安藤誠(写真家・アウトドアガイド) ・ネイチャーガイドへの道を語る
札幌市生まれ56歳。 北海道の自然や生き物に好奇心旺盛な少年でした。 小学生の時にはファーブル昆虫記やシートン動物記などを読み卒業文集に将来の夢は森林の警備隊員になり森の動物たちを守りたいと書いています。 子どもの時からの夢を持ち続け、知床ボランティアガイドの資格も取りました。 また子供のころから続けていた写真撮影の技術を生かしイギリス自然史博物館主催の野生動物写真コンテストなど世界的な写真コンクールで次々と受賞しています。
北海道阿寒郡鶴居村雪裡原野に住んでいます。 セツリはアイヌ語で「鳥の巣が多い」という意味で漢字で当て字にしただけです。 丹頂 丹は古い日本語の赤で、頂はてっぺんで丹頂で鶴という意味です。 丹頂蔓というと鶴鶴という事になってしまいます。
アウトドアマスターガイド、北海道知事の認可を得たガイドをしています。 リスクマネージメントがしっかりしていて、試験を受けて、プロフェッショナルなガイドで、マスターガイドはそういったガイドを審査したり指導したりする立場になっています。
アラスカでも毎年ガイドに行っていて17年間いっています。 今エゾモモンガの繁殖期で、丹頂の営巣期、エゾフクロウも恋の季節になっていて、今週もびっちりガイドが入っています。
アラスカのネーティブの方が北海道のアイヌに文化と自然に興味があるという事でガイドを探してほしいという事で、紹介を頂いて、アラスカの先住民のかたを家に泊めて、ガイドした時に、ガイドするたびになんと北海道には素晴らしい自然があるのだろう、なんてアイヌ民族の生き方は我々と共通しているんだろうと、涙を流して感動してくれました。 アラスカに来るべきだと言われて、社交辞令だと思っていたら、2週間後に妻と共にアラスカのその町が招待してくれて、釧路から東京、シアトル、・・・、合計6枚の航空券まで送られてきました。 1冊の本が書けるぐらいの歓迎ぶりでした。 僕の好きなギターが用意されていて、原住民の300人ぐらいの歓迎の席でいきなり何か演奏するように言われて、弾きました。 総立ちで拍手してくれました。 こちらで使ってもいいというオートバイも用意してくれていていました。 疑わずに人を信用するというところからスタートするという事をアラスカから学びました。 厳しい自然の中で生きるのは、常に自分のことだけではなく他人のことを考えるという事をアラスカから学びました。
イギリス自然史博物館主催の野生動物写真コンテストで受賞しました。 言葉でしゃべっていても限界を感じて、写真を見せることによってそれぞれ感動や情報を受け取ってもらうという事をしましたが、今ではそれでも間に合わず、動画とか、映画仕立てのムービーを作って発信するところに来ています。
動物の世界で厳しい中で生きてゆくという本などで感じて影響を受けまして、気に入った本であると5回、10回も読みました。 高校生では北海道一周自転車旅行、大学生では全国をバイクに乗ってめぐりまわって、4回も全国一周しました。 死ぬか生きるかというよな経験もしました。 一人で不安を抱えながらも旅をすると、収穫できることが沢山あります。 旅の魅力は自分を映し出して行く鏡であると同時に、出会いと感動だと思います。 植村直己さんの本とかも読んでいました。 東北福祉大学に進みましたが、今だから言えますが、特殊な大学に行けば全国で無料で宿に泊まることが出来るという事で、行きました。
予備校の塾の先生になりました。 高校の美術の先生から数学とか他の教科は赤点を取らない程度でいいから一科目、好きな日本史を徹底的にやればいいと言われました。 そのおかげで予備校のほうの先生になりました。 10年ぐらいやっていました。 脱線するような授業でしたが、家で一生懸命勉強してくれたり、生徒たちもいろいろ逆に気を使ってくれました。
ロッジを作るために、2年ぐらい道具の使い方から修業しました。 ロッジを作るために木を切るところからやりました。 開業資金には苦労しました。 12,3社銀行を回っても担保がないため直ぐ駄目と言われてしまいました。 或る銀行だけが応じてくれて、いかに人を観るかという事を銀行の方が答えをくれました。 人生はガイドだ。 日本の禅の考え方は極めたいけど極まることはないが、一生かかって極めていこうという考え方です。 日本の習い事は○○道という事で、極まることはないが極めて行くという生き方そのもののことだと定義した人生、ガイドは人生であるとした。
本当のガイドは自分が案内するテキストの生き方、力量、をいち早くチェックして、その人に合った導き方、その人が一番喜ぶという事を提供してゆくことがガイドだと思います。 興味がない人にこの花は、この鳥はと言ってもしょうがない。 インタープリテーション(自然・文化・歴史(遺産)を分かり易く人々に伝えること。自然についての知識そのものを伝えるだけではなく、その裏側にある「メッセージ」を伝える行為。)と言いますが、ガイドする素材をしっかり理解していないと、自然と人間を接着することはできないし、人間と人間を接着することはできない。
オーロラはローマ神話の「夜明けの女神」で、明日があるよ、今も生きていける、明日も生きていけるという意味での光だという事を言います。 自分が地球人だと意識するようなことはほとんどないが、オーロラの光を見るという事は、自分が地球人で地球という素晴らしい生命体と一緒に生きていけると考えたら、地球という星に生かされていると考えられる、オーロラはそういう光だと思います。
先住民の方たちが特別の特別中に捉えていた熊の存在ですが、余りにもゆがめられて危険な動物と思われていて、先住民の方たちが熊を特別な神様ととらえているが、去年だけでも800頭殺されている。 何とかしたいと一生懸命動いている最中です。 こういうスピリッツを若い人たちにどんどん繋いでいって、先人たちが折り合いをつけてきたように僕らもしっかり繋いでいきたいと思っています。