2021年4月15日木曜日

西岡奈緒子(会社員)          ・あなたとともに、未来を築きたい!

西岡奈緒子(会社員)          ・あなたとともに、未来を築きたい! 

神奈川県藤沢市に住む、今年40歳。 全身の筋肉が段々と弱って行く進行性筋ジストロフィー重度障害1級です。   西岡さんは障害があっても働く社会とつながっていたいと、慶応大学理工学部で生産工学やプログラミングなど、専門性の高い知識やスキルを身に付け、家電メーカに勤務して18年になります。  障害は年々進行し電動車椅子を使用したり、テレワークによる在宅勤務になりましたが、会社が多様性のある働き方を取り入れたこと、又ICT、情報通信技術などの進歩によって働き続ける環境が大きく広がったと言います。  

仕事に関しては家電製品を取り扱う会社でカスタマーサービスの部署でサポートのウエブサイトの運営、コストの管理などをしています。  アフターサービスを採用しているので、サイトを更新する際にかかった費用だとか、こちらの経費処理を担当しています。  今は在宅勤務をしています。  会議、メール、チャットなどを併用して大きな支障なく仕事ができています。  

女性の筋疾患患者の会の共同代表もやっています。   2010年に「com-pass 女性筋疾患患者の会」という会を立ち上げました。   孤独を感じる人が少しでも減らすことが出来たらと活動しています。  車椅子を使ってると移動に制約があるので集まるということはなかなか難しいです。   

小さいころは病気のことを一言ではうまく伝えられなくて、周りの人と違う事に対して恥ずかしさを感じていました。  大学で何かを学びたいとはっきり意識したのは、高校生の時に教育実習で学校に来た大学生の話を聞いて、管理工学という事を知りました。  生産管理、人間工学、経営工学、プログラムなどを学ぶ学問で就職する率も高い学科になります。通学の電車は出来るだけ座れるルート、始発の電車がある時間帯を選ぶなど工夫しました。誠一杯やりたいことはできたと思います。   障害者雇用の採用で面接に進みました。  杖をつきながら歩いていましたが、徐々に病気が進行して転び易くなってきてしまいました。  限界を感じて電動車椅子を使い始めました。   上司にはいろいろ相談させてもらっています。  職場の理解もあって働くことができました。

テレビで「NHK障害福祉賞」の存在を知って、それまでの半生について仕事の事を中心に、作文を書いて応募したのは2008年7月末のことでした。  その時のタイトルが「ここにいたい」です。  仕事を続けてこられたことに対して、感謝の気持ちを文章にしたいと思って書きました。  「NHK障害福祉賞の最優秀賞受賞」を受賞。  3年、5年働いたら限界かと思っていましたが、大変なことが出てきても具体的な解決策を周りの人と一緒に考えることで働き続けることができました。   NHKに出演して、野上 奈津さん(彼女も筋ジストロフィー患者である)と出逢って意気投合した私たちは、2009年に「com-pass 女性筋疾患患者の会」を立ち上げました。   筋ジストロフィーはいろんなタイプがあり、女性特有の悩みもあり女性患者の会にしました。  登録は200名ぐらいいます。

社会福祉士の資格を得て相談にも乗るようになりました。  広い意味で福祉とは、「社会の全ての人が幸福で安定した生活を営むこと」であると学びました。   筋ジストロフィーの患者さん同士で会う機会は本当に貴重な場なのかと感じています。  「com-pass 」という名前にも思いを込めていて、磁石という意味もあり、迷った時に方向を一緒に考える場でありたいという思いがあります。  「com」には共にという意味があり、「pass 」には歩くという意味があります。  コンパスは円を描けて、みんなの輪が広がるようにという、いろいろな意味を込めて「com-pass 」としました。

ロボットスーツのトレーニングをしています。  これを知ったのは15年前ぐらいですが、歩けない人がロボットスーツを付けることで、歩きやすくなるという技術です。   筑波大学の山海教授が開発したものです。   電極を皮膚に貼り付けて皮膚の表面から漏れ出る微弱な信号をロボットが読み取ります。  今はほとんど歩けないんですが、ロボットスーツを使うと30分ぐらいトレーニングで歩くことが出来ます。  歩くと筋肉や脳が喜んでいるように感じます。  2014年に藤沢にトレーニング施設ができました。   出来なかったことが出来るという快感は何とも言えないと思っています。  

山海教授が「サイバニクスが拓く未来」という本を出版しています。  サイバニクスというのは脳科学、神経科学、構造科学、ロボット工学、IT技術、システム総合技術、再生医療、行動科学、倫理、安全、心理学、社会科学など、さまざまな学術領域を融合複合させた包括的な学術分野で山海教授が生み出したものです。  未来に希望を感じています。

ICT(情報通信技術) 移動が難しいという障害を持っているものにとってみて、あきらめていたイベントに参加できるというような効果をもたらしていると思います。     10年後の未来にどういったものがあるかという事はなかなか想像が難しいところだと思います。   介護の領域でも自分自身で自分の介護をロボットを通じて実現出来るのではないかと考えているロボット開発者もいるので、そういったところに期待しています。    常時在宅勤務になっていますが、多様性を重視している会社なのでそれぞれの人の経験がいろいろな場で生かすことが出来ていると思います。  様々な不安に襲われたけれど体験から自分は一人ではない、きっと寄り添ってくれる人がいると思っていると体験談に書いています。  「あなたは一人ではありません」という言葉にとっても感動して、その言葉もこれからの自分に、又孤独を感じている誰かに声をかけていきたいと思っています。

「先のことなど想像できない。  未来には想像できないような医療技術や科学技術の進化が起きる可能性だってあるのだ。  その先へあなたと共に未来を築きたい!」   未来に希望を感じて明日に向かって一歩踏み出せたらいいなと思っています。