藤原博史(ペット探偵) ・ペットを探せ!
最近のペットブームの中で家族同様に可愛がっていた犬や猫が失踪し、悲しみに暮れている人が少なくありません。 NHKで放送されたドキュメンタリードラマ「猫探偵の事件簿」のモデルで原作者の藤原博史さんは、そうした犬や猫を捜し出し、飼い主さんの元に届けるペットの名探偵です。 藤原さんはどのようにペットを見つけ出し、その捜索過程でペットと人間のどんなドラマを見てこられたのか、又東日本大震災でペットはどのような状態に置かれ、それ以降災害時のペットとの同行避難対策はどう進んでいるかなどを伺いました。
ペット探偵はニッチな職業でありますので、今まで認知されなかったんですが、NHKで放送されたドキュメンタリードラマ「猫探偵の事件簿」でメディアに取り上げられるようになって反響の大きさにびっくりしました。 物心つく前から、虫とか動物とか一日中一緒に遊んでいました。 小学校の卒業文集には、将来動物関係の職業に就きたいというようなことを書いていました。 中学校の3年生の時に1年間ほど家出をして、野外で暮らしていたことがありました。 当時は捨て猫、捨て犬が結構いました。 寒い時には車の下、犬小屋、倉庫などで夜寝ていたりすると、動物たちも暖かい場所、快適な場所を捜しまわっているので遭遇する機会があって、顔なじみになって抱き合って寒さをしのぎ合ったり、食料を拾ってきて一緒に分け合って食べたりしました。 そういう体験が強く残り、この職業に結びついているんじゃないかと思います。 いろんな職業を転々としていました。
20代の前半に沖縄でホテルマン、漁師などをしていましたが、或る時物凄くリアルな夢を見て、私がペット探偵になり物凄く大活躍をする夢でした。 この仕事をしたいとすぐに沖縄から東京に出てきて、ペット探偵になりました。(26歳) 28歳の時に会社を立ち上げました。 52歳になるので27年になります。 約4000件の依頼を受け、発見率は約7割です。 圧倒的に猫の依頼が多いです。 犬のほかにも兎、爬虫類、蝶、虫とかなんでも来ます。 窓、玄関の閉め忘れ、年末とか普段と生活パターンが変わった時に、脱走してしまうケースが多いです。 飼い主の精神状態が普段と違うと、ペットも不安な状態になるので、まず落ちついてもらう事が大事です。
普段家のなかで生活している猫の場合は軒下とか、物置の下、ガスメーカーのボックスの中とか、一階部分と地面の隙間、などに逃げ込む場合があります。 狭くて暗くて奥行きのある場所に潜り込んで何日も何週間も一歩も動かないようなケースもあるので、懐中電灯を使ってくまなく探してもらった方がいいと思います。 多い時には一日30件ぐらいあり、3名で動いていますが、1割ぐらいしか対応が出来ていません。 迷子探しマニュアルを公開していて、知恵を出し合って探してもらうようなこともしてもらいます。 ラインで通話して対応することも提供しています。 最も大事なのは種で探すのではなく、個で探すことだと思います。 育ってきた環境、性格、地形、季節、居なくなった時間、そういったもので行動パターンが変わってきます。 飼い主さんから詳しく聞きカルテを作ります。 自分がその猫だったらと想定して探してゆきます。
色々なパターンに合わして、チラシを投函したり、動体検知カメラを仕掛けたり、いろいろの進め方をしています。 チラシは1000枚とかの規模が必要な場合が多いです。 効果的に伝えるのにはまずは文字を少なくして、特徴を1つ,2つをクローズアップする。 文章より写真。 細かな猫探し地図を作って整理しながら、計画的に進めてゆくことが重要です。 犬は二次元で動いてゆく動物なので線を押さえてゆく方法、猫は三次元で動くので面を潰すというようなイメージです。(チラシの投函が有効) 見つかっても逃げて行ったりするので、保護する機械を設置して進める場合がおおいです。 数分で発見できるものもあれば数か月かかる場合もあります。 3割は未発見になってしまっています。
保護するまでに7か月ぐらいかかったケースもあります。 葉山から九州に引っ越しする際に、猫2匹を連れて行ったがすぐに脱走してしまった。 失踪から現地に行ったのが1か月後でした。 6回通って、196日目に兄猫を無事発見、210日ぶりに妹猫も無事保護できました。 2匹とも関東寄りの方に移動していました。 中には帰巣本能の強い猫もいます。 九州で一緒に暮らすことは猫にとっては難しいのではないかという事で葉山に戻ることにしたそうです。
関西の方の猫の場合、3回脱走をした猫がいました。 5km離れたところでふらふらでがりがりになった状態で保護されました。 そこの家では飼えないという事で両親の家に預けて看病して命を繋ぐ事が出来た。 情が移ってしまって返したくないと泣きながら言っていました。
温泉地に行っている間に強盗が入って財産を持っていかれて、割られた窓から20歳近い高齢の猫が逃げだしてしまった。 現地に行ったらお城のような大豪邸でした。 猫を何とか探してほしいといことでした。 運よく一日で発見することが出来ました。 一番の宝物が戻ってきたという事で感動の再会シーンでした。 ダメージで数日で亡くなってしまいましたが、感謝していただきました。
東日本大震災があった後、居てもたってもいられなくて、1か月後に被災地に行きました。 福島の双葉町になんとかぎりぎりで立ち入ることが出来ました。 偶然第一原発の駐車場の真横まで来てしまいました。 家の近くでうろうろしている犬、猫には会いました。 ペットフードを撒いて様子を見ていましたが、目が吊り上がって夜叉のような表情になっていました。 余震も頻繁に起きていてピリピリしていました。 2日間居ました。 依頼を受けて何度か探しに行ったことは有ります。 人がいないので聞き込みもできず、チラシを投函するわけにもいかず、難しい作業でした。 ペットどころではないというような状況だったので、難しいところがありました。 環境省が人とペットの災害対策ガイドラインというものを発表して、ペットと飼い主の同行避難を推奨しているし、画期的なガイドラインを作成しています。 同行避難に関するNPOの団体もあります。 神様から私に何か少しでもいいからお役に立ちなさいよと、何か与えられているのかもしれません。