2021年4月22日木曜日

上野千鶴子(社会学者)         ・旅立ちもおひとりさまで

上野千鶴子(社会学者)         ・旅立ちもおひとりさまで 

昭和23年富山県生まれ、京都大学在学中に女性学と出会って、女性学のパイオニアとして活躍してきました。   2007年に発表した「おひとりさまの老後」はベストセラーになりました。。   現在は認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク (WAN) 理事長を務めています。   

深夜便は私の愛聴番組で、私の亡父もよく聞いていました。   コロナ禍でオンラインでの身体の運動を続け居ています。   「在宅一人死のすすめ」を出版、このような本が売れるとは思っていませんでしたが、孤独死と言われるのが嫌で、作ったのが「在宅ひとり死」という言葉です。   「おひとりさまの老後」を出したころは死別して一人になったら、子供が呼び寄せて「呼び寄せ同居」が親にとっても子供にとっても幸せみたいに思われていたが、「お母さん、一人になったし一緒に暮らさない」というのをあの本では「悪魔のささやき」と言ったんです。  それも言い出す子供もいなくなって、一人で暮らす人たちが増えて、なんだ楽じゃないかと、現実の変化のほうが早いと思います。

大阪の耳鼻咽喉科医院の辻川覚志(つじかわさとしさんのデータ、「おひとり様一番幸せ」と書いてありましたが、自分でも言いたくてしょうがなかった。   辻川さんは500人近いお年寄りを調査、満足度が独居の高齢者が一番高いという事がエビデンスと共に示されました。    二人暮らしの満足度は低い。  夫婦の場合もあるし、親子の場合もある。  3人ないし、ペットがいると二人の場合よりは満足度が増す。    一人の人は最後には施設か病院でと言っていますが、在宅ひとり死のススメ」を出したら、「そうではない選択肢もあるのね」と言ってくださいました。   病院は人間関係を全部切り離して非日常に連れて行って、病院内孤独死という風に言う人もいますし、施設でもこれまでのなじみを全部断ち切ってゆくわけですから。   

両親は金沢で亡くなりました、父が開業医でしたが、妻の介護で部屋を改造して主治医をやっていましたが、父は母に依存していたので妻を失うという事に対して、パニック状態で大変でした。   共倒れになると思って母を入院させようとしたら、僕を押し倒してゆけとまで言われました。  父が転移がんになり、父は病院で亡くなりました。   妻が亡くなると夫は平均3年で亡くなるというデータがありますが、母が亡くなってから10年後に亡くなりました。  私は当時京都に住んでいたので、京都、金沢、東京を行き来していて大変でした。    

兄弟で役割分担をしていました。  私へはメンタルのはけ口になっていました。  父は私と一緒に暮らしたかったようですが、男のプライドがあるのか、後で判ったことですが、私には直接言わないで兄に言っていたようです。   子どもには迷惑をかけたくないという話はよく聞きます。   

歳をとって人様のお世話を受けなければならないからと言って、なんで一塊になって面倒を見てもらわなければいけないのか、どうしても納得できないのです。   足腰立たなくなって、寝たきりになって、訪問介護や訪問医療に入っていただいて、或る日ヘルパーさんが来たら死んでいたでもいいんじゃないかと思ったんです。   介護保険が進化して、サービスのメニュー、種類も増えたし、現場の方たちの経験値が本当に増えました。   日本の介護のケアの質は世界水準に引けを取らないです。   在宅看取りの経験とかが上がってくると、穏やかに安らかになくなることを経験して、死ぬのに医者はいらないし、介護職だけで看取りができますと言っていただけるようになり、この20年間の介護保険の経験はすごかったと思います。 

高齢社会の死はピンピンコロリを望んでも無駄、ピンピンコロリは突然死なので死亡解剖へ回さなければいけないようなもので、お別れを言う暇もないです。   人間みたいな大型動物が死ぬのはゆっくり死で、準備する期間がある。   介護保険前には在宅看取りが難しかった、特に独居の在宅看取りが考える事も出来なかったが、ここ20年で現場が変わった。  しかしこのところきなくささがある。    これからは社会保障費を抑制したいというう事が見え見えで、介護保険を段々使い勝手しにくくする方向に行くのではないか。   要介護1,2では入れなくて要介護3で施設に入ることが出来るという事とか、所得に応じて介護保険料をどのぐらい負担するとかあります。  自己負担率が1割で済んだのが、所得に応じて2割、3割を負担してもらう。    ケアマネが今ただなのが、今後お金が必要になり、頼むのにハードルが高くなる。  重度の要介護3以上を対象にボラインティア、地域の人に頼んで、身体介護だけに限定しようというシナリオを描いているのではないかなあと、予測ができる嫌な動きをここの所政権はやっています。

足りない分は、①もう一度ご家族にという事と、②自己負担でサービスを受ける、という選択になるのではないかと思います。  介護の報酬が少なすぎるというような事もあります。   去年厚労省が矢次早に政策出しましたが、その中で介護現場での人手不足に対して、無資格者を使いなさいと言う事がありました。   愕然としました。   ボランティアに入ってほしいが、隣の人には来てほしくないという方がいます。  プライバシーが全部筒抜けですから。  

認知症ケアは施設でもハードルは高いです。  独居の認知症の方は周辺症状が軽いと言っています。  認知症に詳しい高橋幸男ドクターは暴言暴行の逸脱行動には必ずその背後にはからくりがある、そのからくりの引き金になる誰かがいる、と言っています。   でも独居ではだれもいないわけです。  不便かもしれないが穏やかに暮らせる。   機嫌よく日々暮らして、次の朝目を覚まして、下り坂を下って行って、ボケたらいいじゃないかと思っています。   好奇心の強い人は認知症にならないとか、いろいろありますが、みんななってきます。  誰がなるかわからない、受け入れるしかないと覚悟しておいた方がいいのではないかと思います。  食べられる間は生かしていただいて、お世話になって最後まで生き切ったらいいんじゃないかと思います。  

自分ごとになったら、言いたいことが変わるかもしれないので、本当の要介護高齢者になったら、「ゆうたるで(言ってやる)」、それが楽しみです。   オンラインで接点が持てるし、車椅子、寝たきりになろうが、人との繋がりを断つ必要はないと思います。   下ってゆく姿を世間に見せたほうがいいと思います、人間はこうやって老いて死んでゆくんだと言う事を、もっと見える化したほうがいいと思います。