大八木京子(駒澤大学陸上競技部調理員) ・走り抜く"勝負めし"を作り続けて
チームを率いる大八木弘明監督の妻で、夫がコーチに就任した1995年から寮で暮らす選手の食事をつくっています。 激しい練習の疲れで食が細くなりがちな選手に必要な栄養を考えながら、おいしく食べてもらう工夫を26年間し続けてきました。 レースの前には一人一人の希望に沿った勝負飯も作るそうです。 低迷していた母校のチームを強くし、日本を代表する選手も輩出してきた名将と言われる監督と、二人三脚で選手を支え続ける大八木さんにどのような食事を作り、どんな気持ちで戦う選手を送り出しているのか、伺いました。
箱根駅伝97回目の今年は駒澤大学が13年ぶり、7度目の総合優勝を果たしました。 劇的な勝ち方だったのでとても感動しました。 3分差だとちょっと追いつけない差だと思っていましたが、最後まで何が起こるかわからないと思ってみていました。 前日の晩、当日の朝の食事は基本的にはあまり変わりませんが、20Km以上走るのでエネルギーを身体に補給するという意味で、少し糖質を増やす感じです。 胃もたれをするので油物は避けます。
当日は選手のリクエストを聞いて、選手に合わせて作りますが、うどん、お餅、おにぎりであったりします。 走る時間によって時間はバラバラで4時間前ぐらいに食べています。 朝は寮から出かけていきます。 部員は50人前後です。 選手にお守りと手紙を渡します。 内容はそれぞれです。 4年生は一人なのでほかの4年生の分まで走ってという事で粘りのあるレースをするように伝えました。 10区の選手には9人のメンバーと走れなかった選手の思いをたすきに込めて走ってくださいというように伝えました。 走れなかったキャプテンにも同様に渡しました。 今年はエントリーされた4年生は5名いました。
家庭で食べて居た食事を心がけて作っています。 おかずは3,4品で汁の物、フツール、御飯といった感じです。 いろんな食材を使います。 皆さんが思ってるほど食べないです。 ご飯を山盛りで食べる子は余りませんし、お替わりはしません。 一食45合ぐらい炊きます。
スポーツ推薦で入学してくる選手がほとんどです。 入ってきたときには栄養講習をします。 貧血になる選手がいたりするので鉄分を考えています。
主人は駒澤大学を卒業して実業団に入ってその後コーチをして、母校の箱根駅伝の成績が良くなくなってきて、チームを立て直して欲しいとの話があり、就任しました。 自分も貧血で苦しんだ時期もあったので、選手の食事はちゃんと誰かが作らないといけないという事で作るようになりました。 当時は子供が1歳半ぐらいでした。 新築の家も埼玉に買ってしまっていましたが、母校が箱根駅伝に出られなくなってしまうというような危惧もあり、こちらを選びました。 昭和42年からずーっと出場していましたが、それも危なくなってきている様な状況でした。 規則正しく生活する環境ではありませんでしたので、環境作り、練習、食事、意識の変化を進めていきました。
コンロ、皿など食事に関するものも整っていませんでした。 現在の藤田敦史ヘッドコーチが、入学してチームに入ってきたころはなかなか走れなくて、調べたら貧血でした。 食事を改善してゆきました。 チームも2年目の時に復路で優勝できてチームに自信が付きました。 段々チームに勢いがついてきて、4連覇を果たすことになりました。
食事を作ることによって選手の様子がよく判るようになります。 練習量とかに合わせて食事内容、メニューを考えます。 2007年に専門学校に2年間通って栄養士免許を取りました。 卒業して凄く活躍している選手が一緒にグラウンドで練習したり、一緒に食事をしたりすると刺激にもなるし、励みにもなると思います。
監督である夫は家でも頑固おやじといった感じです。 選手によっていろいろ声の掛け方は考えているようです。 メンバー決めなどで色々悩んでいるようですが、傍観しています。 チームに、選手に対しての情熱がどんな人よりもあるんじゃないかと思います。私はチームの一員という感じがあるので、監督を、チームを動きやすいように支えてゆくという感じです。