加藤由子(動物ライター) ・時代とともに変わる人と猫の関係
1949年大分県別府市生まれ、父親が転勤で九州の各地で暮らしましたが、いつも周りには猫や犬がいました。 今は東日本大震災後に福島県大熊町で保護された推定年齢15歳のオス猫と暮らしています。 加藤さんは大学で生物学、動物行動学を学び卒業後は移動動物園の会社に勤めました。 1980年代の半ばごろから動物関係のライター、エッセーイストとして幅広く活躍しています。 猫関連の著書は「雨の日の猫はとことん眠い」、「猫と最後の日まで幸せに暮らす本」など数多くあります。 加藤さんは猫の飼い方が放し飼いから室内飼いに変わったこと、猫の平均寿命が延びたことなどから飼い主と猫との関係がが変わってきていると言います。
今は一匹しかいないです。 推定15歳、人間に換算すると77歳ぐらいです。 東日本大震災後、ボランティアが動物を助け出して、病院に連れていき、健康は戻ったが、飼い主がわからなくて、預かっているボランティアがあり、私はそこに登録してあって、この猫がきました。 「チビ」という名前で目が見えなくなってきました。
物心ついてから犬や猫がいて、25から35歳までは何も買っていなくて、35歳から飼い始めて60年ぐらい飼っていたことになります。 全部で20~30匹になります。 昔は離し飼いが当たり前でした。 親子でひょっこり来て飼っていましたが、一匹は交通事故で、もう一匹は行方不明になってしまいました。 死体でいいから帰ってきて欲しいと思って、動物病院にもらいに行きましたが、片足がありませんでした。 室内飼いが受け入れられました。
1949年大分県別府市生まれ、父が転勤が多く九州のあちこちに住みました。 犬も猫も物心ついた時にはいました。 大学は家政学部家政理学科に行きました。 植物のほうに行きたかったが、上野動物園に飼育実習に行ったら面白くて、動物のほうに行くことにしました。 動物行動学を学びました。 ローレンツがノーベル賞を取って行動学が脚光を浴びました。 先生になろうかと思ったが、個別に教えればわかるのにそれができない、学校教育は劣等生を作るところではないかと思って、移動動物園の会社に就職しました。 3,4年やっていました。 一生できるものは書くことだったら出来ると思って辞めて、動物ライターになりました。 猫の本を書いて出版して、100冊ぐらいになります。 最近「オスねこは左利き、メスねこは右利き」という本を出しました。
猫の平均寿命は1970年代は5歳前後だったのが、2020年15,5歳になっています。 室内飼いになり交通事故では亡くならなくなって、キャットフードができて栄養バランスのいい食事ができる、獣医療が進んで長生きができるようになりました。 5歳が人間の36歳ぐらい、7歳が44歳にあたる。
リビア山猫を家畜化した。 農耕が発達すると、穀物倉庫にネズミが住み着き、リビア山猫が住み着き、段々人に飼われるようになった。 地中海近辺で家畜化が始まり、ネズミ対策で世界中に広まっていった。 日本には仏教伝来とともに連れてこられたという事になっているが、記録には無い。 長崎県の壱岐市のカラカミ遺跡で紀元前3世紀(弥生時代中期)の猫の骨が見つかっている。 猫は単独生活、犬は群れの生活、人間も群れの生活。 猫は協調性、社会性がない。 猫は自分の家を縄張りにしているが、引っ越し先でもゼロから作り直して新しい縄張りをつくる。
野生の猫だったら親が子猫の面倒を見るが、子別れで親が縄張りから追い出す。 人が疑似親をやっているとそういう事が無いので、追い出されて初めて大人の気分になれるが、追い出されなければ大人の気分になるチャンスが無くて、子猫の気分で甘ったれとなる。 猫の行動に興味を抱くことからもっと親密になってくると、なにを考えているんだろうと、心理に興味が行き始めている。
猫は縄張りの外に出るのは不安で、境界線のところで(窓辺であったり)外を見ているだけです。 猫は待ち伏せ型なので必要が無ければ動かない。 猫の目をじっと見るのは敵意の表れにしか見えない。 そうすると猫は怖がってしまうので、空気のような存在でいるのが一番いいと思います。 猫が慰めてくれるのは誤解で、猫は涙の意味は判らないので、涙をなめてくれるのは別のことです。
昔、猫は死ぬとき姿を見せないで亡くなったが、今はボロボロになって、飼い主が看取るという事になってきている。 人間と同じですね。 死ぬことを覚悟しておく必要がある。 ショックで日常生活に支障をきたす人もいるので、看取れる幸せを判って欲しいと思います。 落ち込んでいる人の話を聞いてあげるしかないと思います。
老描との付き合い方は何をしても許しちゃうしかないですね。 猫を看取ることは、猫飼育の集大成だと思っています。 人間も同じだと思います。 人間は病院で亡くなることが多いですが、人の死はもっと身近にあっていいと思います。
猫は生活する上でのよき相棒だと思っています。 生活に潤いをもたらす存在だと思っています。