荒井良二(絵本作家) ・新しい季節がそばにいるよ
1956年山形県生まれ、65歳。 絵本、イラストレーション、小説の挿画、舞台美術、アニメーションなど幅広い分野で活躍しています。 2005年には児童文学のノーベル賞と言われる、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞を日本人として初めて受賞するなど、国内外で高い評価を得ています。 2022年の国際アンデルセン画家賞の最終候補にノミネートされています。 東北出身の荒井さんはこれまでも震災を経験した人たちの心に寄り添う作品を発表してきましたが、今月2年ぶりに1冊の絵本を出版しました。 震災を経験した人々へ、そしてコロナ禍で長い冬を感じている人へ春を届ける絵本を作りたいという思いで取り組んだ作品です。
表に出ると風景を身体で感じているんだなという事を凄く感じます。 家にいながら旅の感覚は想像力を使わないと楽しめないんだなという事を気づかれた人も多いんではないかと思います。 自宅に届けるワークショップを始めました。 家の中の或るコーナーを美術館にしてもらったらどうだろうという発想でした。 2020年に「こどもたちはまっている」という本を出しました。 2020年3月「はっぴーなっつ」を出版。 ハッピーなピーナッツにしたいと思いました。 これからこの本は旅に出て行きます。
3人兄弟の末っ子で兄は離れていて、大人の雑誌など沢山あり、兄のもので楽しんでいた感覚がありました。 そこに「ピーナッツ」という本があって、良く判らなかったけれどかっこよかったです。(小学校の上級生の頃) コマとコマの「間」が自分にマッチした、そんな感じでした。 絵と字がマッチしていました。 シュルツさんは字を書くのも好きだったようです。 自分で漫画とは違うものを書きたいとずーっと思っていました。 漫画と絵本の中間みたいなものを作れないかと思ってチャレンジしたのがこれです。 「吹き出し」があると安心感があります。 語ってくれている言葉が「吹き出し」の最大の魅力だと思います。 全部「語り」なっています。 春夏秋冬の1年間を綴ったものになっています。 女の子で耳が猫の耳で、シッポもあります。
*「はっぴーなっつ」の春の一部を朗読。 耳が旅をしてゆく。
震災以降、意識する一つとして、朝とか、夜とか、一年とか、考える事が多くなったかなあと思います。 季節も巡るという事で、人間の暮らしの中に季節を取り入れながら、豊かな暮らしに結びつけてゆくという事が続いて来たと思いますが、繰り返すという事の意味合いでもって作りたいなという意識もありました。 震災を通して、自分の中にあったホコリみたいなものが取れた様な感覚があって、未来、希望といったものが恥かしくて使えないみたいな感覚があったのかなと思いました。 ワークショップをやりながら子供たち大人たちと話をする中に、未来、希望といったものが恥ずかしいものでもなんでもなかったんだという事に気付かされて、「はっぴーなっつ」を書くにあたっても、季節が繰り返すことの喜びみたいなものは震災の出来事とつながっているものと思います。 11年過ぎましたが、そのなかでも繰り返す朝とか、夜とか、季節とか体感しているわけで、少しでもそういう感覚になって貰えたらなあと思います。 花とかが微笑んでくれているので、微笑んでいるものがあるよという事を絵本で伝えたいのかもしれないです。
辛かったりするときには子供時代に歌っていた歌が浮かんでくるんです。 なんでだろうと思ったりします。 寝る前に名画を鉛筆で模写して寝るといことをやってます。 それをやると自分ではなくなる時間を持てるんじゃないか思うわけです。 クールダウンという意味でもやっています。 何か書くと落ち着きます。 一番大事にしているものと質問されると難しい・・・・。 回りかなあ。