浅井康宏(東京歯科大学名誉教授) ・【心に花を咲かせて】帰化植物を探求して75年
浅井さんは歯科学の権威ですが、帰化植物の調査研究を75年間に渡って続けてこられた方です。 よく見かける道端の花の多くが帰化植物、外国から渡ってきたものだそうです。 浅井さんは何故帰化植物に惹かれて調べ始めたのでしょうか。 75年間で帰化植物はどう変化してきたのでしょうか。 帰化植物の研究を続けられて、今どんなことを思っているのかお聞きしました。
日本は島国だから帰化植物というものを考える場合に考えやすい。 雑草で繁殖力、適応力の強いものが生き残るが、生き残ったものは外国からはいってきた帰化植物なんです。 帰化植物が強いのではなくて、丈夫だから生き残っている。 大都会は自然がないが、ちょっと土が残っているとすぐ生えてくるが、ほとんど帰化植物です。 私はほとんど日本の植物はわかっています。
植物が好きになったのは中学生の時です。 草は身近にあり、雑草に詳しくなって、植物にのめり込みました。 第二次世界大戦が終わって身の周りを見たら、沢山雑草が生えていて、植物図鑑を見ても載っていないんです。 聞いているうちに、久内清孝先生、日本の帰化植物のオーソリティーがいて、先生に手紙を出したら、返事が返ってきました。 あなたが最初に見つけたものだと言われて、「マメアサガオ」という名前を考えました。(高校1年) 植物学会誌に先生が浅井が考えた「マメアサガオ」がいいんではないかと発表したんです。 喜んでそこから始まりました。
帰化植物がたくさん入ってくるようになって、最初は先生が名前を付けていましたが、そのうちに任されて、私が付けたのが100以上になります。 世界の人々が旅行をしたりすると、雑草の種が靴の下に付くとか、荷物にくっついてきて、広がっていきました。 帰化植物という植物は無くて、外国から人間の営みによって、種が持ち込まれて日本の環境が気に入って、居付いてしまったものを総括して帰化植物という事です。
西洋タンポポ、ハルジオン、ヒメジヨオン、ムラサキカタバミ、マツヨイグサ・・・など、帰化植物で、都会の雑草の80%以上は外国のものです。 船、飛行機などで入ってきます。 横浜などは明治維新後たくさん入ってきました。 長崎の出島からも入ってきました。 ハナカタバミは南アフリカが原産で輸入しましたが、四国、九州に行くと海岸一面にハナカタバミが咲いています。 知らないうちに荷物などによって入ってきたものは、自然帰化植物と言います。 ほかに輸入植物(園芸植物などを含め)と、遺失植物(庭などにある植物の種が逃げ出したもの)などがあり、自然に入ってきたものと、輸入してはいってきたものと二つの系統があります。
北アメリカから食料の援助物資があり、雑草の種も、穀物と一緒に入ってきた。 帰化植物の中にも花粉症をおこすものがあり、一番有名なのがブタクサです。 セイタカアワダチソウも北アメリカのものです。 セイタカアワダチソウもブタクサと一緒のところに生えていています。 アメリカではブタクサによる花粉症で悩んでいます。
ハキダメギク、ヘクソカズラ、ノボロギクなどかわいそうな名前がついてますが、ハキダメギクは昭和の初めですかね。 牧野富太郎先生の研究会があり、或る人がごみ溜めのところから抜いてきて、牧野先生に聞いたら、即興的にごみ捨て場にあったのでハキダメギクと負う名前になりました。
オオイヌノフグリという名前がありますが、教育上いい名前ではない、名前を変えようと思っても皆さんが使ってしまうので、難しい。
帰化植物がいつごろ入ったのか判らない。 帰化植物をどこで切るかは、文献などに書き残されてあるもので判別する、証拠のないものは入れない。 証拠はないが入ってきたような気がするものは史前植物(歴史には無い以前の植物)と言います。
本当は植物学者になりたかったが、親も含め周りが歯科医が多くて、成り行きでそうなってしまいました。 植物もやることを前提に歯科へ進みました。 休みの日には海岸、一番よく通ったのは夢の島(埋立地)で、帰化植物が生える条件としては最高で、港があって世界中から船が入ってきて、荷物の積み下ろしがあり、何にも遮るものがなく、先住者がいない場所。 100%帰化植物です。 そこで見つけたものがあり、ユメノシマカヤツリ (夢の島蚊帳吊り)という名前を付けました。
いつ、何処の国からはいってきたのか判らない。 世界の植物図鑑で探して、外国の専門家に問い合わせたりして苦労します。 これだと判った時の嬉しさんは何とも言えないです。 歳をとっったら遠くに行かれないので、身の周りは帰化植物が80%以上なので、帰化植物をある程度判ってくると楽しいですよ。 日本から外国に行っているのもあって、スイカズラ、クズ、アケビ、ノイバラ、とか、日本から輸入しているんです。 欧米人は蔓が好きで、最初観賞用にもっていってます。 スイカズラは増えてしまってどうしようもありません。 クズもアメリカでは増えすぎてどうしようもありません。 その土地に合えば異常に繁殖するわけです。
それなりに楽しめる相棒を見つけることができました。 一つのことに打ち込めたのは幸せだと思います。