は小説家の舞城王太郎さんによる短編が冊子として挟み込まれ、新しい読者を開拓したと話題になりました。 2019年には詩人の谷川俊太郎さん、さんとの3人で『今日は誰にも愛されたかった』を発表します。 又木下さんはお題を受けて歌を作る短歌の個人販売のプロジェクト「あなたのための短歌一首」を続けていて、『あなたのための短歌』が去年発売されました。
雑誌の投稿欄で初めて見て、切れ味の鋭い歌でこの人は一体誰なんだろうと思いました。
コピーライターを目指していましたが、先生から合わないと言われ、書く仕事をしたかった。 書店で歌集「ラインマーカーズ」を読んで穂村さんがきっかけで短歌を始めました。 「ラインマーカーズ」を読んだ当日に、穂村さんの「短歌ください」送って、初めて作った短歌が雑誌に載りました。 投稿するようになりました。
「友達の遺品のメガネに付いていた指紋を癖で拭いてしまった 」 岡野 大嗣 はっとするような歌です。 友達の存在が宿っていた、指紋は一回拭いたら再現が出来ない。
*「どこまでも船には波がついてきて遠くに来ても寂しくないね」 中村光 船には波がついてきて、当然すぎる言葉が置かれていて 遠くに来ても寂しくないねというのはきっとさみしいんだという事が想像できる。 切なく優しい歌だと思います。
*「シロナガスクジラのお腹でわたしたち溶けるのを待つみたいに始発」 上坂あゆみ 始発電車を待っている時の気持ち。 「・・・・・みたいに」、までが比喩でうまいなあと思います。
*「住んでいた市の封筒の愛おしさ黄緑色でダサい市章の」 水谷あい 住んでいた当時の市の愛おしさを感じる歌、言葉の置き方が凄く丁寧です。 愛おしさが先にあることでダサい市章も温かみを感じる。 サ行が入っていて、黄緑色だけ違うがそれが浮き立つ。
*「さささ鳥と母が呼んでる鳥がいて多分これだなさささと走る」 水野あおい 面白い歌です。 多分二人とも鳥の名前は判らない。
*「一度だけ死なせてしまう幼子が横断歩道を駆けるのを見て」 戸井田けい 心配という優しさの裏で再生されている、ちょっと怖い映像に改めて気づかせてくれる歌。「一度だけ死なせてしまう」というのは心の中の想像。
*「バス停のアクリル板に挟まった羽虫が発車時刻を隠す」 トロン 羽虫は意識して死んでそうなったとは思えないが、人間もそのように何のために生きているのか、自分の死ぬ事の意味など一切わからない。 神様の次元からすると、その人の生と死にはなんか意味が見えているのかも。
*「トースター開けたら昨日のトーストが入ったままでゆっくり閉じる」 島風香 「ゆっくり閉じる」は微妙な心の位置で、なかなかない形の記憶に残る歌になっている。
*「青空を遮るものが瞼ではない時距離に手が差し込める」 森口ポルポ 意味が判っているものをわざわざ判らない目でみて、もう一度組み立て直すと違うものに見える。
*「鮭の死を米で包んでまた更に海苔で包んだあれが食べたい」 木下龍也 おにぎりなんだけど分解している。 前句と同様なもの
*「ゴミ箱と食パンを買うゴミ箱に食パンを入れレジまで運ぶ」 木下龍也 本当にやったことですが、自分は駄目なことをしているのではないかと、実体験をもとに作りました。
*「キスに目を閉じないなんてまさかお前天使に魂を売ったのか」 穂村弘 「悪魔に魂を売る」という慣用句があるが、それを反転しました。
リスナーの作品
*「あらパンを忘れちゃったと笑う妻小走りコンビニ朝日眩しく」 関本章太郎
*「皆使う修学旅行でドライヤー宿に着くなりブレーカー落つ」 白井義彦
*印は漢字、かな等、および名前表記が違っている可能性があります。